[2007年文献] メタボリックシンドロームの人で微量アルブミン尿のリスクが約2倍
微量アルブミン尿とメタボリックシンドローム(MetS)の関連を検討するため,日本人一般住民を対象とした断面解析を行った。その結果,MetSを有する人における微量アルブミン尿のオッズ比は約2倍だった。また,MetSの構成因子のうち微量アルブミン尿と独立に関連していたのは肥満,血圧高値,血糖高値だった。以上の結果より,腎障害や心血管合併症の予防のためには,MetSに対する早期の包括的・集中的な管理が重要であると考えられる。
Hao Z, et al. The association between microalbuminuria and metabolic syndrome in the general population in Japan: the Takahata study. Intern Med. 2007; 46: 341-6.
- コホート
- 2004年6月~11月に健診を受診した40~87歳の2401人(男性1055人,女性1346人)から,データに不備のある80人を除いた2321人(断面解析)。
男性1034人(44.5 %),女性1287人(55.5 %)。
平均年齢64歳。
・ 糸球体濾過値(GFR: glomerular filtration rate)
ヤッフェ法により補正した血清クレアチニン値を用い,MDRD式により推定した。
・ 慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)
微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿を呈するものをCKDとした(GFR≧60 mL/分/1.73 m2の場合はステージ1~2,GFR<60 mL/分/1.73 m2の場合はステージ3~5)。
・ メタボリックシンドローム(MetS)
NCEP-ATP IIIの基準に従い,以下の5項目のうち3項目以上を満たすものをメタボリックシンドロームととした(腹囲の測定を行っていなかったため,肥満の基準はBMIで代用)。
BMI 25 kg/m2以上
トリグリセリド 150 mg/dL以上
HDL-C 男性40 mg/dL未満,女性50 mg/dL未満
血圧 130 / 85 mmHg以上
空腹時血糖 110 mg/dL以上
・ 微量アルブミン尿,顕性アルブミン尿
微量アルブミン尿は朝のスポット尿における尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio)が30~300 mg/g(免疫比濁法により測定)とし,顕性アルブミン尿は300 mg/g超とした。 - 結 果
- メタボリックシンドローム(MetS)の有病率は16.5 %(男性17.2 %,女性16.0 %)。
MetS有病者と非有病者で有意に異なる値を示したおもな項目は以下のとおり。
肥満: MetS有病者79.4 %,非有病者21.5 % (P<0.001)
BMI: 26.5 kg/m2,23.0 kg/m2 (P<0.001)
トリグリセリド: 166 mg/dL,86 mg/dL (P<0.001)
収縮期血圧: 141.1 mmHg,133.0 mmHg (P<0.001)
拡張期血圧: 82.6 mmHg,78.1 mmHg (P<0.001)
空腹時血糖: 99.2 mg/dL,86.6 mg/dL (P<0.001)
総コレステロール: 205.6 mg/dL,199.6 mg/dL (P=0.001)
血中尿酸: 5.50 mg/dL,4.96 mg/dL (P<0.001)
慢性腎臓病(CKD): 27.6 %,14.0 % (P<0.001)
微量アルブミン尿: 20.8 %,12.2 % (P<0.001)
顕性アルブミン尿: 4.7 %,1.1 % (P<0.001)
尿中アルブミン: 13.9 g/dL,9.9 g/dL (P<0.001)
尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR: urinary albumin-creatinine ratio): 12.7 mg/g,8.9 mg/g (P<0.001)
血清クレアチニン: 0.70 mg/dL,0.67 mg/dL (P=0.026)
推定GFR: 75.9 mL/分/1.73 m2,77.8 mL/分/1.73 m2(P=0.007)
◇ 微量アルブミン尿とメタボリックシンドローム
保有するメタボリックシンドローム構成因子の数ごとの微量アルブミン尿のオッズ比(年齢と性別で調整)は以下のとおり。
なし: 1 (対照)
1つ: 2.39 (95 %信頼区間1.38-4.14,P<0.05)
2つ: 3.62 (2.08-6.29,P<0.001)
3つ: 4.46 (2.45-8.12,P<0.001)
4つ: 6.20 (3.03-12.6,P<0.001)
5つ: 13.3 (4.65-38.1,P<0.001)
MetS(3つ以上): 1.99 (1.49-2.66,P<0.001)
多変量ロジスティック回帰分析によると,微量アルブミン尿と有意かつ独立に関連していたMetS構成因子は,肥満,血圧高値,および血糖高値で,トリグリセリド高値とHDL-C低値では有意な関連はみられなかった。
各構成因子を保有する人の微量アルブミン尿のオッズ比(vs. 保有しない人)は以下のとおり。
肥満: 1.31 (95 %信頼区間1.01-1.70,P=0.037)
血圧高値: 2.37 (1.66-3.36,P<0.001)
血糖高値: 2.64 (1.97-3.55,P<0.001)
◇ 結論
微量アルブミン尿とメタボリックシンドローム(MetS)の関連を検討するため,日本人一般住民を対象とした断面解析を行った。その結果,MetSを有する人における微量アルブミン尿のオッズ比は約2倍だった。また,MetSの構成因子のうち微量アルブミン尿と独立に関連していたのは肥満,血圧高値,血糖高値だった。以上の結果より,腎障害や心血管合併症の予防のためには,MetSに対する早期の包括的・集中的な管理が重要であると考えられる。