[1977年文献] 心筋梗塞+CHD死の発生率は,日本<ホノルル<サンフランシスコ
日本人の心筋梗塞+CHD死の発生率は,米国に住む日系アメリカ人よりも低いことがわかった。さらに日系アメリカ人の中でも,ホノルルに住む人の心筋梗塞+CHD死の発生率はサンフランシスコに住む人よりも低かった。この結果から,環境や生活習慣の変化によって,CHDの発症のしやすさ(susceptibility)が変化する可能性が示唆される。
Robertson TL, et al. Epidemiologic studies of coronary heart disease and stroke in Japanese men living in Japan, Hawaii and California. Incidence of myocardial infarction and death from coronary heart disease. Am J Cardiol. 1977; 39: 239-43.
- コホート
- ・ 日本コホート: 広島および長崎の45~68歳の日本人男性のうち,心筋梗塞既往またはその疑いのある人を除いた2096人を6年間追跡(9908人・年)。
・ ホノルルコホート: ハワイ州のオアフ島に住む45~68歳の日系人男性のうち,心筋梗塞既往またはその疑いのある人を除いた7705人を2年間追跡(15410人・年)。
・ サンフランシスココホート: カリフォルニア州サンフランシスコの8つの地域に住む45~68歳の日系人男性のうち,心筋梗塞既往またはその疑いのある人を除いた集団を2年間追跡。
それぞれのコホートの死因の調査には,死亡診断書,剖検データ,新聞の死亡広告,既往歴などが用いられた。
心筋梗塞発症率の調査には,日本とホノルルの比較では隔年の健診で実施された心電図データが用いられた。一方,ホノルルとサンフランシスコの比較では,質問票,病院の記録,カルテなどが用いられた。 - 結 果
- ◇ 日本とホノルルの比較
ホノルルコホートでは,年齢が高くなるほど心筋梗塞+冠動脈疾患(CHD)による死亡の発生率が高くなる傾向がみとめられた。
心筋梗塞+CHD死の発生率(年齢調整後,1000人・年あたり)は,日本1.6,ホノルル3.0で,この差は有意だった(P<0.01)。
◇ ホノルルとサンフランシスコの比較
サンフランシスコの心筋梗塞+CHD死の発生率(1000・人・年あたり)は,55~59歳を除いたすべての年齢層においてホノルルよりも高かった。
年齢調整後の心筋梗塞+CHD死の発生率(1000人・年あたり)は,ホノルル2.8,サンフランシスコ3.7で,この差は有意だった(P<0.05)。
以上のように,日本人の心筋梗塞+CHD死の発生率は,米国に住む日系アメリカ人よりも低いことがわかった。さらに日系アメリカ人の中でも,ホノルルに住む人の心筋梗塞+CHD死の発生率はサンフランシスコに住む人よりも低かった。この結果から,環境や生活習慣の変化によって,CHDの発症のしやすさ(susceptibility)が変化する可能性が示唆される。