[2012年文献] 40代男性の大動脈石灰化は,大動脈スティフネス進展と関連
血管の老化を示す大動脈スティフネスは,心血管疾患および全死亡の独立した危険因子であり,末期腎疾患患者や高齢者を対象とした研究では,大動脈の石灰化が大動脈スティフネスの重要な指標であることが示されている。しかし,若年者における大動脈石灰化と大動脈スティフネスとの関連は明らかになっていない。そこで,40~49歳の男性(白人,アフリカ系アメリカ人,日系アメリカ人,韓国人男性)における断面解析による検討を行った結果,CTで評価した大動脈石灰化は,cfPWVで評価した大動脈スティフネスと有意に関連することが示され,この結果は人種間で同様であった。このことから,石灰化は大動脈スティフネス進展のメカニズムの一つであること,また,早ければ40歳代からこの2つの関連が生じることが示唆された。
Sekikawa A, et al. Aortic stiffness and calcification in men in a population-based international study. Atherosclerosis. 2012; 222: 473-7.
- コホート
- 第二次世界大戦後出生コホート(Post-World War II Birth Cohort)。
2002~2006年に心血管疾患あるいはその他の重篤な疾患を有していない,4か国の40~49歳の一般住民男性(米国ペンシルベニア州アレゲーニーの有権者登録リストから無作為に抽出されたアフリカ系アメリカ人107人および白人310人,滋賀県草津市の住民基本台帳から無作為に抽出された日本人310人,ホノルル心臓調査参加者の子供が登録されたリストより無作為に抽出された米国ハワイ州の日系アメリカ人303人,前向きコホート研究Korean Health and Genomic Studyの対象者から無作為に抽出された韓国京畿道安山市の302人)のうち,頸動脈-大腿動脈脈波伝播速度(cfPWV)が測定されていなかった日本人310人,cfPWVデータに不備のある75人,大動脈石灰化のデータに不備のある41人を除いた906人(アフリカ系アメリカ男性81人,日系アメリカ人276人,韓国人291人,白人258人)(横断研究)。
平均45.2歳。
大動脈スティフネスはcfPWVにより評価。
大動脈石灰化については,電子線CTを用いてAgatston法による大動脈石灰化スコア(aortic calcium score: ACS)を算出し,全体を以下の4つのグループに分けて解析を行った。
0:303人,1~100:411人,101~400:110人,400超:82人 - 結 果
- ◇ 対象背景
大動脈石灰化スコア(ACS)と有意な正の関連を示していたのは,頸動脈-大腿動脈脈波伝播速度(cfPWV)(P for trend<0.001),年齢(P for trend=0.002),平均動脈圧(MAP)(P for trend<0.001),BMI(P for trend<0.001),喫煙状況(P for trend<0.001),トリグリセリド(P for trend=0.001)糖尿病(P for trend=0.003),降圧薬使用(P for trend=0.005),脂質低下薬服用率(P for trend=0.017)であった。
◇ 大動脈石灰化と大動脈スティフネスの関連
cfPWVはACSと有意な正の関連を示しており,この関連は,年齢,人種,およびMAPで調整後(モデル1),さらにBMI,喫煙箱数(年),糖尿病,降圧薬使用で調整後(モデル2),さらに加えてLDL-C,HDL-C,トリグリセリド,脂質低下薬服用で調整後(モデル3)も同様であった。
ACSのカテゴリーごとのcfPWV(cm/秒)は以下のとおり(それぞれACS 0,1~100,101~400,400超の値)。
[モデル1]836,850,877,941(P for trend<0.001)
[モデル2]848,841,870,944(P for trend<0.001)
[モデル3]849,840,869,947(P for trend<0.001)
人種ごとに解析を行った結果,いずれの人種においても,ACSとcfPWVとの正の関連がみとめられた。
◇ 結論
血管の老化を示す大動脈スティフネスは,心血管疾患および全死亡の独立した危険因子であり,末期腎疾患患者や高齢者を対象とした研究では,大動脈の石灰化が大動脈スティフネスの重要な指標であることが示されている。しかし,若年者における大動脈石灰化と大動脈スティフネスとの関連は明らかになっていない。そこで,40~49歳の男性(白人,アフリカ系アメリカ人,日系アメリカ人,韓国人男性)における断面解析による検討を行った結果,CTで評価した大動脈石灰化は,cfPWVで評価した大動脈スティフネスと有意に関連することが示され,この結果は人種間で同様であった。このことから,石灰化は大動脈スティフネス進展のメカニズムの一つであること,また,早ければ40歳代からこの2つの関連が生じることが示唆された。