[2009年文献] 血清クレアチンキナーゼ(CK)高値は心筋梗塞発症リスクと関連
一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清クレアチンキナーゼ(CK)値と初発心筋梗塞(MI)リスクとの有意な関連を示したはじめての報告。血清CK値と脂質異常症との有意な相互作用がみとめられたことから,とくに脂質異常症の人において,血清CK値がMIの強力な危険因子である可能性が示唆された。血清CK値と脳卒中との関連はみとめられなかった。
Watanabe M, et al. Elevated serum creatine kinase predicts first-ever myocardial infarction: a 12-year population-based cohort study in Japan, the Suita study. Int J Epidemiol. 2009;
- コホート
- 吹田市民から無作為に抽出され,1989年9月~1994年3月に国立循環器病センターで定期健診(隔年)を受診した30~79歳の6,406人のうち,心血管疾患既往のある208人,心電図でQ波異常がみとめられた3人,ST降下または狭心症の139人,血清クレアチンキナーゼ(CK)値ならびにその他のベースラインデータに不備があった330人,追跡不能となった700人を除いた5,026人(男性2,370人,女性2,656人,平均年齢54.5歳)を平均11.8年間追跡。
- 結 果
- ◇ 対象背景
男女別の血清クレアチンキナーゼ(creatinine kinase: CK)値の分布は以下のとおり。
男性: 最小値30 IU/L~最大値3,547 IU/L,中央値132 IU/L
女性: 25 IU/L~1,820 IU/L,110 IU/L
男女とも,血清CK値が高いほど,BMI,血清クレアチニン値が高く,喫煙率が低い傾向がみとめられた。
女性では,血清CK値が高いほど,高血圧,高コレステロール血症,高トリグリセリド血症が多い傾向もみられた。
◇ 血清CK値と心筋梗塞(MI)および脳卒中の発症率
MIの発症は103人(確診[definite]45人,疑い[probable]58人)。
脳卒中の発症は168人(確診126人,疑い42人)で,内訳は脳内出血27人,脳梗塞106人,くも膜下出血20人,病型不明15人であった。
血清CK値のカテゴリー(≦99 IU/L,100~199 IU/L,200~299 IU/L,≧300 IU/L)ごとのMI,および脳卒中の発症率(1000人・年あたり)は以下のとおり。
・ MI
1.2,1.7,3.3,3.4
・ 脳卒中
2.8,2.7,3.8,4.0
◇ 血清CK値とMIおよび脳卒中の発症リスク
MI,および確診MIの発症リスクは,血清CK値が高いカテゴリーほど有意に高かった。この結果は,血清CK値が99パーセンタイル以上であった51人を除外しても変わらなかった。
全脳卒中,および脳梗塞では血清CK値との有意な関連はみとめられなかった。
血清CK値(IU/L)のカテゴリー(≦99 IU/L,100~199 IU/L,200~299 IU/L,≧300 IU/L)ごとのMI,および脳卒中発症の多変量調整ハザード比(95 %信頼区間)は以下のとおり。
・ MI (P for trend=0.018)
1,1.35(0.83-2.20),2.06(1.15-3.70)
・ 脳卒中 (P for trend=0.90)
1(対照),0.91(0.64-1.28),1.09(0.68-1.75)
◇ 脂質異常の有無による層別化解析
血清脂質値による層別化解析を行った結果,総コレステロール高値(≧220 mg/dL),トリグリセリド高値(≧150 mg/dL),HDL-C低値(≦39 mg/dL)の人ではいずれも血清CK値と確診MIの発症リスクとの有意な関連がみとめられた(それぞれP<0.0001,P=0.0002,P=0.0002)。一方,これらに該当しない人では有意な関連はみられず,総コレステロール,トリグリセリド,HDL-Cのそれぞれについて有意な相互作用がみとめられた。
高血圧,耐糖能異常/糖尿病,喫煙,飲酒による有意な相互作用はみとめられなかった。
◇ 結論
一般住民を対象とした前向きコホート研究において,血清クレアチンキナーゼ(CK)値と初発心筋梗塞(MI)リスクとの有意な関連を示したはじめての報告。血清CK値と脂質異常症との有意な相互作用がみとめられたことから,とくに脂質異常症の人において,血清CK値がMIの強力な危険因子である可能性が示唆された。血清CK値と脳卒中との関連はみとめられなかった。