[2011年文献] γ-GTP値が高い人では,飲酒で脳卒中リスクが増加
γ-GTP値により層別化して飲酒量と心血管疾患発症リスクとの関連を検討した,初めての研究である。都市部の日本人一般住民を対象とした12.5年間の前向きコホート研究において,γ-GTP値が高い人では,飲酒量が多いと虚血性脳卒中発症リスクが高くなることが示された。脳卒中予防のためには,γ-GTP値が高い人は飲酒を避けるべきと考えられる。
Higashiyama A, et al. Association with serum gamma-glutamyltransferase levels and alcohol consumption on stroke and coronary artery disease: the suita study. Stroke. 2011; 42: 1764-7.
- コホート
- 心血管疾患既往がなく,飲酒未経験または現在飲酒者の30~79歳の男性2336人(禁酒した人は除外)を12.5年間追跡。
飲酒状況により,全体を以下の4つのカテゴリーに分けて解析を行った(1杯=エタノール換算摂取量11.5 g=0.5合)。
飲酒未経験者: 521人
少量飲酒者(1日2.0杯未満): 317人
中等度飲酒者(1日2.0杯以上4.0杯未満): 796人
多量飲酒者(1日4.0杯以上): 702人 - 結 果
- ◇ 対象背景
飲酒量が多いほど有意に高い傾向を示していたのは,γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)値,BMI,HDL-C値,トリグリセリド値,現在喫煙している人の割合であった。
年齢は,飲酒量が多いほど有意に低かった。
◇ 飲酒状況と心血管疾患(CVD)リスク
追跡期間中に冠動脈疾患を発症したのは109人,脳卒中を発症したのは113人。
冠動脈疾患発症の多変量ハザード比は,飲酒未経験者にくらべ,中等度飲酒者,および多量飲酒者で有意に低くなっていた。全脳卒中,および虚血性脳卒中発症リスクについては,飲酒のカテゴリーによる差はみられなかった。
◇ γ-GTP値による層別化解析
γ-GTP値により,全体を32 IU/L(中央値)以下の人と32 IU/L超の人とに分けて,飲酒状況とCVD発症リスクとの関連をそれぞれ検討した。
・ γ-GTP値が低い人(≦32 IU/L)
飲酒者の冠動脈疾患,全脳卒中,虚血性脳卒中発症リスクは,いずれも飲酒未経験者にくらべて低かった。とくに多量飲酒者の冠動脈疾患リスク,中等度飲酒者の冠動脈疾患リスクおよび全脳卒中リスクは,飲酒未経験者に比して有意に低かった。飲酒状況ごとの各CVD発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
冠動脈疾患: 飲酒未経験者1.00(対照),少量飲酒者0.64(0.34-1.22),中等度飲酒者0.40(0.21-0.76),多量飲酒者0.31(0.11-0.89)
全脳卒中: 1.00,0.63(0.30-1.31),0.43(0.21-0.88),0.70(0.29-1.69)
虚血性脳卒中: 1.00,0.80(0.34-1.89),0.43(0.17-1.08),0.63(0.20-2.01)
・ γ-GTP値が高い人(>32 IU/L)
中等度~多量飲酒者の冠動脈疾患発症リスクは,飲酒未経験者にくらべて低かった。しかし,全脳卒中発症リスク,虚血性脳卒中発症リスクについては,飲酒者のほうが高くなっていた。飲酒状況ごとの各CVD発症の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。
冠動脈疾患: 飲酒未経験者 1.00(対照),少量飲酒者1.14(0.37-3.54),中等度飲酒者0.81(0.34-1.97),多量飲酒者0.61(0.24-1.56)
全脳卒中: 1.00,7.66(1.60-36.60),6.68(1.56-28.66),4.68(1.07-20.54)
虚血性脳卒中: 1.00,5.81(1.15-29.26),5.27(1.21-23.02),2.54(0.55-11.70)
◇ 結論
γ-GTP値により層別化して飲酒量と心血管疾患発症リスクとの関連を検討した,初めての研究である。都市部の日本人一般住民を対象とした12.5年間の前向きコホート研究において,γ-GTP値が高く,飲酒量が多いと虚血性脳卒中発症リスクが高くなることが示された。脳卒中予防のためには,γ-GTP値が高い人は飲酒を避けるべきと考えられる。