[2005年文献] サプリメントをよく使用していたのは日系人,および禁煙者,糖尿病既往のある人など(米国人調査)

サプリメントの使用率は性別,年齢,人種などで大きく異なり,アメリカ人の中でも日系人,および糖尿病既往のある人や禁煙者など,健康に関心のある層で使用率が高いことが示された。また,サプリメント使用者は非使用者に比べて各種ビタミン・ミネラルの総摂取量が多い傾向があったが,食事のみで必要量を満たす栄養素も多く,その場合のサプリメントの効果は不明とされた。サプリメントには,微量栄養素の摂取バランスを容易に変化させる可能性もある。詳細成分が不明なNDS非掲載サプリメントなども含め,その使用に対する評価の重要性が示唆される。

Association of dietary supplement use with specific micronutrient intakes among middle-aged American men and women: the INTERMAP Study. J Am Diet Assoc. 2005; 105: 1106-14.pubmed

コホート
1997~1999年にINTERMAP研究に参加した40~59歳のアメリカ人8集団2195人(男性1102人,女性1093人)。

微量栄養素およびサプリメントの摂取量については,24時間思い出し法(4日間)によりデータを得た。特に,サプリメントについては調査時に実物を持参してもらい,名称,説明書,量,使用頻度を記録した。このうち,アメリカで種々の食品の成分表を公開している栄養情報データベース(Nutrition Data System,NDS)に掲載されていないサプリメントについては,材料が薬草や動植物性薬品,リン脂質,酵素などであったり,製法が独自かつ非公開であったりすることから,含まれる物質の種類や量が不明なものが多かった。このため,この研究ではNDS掲載サプリメントとNDS非掲載サプリメントを分けた検討も行った。
結 果
サプリメントの使用率は性別,年齢,人種などで大きく異なり,アメリカ人の中でも日系人,および糖尿病既往のある人や禁煙者など,健康に関心のある層で使用率が高いことが示された。また,サプリメント使用者は非使用者に比べて各種ビタミン・ミネラルの総摂取量が多い傾向があったが,食事のみで必要量を満たす栄養素も多く,その場合のサプリメントの効果は不明とされた。
サプリメントには,微量栄養素の摂取バランスを容易に変化させる可能性もある。詳細成分が不明なNDS非掲載サプリメントなども含め,その使用に対する評価の重要性が示唆される。

サプリメントを使用していたのは52%(1136人)。NDS掲載サプリメントのみを使用していたのは29%(640人)だった。
男女別に見ると,女性のサプリメント使用率(56%)のほうが男性(46%)よりも高かった。
また,50~59歳の年齢層のサプリメント使用率(56%)のほうが,40~49歳(48%)よりも高かった。

人種別に見ると,サプリメントの使用率が63%ともっとも高かったのはアジア系アメリカ人(主にハワイの日系アメリカ人コホート)で,もっとも低かったのはアフリカ系ヒスパニック(39%)。

多変量回帰分析によると,禁煙は,すべてのサプリメントの使用,NDS掲載サプリメントのみの使用,およびNDS非掲載サプリメントの使用と有意に相関した(vs. 喫煙未経験)。
一方,喫煙は,すべてのサプリメントの使用,NDS掲載サプリメントのみの使用,およびNDS非掲載サプリメントの使用と逆相関の傾向を示した(vs. 非喫煙)。
また,BMIはNDS掲載サプリメントのみの使用,およびNDS非掲載サプリメントの使用と逆相関傾向を示した。

その他に,サプリメントの使用と相関傾向を示したのは,特別食*,飲酒,糖尿病 / 降圧薬服用。
NDS掲載サプリメントのみの使用と逆相関傾向を示したのは,心疾患 / 高血圧。
(*特別食: 体重管理食,ベジタリアン食,減塩食,糖尿病食,脂肪管理食など)

◇ビタミン
サプリメントにより多く摂取されていたのは,ビタミンC,ビタミンE,ビタミンB6,ビタミンB12。なお,食事由来のビタミンA,ビタミンCおよびナイアシンは1日の必要量を満たしていたが,ビタミンEおよび葉酸は,食事からだけでは推定平均必要量を下回っていた。

サプリメント使用者のビタミンA,ビタミンC,ビタミンEおよびナイアシンの総摂取量は,非使用者よりもかなり多かった。
また,サプリメント使用者では,食事由来のビタミンA,ビタミンCおよび葉酸の摂取量についても,非使用者より多い傾向があった。
サプリメント使用者のビタミンの総摂取量はすべて推定平均必要量を上回っており,ビタミンA,ビタミンC,ビタミンEおよびナイアシンについては必要量の数倍にもおよんだ。一方,非使用者のビタミンEと葉酸の摂取量は,推定平均必要量を下回っていた。

◇ミネラル
リン,鉄,マグネシウム,セレン,亜鉛,カルシウムのうち,食事のみによる摂取量が必要量を下回っていたのはカルシウムのみで,サプリメントによりもっとも多く摂取されていたのもカルシウムだった。
サプリメント使用者のリン,鉄,マグネシウム,セレン,亜鉛,カルシウム(50歳以下)の総摂取量はすべて必要量を上回っていたが,50歳超の年齢層のカルシウム摂取量は必要量を下回っていた。
また,サプリメント使用者では,食事由来のリンおよびマグネシウムの摂取量についても,非使用者より高い傾向があった。

以上のように,サプリメントの使用率は性別,年齢,人種などで大きく異なり,アメリカ人の中でも日系人,および糖尿病既往のある人や禁煙者など,健康に関心のある層で使用率が高いことが示された。また,サプリメント使用者は非使用者に比べて各種ビタミン・ミネラルの総摂取量が多い傾向があったが,食事のみで必要量を満たす栄養素も多く,その場合のサプリメントの効果は不明とされた。
サプリメントには,微量栄養素の摂取バランスを容易に変化させる可能性もある。詳細成分が不明なNDS非掲載サプリメントなども含め,その使用に対する評価の重要性が示唆される。


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