[2017年文献] 心房細動有病者では,脳卒中および心不全の発症リスクが非有病者より高い
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,ベースライン時の心房細動(AF)と脳卒中および心不全発症リスクとの関連を,年齢層別に検討した。5.2年間(中央値)の追跡の結果,70歳未満のAF有病者では非有病者に比して脳卒中発症リスクが4倍以上,心不全発症リスクが7倍以上,70歳以上のAF有病者ではそれぞれ約3倍,7倍以上と,いずれも有意に高いことが示された。絶対リスクの指標としてAFが寄与する過剰発症数(1000人・年あたり)をみると,脳卒中と心不全のいずれについても,70歳未満にくらべて70歳以上の年齢層で大きくなっていた。
Ohsawa M, et al. Risk of stroke and heart failure attributable to atrial fibrillation in middle-aged and elderly people: Results from a five-year prospective cohort study of Japanese community dwellers. J Epidemiol. 2017; 27: 360-367.
- コホート
- 岩手県北地域コホート研究。
対象地域に居住し,ベースライン健診を受診した一般住民26469人のうち,40歳未満の1100人,脳卒中既往のある871人,およびデータに不備のあった767人を除いた23731人を5.2年間(中央値)追跡(13万1088人・年)。
追跡期間中の脳卒中および心不全の発症状況については,対象地域における発症者登録データ(脳卒中: 岩手県地域脳卒中登録事業,心不全: 岩手県北心疾患発症登録調査)を用いて把握した。 - 結 果
- ◇ 対象背景
ベースライン健診時の12誘導心電図で心房細動(AF)を有していたのは1.4%であった。
70歳未満/以上の各年齢層において対象背景を比較した結果,年齢層を問わずAF有病者で非有病者に比して有意に高い値を示していたのはBMI,総コレステロール値,HbA1c,高感度CRP,および尿中アルブミン/クレアチニン比であった。70歳未満では,AF非有病者に比し,AF有病者における過体重の割合,糖尿病の割合および習慣的な飲酒者の割合も有意に高かった。
追跡期間中に脳卒中を発症したのは611人,心不全を発症したのは98人であった。
◇ AFと脳卒中発症リスク
年齢層を問わず,AF有病者における脳卒中および虚血性脳卒中の累積発症率は,非有病者に比して有意に高かった(いずれもP<0.01)。
AF有病者の全脳卒中および虚血性脳卒中発症の多変量調整相対リスク†(vs. 非有病者)および,AFが寄与する過剰発症数(excess event,1000人・年あたり)は以下のとおりで,年齢層を問わず,AF有病者における有意なリスク増加がみとめられた。
(†年齢,性,総コレステロール,HbA1c,高感度CRPおよび尿中アルブミン/クレアチニン比で調整)
・全脳卒中
40~69歳: 4.40(95%信頼区間2.57-7.55),過剰発症数8.9
70歳以上: 2.97(1.99-4.43),17.4
・虚血性脳卒中
40~69歳: 7.69(4.25-13.9),7.0
70歳以上: 3.23(2.07-5.06),13.4
◇ AFと心不全発症リスク
心不全の発症状況については,対象地域のうち宮古地区での調査が行われていなかったため,この地域に居住する9459人を除く14272人を対象に解析を行った。
年齢層を問わず,AF有病者における心不全の累積発症率は,非有病者に比して有意に高かった(P<0.01)。
AF有病者の心不全発症の多変量調整相対リスク†(vs. 非有病者)およびAFが寄与する過剰発症数(1000人・年あたり)は以下のとおりで,年齢層を問わず,AF有病者における有意なリスク増加がみとめられた。
40~69歳: 7.22(2.06-25.3),過剰発症数3.1
70歳以上: 7.41(3.86-14.2),14.1
◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究において,ベースライン時の心房細動(AF)と脳卒中および心不全発症リスクとの関連を,年齢層別に検討した。5.2年間(中央値)の追跡の結果,70歳未満のAF有病者では非有病者に比して脳卒中発症リスクが4倍以上,心不全発症リスクが7倍以上,70歳以上のAF有病者ではそれぞれ約3倍,7倍以上と,いずれも有意に高いことが示された。絶対リスクの指標としてAFが寄与する過剰発症数(1000人・年あたり)をみると,脳卒中と心不全のいずれについても,70歳未満にくらべて70歳以上の年齢層で大きくなっていた。