[2006年文献] 日本人男性の血中アディポネクチンは,肥満の多いアメリカ人男性よりも低い
肥満の多いアメリカ人男性では日本人男性よりも動脈硬化が進展しているが,その原因の一つとして,アメリカ人男性では血中アディポネクチン値が低いのではないかとの仮説を検証するために比較を行った。その結果,予想に反して,アメリカ人男性のほうが有意に高いアディポネクチン値を示した。これまでに,アメリカ人男性にくらべ,日本人男性では内臓脂肪 / 皮下脂肪比が大きいとの報告もあることから,腹囲の大小にかかわらず,内臓脂肪面積がアディポネクチンに影響している可能性が考えられる。
Kadowaki T, et al. Higher levels of adiponectin in American than in Japanese men despite obesity. Metabolism. 2006; 55: 1561-3.
- コホート
- 肥満の多いアメリカ人男性では日本人男性よりも動脈硬化が進展しているが,その原因の一つとして,血中アディポネクチン値が低いのではないかとの仮説を検証するために,血中アディポネクチン値* の比較を行った。
* アディポネクチンとは,脂肪組織から分泌されるホルモン。インスリン感受性亢進,動脈硬化抑制,抗炎症などの作用をもち,肥満者で低値を示すことが知られている。
第二次世界大戦後出生コホート(Post World War II Birth Cohort)。
・ 日本(滋賀県草津市)
住民基本台帳から無作為に抽出され,2001年5月~2002年12月の期間に電話連絡に応じた40~49歳の地域住民男性203人のうち,CT画像に不備がなく,糖尿病・冠動脈疾患既往のない92人。
・ 米国(ペンシルベニア州アレゲーニー)
2002年6月~10月の期間に,ピッツバーグ大学医療センター健康保険(おもに大学関係者が加入)による参加者公募に応じた40~49歳の男性98人(糖尿病・冠動脈疾患既往なし)。
血中アディポネクチンは,食後12時間後の血液検体を用いて放射免疫測定により定量した。 - 結 果
- ◇ アディポネクチンの比較
アディポネクチンは,アメリカ人(13.3 microgram/mL)で日本人(7.3 microgram/mL)よりも有意に高い値を示した。
◇ 腹囲とアディポネクチン
腹囲により全体を以下のように三分位に分けると,いずれの三分位においても,アメリカ人のアディポネクチン値は日本人よりも有意に高かった(それぞれP<0.001,P<0.001,P=0.001)
68~85 cm: 64人(アメリカ人17人,日本人47人)
85~95 cm: 58人(アメリカ人23人,日本人35人)
95~125 cm: 68人(アメリカ人58人,日本人10人)
◇ アディポネクチンに関連する因子
目的変数をアディポネクチン,説明変数をコホート[米国 / 日本])および腹囲とした回帰分析を行った。
その結果,コホートと腹囲はいずれもアディポネクチンと有意に関連していた(それぞれP<0.001, P=0.013)。
コホートとアディポネクチンとの関連の有意性は,空腹時血糖,LDL-C,トリグリセリド,HDL-Cにより調整しても変わらなかった(P<0.001)。
◇ 結論
肥満の多いアメリカ人男性では日本人男性よりも動脈硬化が進展しているが,その原因の一つとして,アメリカ人男性では血中アディポネクチン値が低いのではないかとの仮説を検証するために比較を行った。その結果,予想に反して,アメリカ人男性のほうが有意に高いアディポネクチン値を示した。これまでに,アメリカ人男性にくらべ,日本人男性では内臓脂肪 / 皮下脂肪比が大きいとの報告もあることから,腹囲の大小にかかわらず,内臓脂肪面積がアディポネクチンに影響している可能性が考えられる。