[2007年文献] 肥満の人の医療費は,非肥満にくらべて有意に高い
国民健康保険に加入している一般住民を対象とした前向きコホート研究において,BMIにより評価した肥満が,長期的な医療費に及ぼす影響を検討した。平均9.0年間の追跡の結果,BMIと個人の医療費とのあいだにはJ字型の関連がみられ,肥満(25 kg/m2以上)の人では有意に高額であった。この結果は,喫煙者のみを対象とした解析でも同様であった。
Nakamura K, et al.; Health Promotion Research Committee of the Shiga National Health Insurance Organizations. Medical costs of obese Japanese: a 10-year follow-up study of National Health Insurance in Shiga, Japan. Eur J Public Health. 2007; 17: 424-9.
- コホート
- 滋賀国保コホート研究。
1989~1991年に健診を受診した40~69歳の国民健康保険加入者4535人のうち,健診データに不備のあった33人を除いた4502人を,2001年まで平均9.0年間追跡(40565人・年)。
人口寄与割合(population attributable fraction)と同様の考え方で,肥満(BMI 25.0 kg/m2以上)が寄与する(BMIが18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満であれば発生しなかった)集団の医療費を,以下のように推算した。
肥満が寄与する医療費(1か月あたり)
=(肥満の人の医療費[算術平均]-18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満の人の医療費[算術平均])×肥満者の数 - 結 果
- ◇ 対象背景
男女とも,BMI≧25.0 kg/m2の割合は約20%,≧30 kg/m2の割合は約1%であった。
BMIの3つのカテゴリー(18.5 kg/m2未満/18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満/25.0 kg/m2以上)間でおもな対象背景を比較した結果,25.0 kg/m2以上では高血圧,高脂血症および糖尿病の割合がもっとも高く,18.5 kg/m2未満では年齢,喫煙率および飲酒率がもっとも高くなっていた。
◇ BMIと個人の医療費
BMIのカテゴリーごとの,個人の医療費(加入1か月あたり,多変量調整後の幾何平均値†)は以下のとおりで,J字型の関連がみられ(P<0.01[ANCOVA]),25.0 kg/m2以上の人では,18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満に比して有意に高額であった。
(†年齢,性,喫煙,飲酒で調整)
18.5 kg/m2未満: 9295円
18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満: 8008円
25.0 kg/m2以上: 10439円(P<0.05 vs. 18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満)
以上の結果は,追跡開始から5年以内の死亡者を除外した解析,および喫煙者と非喫煙者に分けて行った解析でも同様であった。
また,以上の結果は外来医療費に限った解析でも同様であったが(P<0.01[ANCOVA]),入院医療費に限った分析では,18.5 kg/m2未満のカテゴリーでもっとも高くなる,逆J字型の関連がみられた(P<0.01)。
◇ BMIが寄与する医療費の増加
BMI 25.0 kg/m2以上が寄与する集団の医療費(算術平均,1か月あたり)は,284万6844円と推算された(対象者全体の医療費の3.1%)。
◇ BMIと全死亡リスク
BMIのカテゴリーごとの全死亡の調整ハザード比†(95%信頼区間)は以下のとおり。
18.5 kg/m2未満: 1.76(1.12-2.77)
18.5 kg/m2以上25.0 kg/m2未満: 1.00
25.0 kg/m2以上: 1.21(0.85-1.73)
◇ 結論
国民健康保険に加入している一般住民を対象とした前向きコホート研究において,BMIにより評価した肥満が,長期的な医療費に及ぼす影響を検討した。平均9.0年間の追跡の結果,BMIと個人の医療費とのあいだにはJ字型の関連がみられ,肥満(25 kg/m2以上)の人では有意に高額であった。この結果は,喫煙者のみを対象とした解析でも同様であった。