[2010年文献] 血清BNPは肥満関連指標と負の関連を示した

都市部の日本人一般住民を対象としたコホート研究において,Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)と肥満との関連を断面解析により検討した。その結果,BMI,体脂肪率,皮下脂肪厚,体脂肪量,腹囲などの肥満関連指標は,いずれも血清BNP値との独立した負の関連を示していた。

Sugisawa T, et al. Association of plasma B-type natriuretic peptide levels with obesity in a general urban Japanese population: the Suita Study. Endocr J. 2010; pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,2003年8月~2004年12月に国立循環器病研究センターで定期健診(隔年)を受診した30~79歳の2,007人のうち,受診時に慢性心房細動が認められた40人,および虚血性心疾患既往のある97人を除外した1,759人(断面解析)。

BMIにより,全体を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を行った。
   <18.5 kg/m2: 139人
   18.5 kg/m2以上22 kg/m2未満: 590人
   22 kg/m2以上25 kg/m2未満: 642人
   25 kg/m2以上: 388人
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は64.5歳で,女性は56.1 %を占めていた。
平均BMIは22.8 kg/m2

BMIが高いカテゴリーほど,有意に男性が多く,高血圧の割合,糖尿病の割合,脂質異常症の割合,身長,体重,皮下脂肪厚,体脂肪量,除脂肪体重,腹囲,収縮期血圧,拡張期血圧,血清クレアチニン,空腹時血糖,HbA1c,総コレステロールがいずれも有意に高かった。また,BMIが高いカテゴリーほど,喫煙率が低く,HDL-Cおよび血清BNPが有意に低かった。

また,血清Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)値の四分位ごとにみると,BNPが高いカテゴリーほど,年齢が高く,女性の割合,左室肥大の割合および収縮期血圧が高く,BMIおよび心拍数が低くなっていた。

◇ BMIと血清BNP値の関連
多変量線形回帰モデルによる解析の結果,BMIは血清BNP値との有意な負の関連(P<0.001)を示しており,BMIが1 kg/m2増加するごとに血清BNP値が5 %低下することが示された(P<0.001)。
BMIのカテゴリーごとにみると,男女とも,BMIが高いほど血清BNP値が段階的に低くなっていた(いずれもP for trend<0.001)。

血清BNP値を18.4 pg/mL未満(正常)と18.4 pg/mL以上(異常)の2つのカテゴリーに分けて多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,BMIが1 kg/m2増加するごとに,血清BNP正常値のオッズ比が男性で1.11(95 %信頼区間1.04-1.18),女性で1.16(1.11-1.23)と有意に増加した(男性: P=0.001,女性: P<0.001)。

◇ BMI以外の肥満関連指標と血清BNPの関連
BMI以外の肥満関連指標(体脂肪率,体脂肪量,除脂肪体重,皮下脂肪厚,腹囲)を用いた検討を行った結果,除脂肪体重を除くすべての指標について,BMIと同様に血清BNP値との有意な負の関連がみとめられた(すべてP<0.01,多変量調整)。


◇ 結論
都市部の日本人一般住民を対象としたコホート研究において,Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)と肥満との関連を断面解析により検討した。その結果,BMI,体脂肪率,皮下脂肪厚,体脂肪量,腹囲などの肥満関連指標は,いずれも血清BNP値との独立した負の関連を示していた。


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