[2013年文献] CKDは,高血圧の人でのみ頸動脈硬化と関連

都市部の日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析において,慢性腎臓病(CKD)と頸動脈硬化との関連が血圧によって異なるかどうかを検討した。その結果,高血圧の人ではCKDは頸動脈硬化との独立した関連を示していたが,非高血圧ではそのような関連はみられなかった。この結果より,脳卒中予防の観点からCKDのリスク層別化を行う場合は,高血圧の有無を考慮すべきであることが示唆された。

Ohara T, et al. Impact of Chronic Kidney Disease on Carotid Atherosclerosis According to Blood Pressure Category: The Suita Study. Stroke. 2013; 44: 3537-9.pubmed

コホート
吹田市民から無作為に抽出され,2002年4月~2004年3月に国立循環器病研究センターで定期健診を受診し,頸部超音波検査を受けた35~93歳の3446人(断面解析)。

血圧カテゴリー(至適血圧/正常血圧/正常高値血圧/高血圧)は,ESH-ESC2007ガイドラインの基準に従った。

慢性腎臓病(CKD)の定義は,日本腎臓学会が推奨する式により算出した推算糸球体濾過量(eGFR)<60 mL/min/1.73 m2とし,eGFRにより対象者を50 mL/min/1.73 m2未満,50~59 mL/min/1.73 m2, 60~89 mL/min/1.73 m2,90 mL/min/1.73 m2以上の4つのカテゴリーに分類した。

頸部超音波検査により,頸動脈内膜-中膜肥厚度の最大値(最大IMT),ならびに狭窄(断面積で25%以上の狭窄)の有無を評価した。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢は62歳。
慢性腎臓病(CKD)の有病率は,男性16.2%(eGFR 50~59 mL/min/1.73 m2: 10.9%,eGFR<50 mL/min/1.73 m2: 5.3%),女性10.5%(それぞれ7.4%,3.1%)であった。

◇ CKDと頸動脈硬化
eGFRと最大IMTとの関連をみると,性別を問わず,eGFRが90 mL/min/1.73 m2以上のカテゴリーに比して,50 mL/min/1.73 m2未満で有意に最大IMT(調整)が高値であったが,50~59 mL/min/1.73 m2では有意差はみられなかった。

男女をあわせた解析でeGFRと頸動脈狭窄の有無との関連をみると,eGFRが90 mL/min/1.73 m2以上のカテゴリーに比して,50 mL/min/1.73 m2未満で狭窄の調整オッズ比が有意に高くなっていたが,50~59 mL/min/1.73 m2では有意差はみられなかった。

◇ CKDと頸動脈硬化との関連に対する血圧の影響
高血圧の人の最大IMT値(調整)は男女とも,CKDの有無を問わず,至適血圧に比して有意に高かった。
血圧カテゴリーごとにCKDの有無と最大IMTとの関連をみると,男女とも高血圧においてのみ,CKDの人の最大IMT値が非CKDに比して有意に高値となっていた。至適血圧,正常血圧,正常高値血圧においては,いずれもCKDと非CKDの最大IMT値に有意差はなかった。

男女をあわせた解析で,高血圧の人の頸動脈狭窄のオッズ比は,CKDの有無を問わず,至適血圧に比して有意に高かった(高血圧+CKD: オッズ比3.16[95%信頼区間2.05-4.88],高血圧+非CKD: 2.21[1.53-3.19])。
血圧カテゴリーごとにCKDの有無と頸動脈狭窄との関連をみると,正常高値血圧において,CKDの人の狭窄のオッズ比が非CKDに比して高い傾向がみられた(P=0.053)。
男女別の解析を行うと,男性では同様の結果がみとめられた。


◇ 結論
都市部の日本人一般住民を対象としたコホート研究の断面解析において,慢性腎臓病(CKD)と頸動脈硬化との関連が血圧によって異なるかどうかを検討した。その結果,高血圧の人ではCKDは頸動脈硬化との独立した関連を示していたが,非高血圧ではそのような関連はみられなかった。この結果より,脳卒中予防の観点からCKDのリスク層別化を行う場合は,高血圧の有無を考慮すべきであることが示唆された。


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