[2019年文献] 塩分摂取量はBMIと有意な正の関連を示す
これまでのいくつかの研究により,塩分の過剰な摂取は過体重・肥満の危険因子となることが示唆されていたが,塩分摂取量の推算法の違いや実施された国により結果はさまざまであった。そこで,INTERMAP研究に参加した,日本・中国・英国・米国の一般住民を対象として,24時間蓄尿による尿中ナトリウム排泄量により推算した塩分摂取量と,BMIとの関連を調べた。その結果,1日の塩分摂取量が1 g高くなるごとに,BMIの回帰係数βが,日本では0.28,中国で0.10,英国で0.42,米国で0.52増加した。さらに過体重・肥満(BMI≧25 kg/m2)の人の割合は,それぞれ21%,4%,29%,24%増加した。これらの関連は,1日の総エネルギー摂取量とは独立した結果であった。
Zhou L, et al.; INTERMAP Research Group. Salt intake and prevalence of overweight/obesity in Japan, China, the United Kingdom, and the United States: the INTERMAP Study. Am J Clin Nutr. 2019; 110: 34-40.
- コホート
- INTERMAP研究に参加した日本(4集団),中国(3集団),英国(2集団)ならびに米国(8集団)の40~59歳の4680人(断面解析)。4回の調査により,参加者の食品の摂取量(4回の24時間思い出し法),血圧(8回)を調査し,24時間蓄尿検査を2回行った。
塩分摂取量は24時間蓄尿による尿中ナトリウム排泄量により推算した。
WHOの分類に基づき,BMI≧25 kg/m2を「過体重・肥満」と定義した。 - 結 果
- ◇ 対象背景
過体重・肥満の有無(<25 kg/m2 vs. ≧25 kg/m2)ごとにみた,各国の参加者の背景は以下のとおり。
男性の割合: [日本]47.6% vs. 57.2%,[中国]55.8% vs. 31.3%,[英国]39.5% vs. 59.0%,[米国]36.5% vs. 55.7%,[全体]46.2% vs. 54.2%
年齢(歳): 49.2 vs. 49.9,49.2 vs. 48.3,47.3 vs. 49.9,48.8 vs. 49.3,48.9 vs. 49.4
飲酒率: 90.5% vs. 91.5%,48.8% vs. 36.0%,92.8% vs. 86.8%,72.1% vs. 69.0%,73.9% vs. 71.4%
総エネルギー摂取量(kcal/日): 2012 vs. 2112,2033 vs. 2051,2166 vs. 2169,2058 vs. 2317,2041 vs. 2247
塩分摂取量(g/日): 11.1 vs. 13.1,12.7 vs. 15.1,7.3 vs. 9.0,7.9 vs. 10.1,10.4 vs. 10.8
◇ 塩分摂取量とBMIとの関連
1日の塩分摂取量が1 g高くなるごとのBMIの多変量調整†後の回帰係数β(95%信頼区間)は以下のとおり。すべての国で塩分摂取量とBMIとのあいだに有意な正の関連がみられた(†年齢,性別,集団,喫煙,飲酒,教育年数,運動,総エネルギー摂取量,食物繊維の摂取量で調整)。
[日本]0.28(0.23-0.34),P<0.0001,[中国]0.10(0.05-0.14),P=0.0001,[英国]0.42(0.27-0.56),P<0.0001,[米国]0.52(0.45-0.59),P<0.0001,[全体]0.34(0.30-0.38),P<0.0001
1日の塩分摂取量が1 g高くなるごとの過体重・肥満の多変量調整†オッズ比(95%信頼区間)をみたところ,すべての国で塩分摂取量と過体重・肥満とのあいだに有意な正の関連がみられた。
[日本]1.21(1.16-1.27),P<0.0001,[中国]1.04(1.00-1.08),P=0.0332,[英国]1.29(1.17-1.42),P<0.0001,[米国]1.24(1.19-1.29),P<0.0001,[全体]1.16(1.13-1.18),P<0.0001
◇ 結論
これまでのいくつかの研究により,塩分の過剰な摂取は過体重・肥満の危険因子となることが示唆されていたが,塩分摂取量の推算法の違いや実施された国により結果はさまざまであった。そこで,INTERMAP研究に参加した,日本・中国・英国・米国の一般住民を対象として,24時間蓄尿による尿中ナトリウム排泄量により推算した塩分摂取量と,BMIとの関連を調べた。その結果,1日の塩分摂取量が1 g高くなるごとに,BMIの回帰係数βが,日本では0.28,中国で0.10,英国で0.42,米国で0.52増加した。さらに過体重・肥満(BMI≧25 kg/m2)の人の割合は,それぞれ21%,4%,29%,24%増加した。これらの関連は,1日の総エネルギー摂取量とは独立した結果であった。