[1998年文献] 高齢者において,高インスリン血症は心血管疾患と有意に相関
Burchfiel CM, et al. Hyperinsulinemia and cardiovascular disease in elderly men: the Honolulu Heart Program. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1998; 18: 450-7.
- コホート
- 3562人。1991~1993年の検査時にインスリン値を測定した71~93歳。
- 結 果
- ・OGTT 2時間値などの記録があったもののうち,高インスリン血症の定義*を満たしたものは773例(21.7%)。
* 空腹時インスリン値≧20μU/mL;WHO定義で正常耐糖能;糖尿病の既往がない,糖尿病治療を受けたことがない;非肥満(BMI<25.0kg/m2);12時間以上の夜間絶食。
・高インスリン血症は,非高インスリン血症に比べ保有する心血管危険因子の数が多く,年齢調整後の冠動脈疾患(CHD),狭心症,末梢動脈疾患(PVD),アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,脳出血の発症率が高かった。
対象背景
BMI(非高インスリン血症 22.9,25.5kg/m2),フィブリノーゲン値( 305.1,313.1mg/dL),飲酒(31.5,34.8mL/日),身体活動指数(31.1,30.2),ヘマトクリット(43.8,45.2%),心拍数(63.2, 65.4拍/分),喫煙例(7.3,6.4%)。
・心血管疾患(CVD)を発症した高インスリン血症のCHDの年齢調整オッズ比は1.55,狭心症1.34,足首関節-上腕血圧係数(ABI)<0.9(PVD) 1.44,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症1.78,脳出血2.81と有意に上昇。年齢調整空腹時血糖値はCVD発症例で非発症例に比べ有意に高かったが(p<0.01),2時間インスリン値はそうではなかった。
・ロジスティック回帰分析によると,心血管多重危険因子で調整後,高インスリン血症とCHD,狭心症,PVDとの相関度は非有意レベルまで減弱したが,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,脳出血との相関は有意なままであった。
・非糖尿病例で多重解析を行った結果,相関度は若干弱くなり非有意であった。
アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症発症の非糖尿病例では,非発症例に比べ高インスリン血症がおよそ2倍であったが,ボーダーラインレベルの有意差であった(p=0.69)。
・コレステロール値が高い例で,高インスリン血症とPVD,脳卒中とやや強い相関がみられたが,CHDとは相関しなかった。対象背景と心血管疾患(1991~1993年の検査)非高インスリン血症 高インスリン血症 2789例 773例 危険因子 血糖値(mg/dL) 108.3 130.1 HDL-C(mg/dL) 52.8 44.0 トリグリセリド(mg/dL) 135.0 199.3 高血圧(%) 51.5 63.4 糖尿病治療例(%) 7.8 26.4 心血管疾患(%) CHD 15.2
21.8
(p<0.0001)狭心症 10.6 13.7
(p=0.0148)ABI<0.9(PVD) 12.5
16.9
(p=0.0020)アテローム塞栓性脳出血,心原性脳塞栓症 2.7 4.6
(p=0.0060)脳出血 0.6 1.6
(p=0.0074)危険因子のうち喫煙(p=0.40),飲酒(p=0.23)以外は有意差あり(p<0.0001)。