[2006年文献] 日本人男性の内臓脂肪面積は,腹囲が同レベルの白人男性より大きい

日本人は,欧米人にくらべて肥満度は低いにもかかわらず代謝性疾患を発症しやすいことが指摘されている。そこで,CTにより測定した内臓脂肪面積を,腹囲が同レベルの日本人男性と米国の白人男性で比較した。その結果,全体的に日本人は白人よりも肥満度が低かったものの,どの腹囲カテゴリーにおいても,日本人の内臓脂肪面積および内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比は白人よりも高値であった。

Kadowaki T, et al. Japanese men have larger areas of visceral adipose tissue than Caucasian men in the same levels of waist circumference in a population-based study. Int J Obes (Lond). 2006; 30: 1163-5.pubmed

コホート
滋賀県草津市の住民から無作為に抽出された40~49歳の男性240人,および米国ペンシルベニア州アレゲーニーの住民から無作為に抽出された40~49歳の男性240人のうち,非白人の44人,腹囲が極端な(平均±2 SDを超える)値であった20人を除いた416人(日本人239人,白人177人)。
平均年齢は白人,日本人とも45.1歳。

腹部CT検査により,第4腰椎・第5腰椎間の腹部脂肪組織(abdominal adipose tissue: AAT)面積と内臓脂肪組織(visceral adipose tissue: VAT)面積を測定し,AATからVATを差し引いた値を皮下脂肪組織(subcutaneous adipose tissue: SAT)面積とした。

腹囲の四分位数を用い,対象者を以下のカテゴリーに分けた。
  Q1: 67.95~82.80 cm(白人11人,日本人93人)
  Q2: 82.85~88.85 cm(29人,74人)
  Q3: 88.90~96.75 cm(57人,49人)
  Q4: 97.00~114.25 cm(80人,23人)
結 果
◇ 対象背景
日本人で白人より有意に値が低かったのは腹囲(日本人85.3 cm,白人95.4 cm),腹部脂肪組織(AAT)(161.6 cm2,230.2 cm2),皮下脂肪組織(SAT)(82.3 cm2,134.9 cm2),および内臓脂肪組織(VAT)(79.3 cm2,95.2 cm2)で(いずれもP<0.001),白人より有意に値が高かったのはVAT/SAT比(1.02,0.75)(P<0.001)。
腹囲とAATの相関係数は,日本人で0.92,白人で0.90であった。

◇ AAT
腹囲のカテゴリーごとのAAT(cm2)は以下のとおりで,Q4では日本人のほうが白人より有意に低値であった。
  Q1: 日本人105.5,白人111.3
  Q2: 166.7,159.0
  Q3: 210.7,201.5
  Q4: 267.6,292.8(P=0.009)

◇ SAT
腹囲のカテゴリーごとのSAT(cm2)は以下のとおり。いずれの四分位でも日本人のほうが白人より低値であり,Q1およびQ4では有意差がみられた。
  Q1: 日本人52.6,白人63.7(P=0.040)
  Q2: 81.8,88.7
  Q3: 109.0,116.0
  Q4: 147.3,175.0(P=0.001)

◇ VAT
腹囲のカテゴリーごとのVAT(cm2)は以下のとおり。いずれの四分位でも日本人のほうが白人より高値であり,Q2およびQ3では有意差がみられた。
  Q1: 52.9,47.6
  Q2: 84.8,70.2(P=0.001)
  Q3: 101.7,85.5(P<0.001)
  Q4: 120.3,117.8

◇ VAT/SAT
腹囲のカテゴリーごとのVAT/SAT比は以下のとおりで,Q1~Q4のすべてで,日本人のほうが白人より有意に高値であった。
  Q1: 1.06,0.76(P<0.001)
  Q2: 1.06,0.84(P=0.001)
  Q3: 0.96,0.77(P<0.001)
  Q4: 0.86,0.71(P=0.026)


◇ 結論
日本人は,欧米人にくらべて肥満度は低いにもかかわらず代謝性疾患を発症しやすいことが指摘されている。そこで,CTにより測定した内臓脂肪面積を,腹囲が同レベルの日本人男性と米国の白人男性で比較した。その結果,全体的に日本人は白人よりも肥満度が低かったものの,どの腹囲カテゴリーにおいても,日本人の内臓脂肪面積および内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比は白人よりも高値であった。


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