[1975年文献] 日系アメリカ人男性のCHD死亡率は日本本土の日本人より高かった
米国に住む日系人男性のCHDによる死亡率は,日本本土の日本人男性の約2倍だったが,全死亡率および脳卒中による死亡率は,本土の日本人よりも低かった。
Worth RM, et al. Epidemiologic studies of coronary heart disease and stroke in Japanese men living in Japan, Hawaii and California: mortality. Am J Epidemiol. 1975; 102: 481-90.
- コホート
- (1) 日本コホート
日本の広島および長崎のABCC(Atomic Bomb Casualty Commission,原爆傷害調査委員会)の寿命調査(Life Span Study)コホート参加者のうち,1900~1919年に出生し,1965年1月1日の時点で生存していた日本人男性9329人(当時45~64歳)。
死因の調査(1965~1970年)には,人口動態統計データおよびABCCコホートの剖検データを用いた。
(2) ホノルルコホート
米国ハワイ州のオアフ島に住む日系人男性のうち,1900~1919年に出生した14400人(1965年1月1日時点で45~64歳)。
死因の調査(1966~1970年)には,地域の新聞の死亡記事および死亡診断書を用いた。
(3) サンフランシスココホート
米国本土カリフォルニア州サンフランシスコの特定の地域に住む日本人男性のうち,1903~1922年に出生した2180人(1968年1月1日時点で45~64歳)。
死因の調査(1968~1972年)には,地域の新聞の死亡記事および死亡診断書を用いた。 - 結 果
- 1965~1970年の日本コホートにおける死亡は996人。うち327人について剖検が行われた(剖検率約33 %)。
1966~1970年のホノルルコホートにおける死亡は580人。剖検率は約50 %。
◇ 死因別死亡率
・ 全死亡
3コホート中,全死亡率がもっとも高いのは日本だった。1000人あたりの年間全死亡率は以下のとおりで,すべての年齢層において,3コホート間で互いに有意差がみとめられた。
50~54歳: 日本9.4,ホノルル4.5,サンフランシスコ3.3 (P=0.001)
55~59歳: 13.9,7.6,13.9 (P=0.001)
60~64歳: 24.5,13.7,14.8 (P=0.001)
・ 脳卒中死亡
3コホート中,脳卒中死亡率がもっとも高いのは日本だった。60~64歳の年齢層においてのみ,3コホート間で互いに有意差が認められた。1000人あたりの年間死亡率は以下のとおり。サンフランシスココホートでは,50~54歳の脳卒中による死亡者はいなかった。
50~54歳: 日本1.4,ホノルル0.5,サンフランシスココホートなし
55~59歳: 1.5,0.9,0.5
60~64歳: 5.4,1.1,2.5 (P=0.001)
・ 冠動脈疾患(CHD)
CHD死亡率がもっとも高かったのはサンフランシスココホート,次に高かったのはホノルルコホートで,もっとも低かったのは日本コホート。55~59歳の年齢層においてのみ,3コホート間で互いに有意差が認められた。1000人あたりの年間死亡率は以下のとおり。
50~54歳: 日本0.4,ホノルル1.1,サンフランシスコ1.3
55~59歳: 1.4,1.7,4.8(P=0.01)
60~64歳: 2.1,3.9,4.9
以上のように,米国に住む日系人男性のCHDによる死亡率は,日本本土の日本人男性の約2倍だったが,全死亡率および脳卒中による死亡率は,本土の日本人よりも低かった。