[2020年文献] カリウム摂取量を増やすためには,野菜・果物,魚介類,牛乳・乳製品の摂取量を増やすことが有効

カリウムを多く摂取する人は,血圧値が低く,さらに心血管疾患死亡リスクが低いと報告されている。日本人は諸外国に比してナトリウム摂取量が多く,カリウム摂取量が少ないことが知られているが,カリウムの摂取源となる食品の摂取状況についての報告はほとんどない。そこで,INTERMAP研究に参加した日本人を対象として,24時間蓄尿によるカリウムの排泄量と各食品の摂取量との関連を調べた。その結果,カリウムのおもな摂取源は,野菜・果物,魚介類,コーヒー・お茶,牛乳・乳製品であった。また,尿中カリウム排泄量が多い人は,炭水化物の摂取量が少なく,魚類,野菜・果物,牛乳・乳製品の摂取量が多い傾向であった。日本人がカリウム摂取量を増やすためには,これらの食品の摂取量を増やすことが有効である可能性が示唆された。

Okuda N, et al. Food Sources of Dietary Potassium in the Adult Japanese Population: The International Study of Macro-/Micronutrients and Blood Pressure (INTERMAP). Nutrients. 2020; 12(3). pii: E787.pubmed

コホート
INTERMAP研究に参加した日本人の4集団(富山,札幌,滋賀,和歌山)のうち,40~59歳の1145人(男性574人,女性571人)。2〜3週間おきに2日間連続して,計4回の健診を行い,身体測定,血圧測定,医学的なデータと生活習慣のデータを収集し,食事調査(24時間思い出し法,4日間)と24時間蓄尿(2回)を行った(断面研究)。

体重(kg)あたりの24時間尿中カリウム排泄量(K[mmol/24時間]/体重1 kg: [UK / BW])の四分位値により,対象者を男女別に4つのカテゴリー(Q1~Q4)に分類した。
結 果
食事調査の結果から推算されたカリウム摂取量(総摂取エネルギー1000 kcalあたり)の平均値は2791 mg/日であった。含まれる食品群ごとのカリウム摂取量(その食品の摂取1000 kcalあたり)は,炭水化物182 mg/日,魚介類・水産加工品333 mg/日,肉類・肉加工品・卵168 mg/日,野菜・果物1262 mg/日,牛乳・乳製品200 mg/日,コーヒー・お茶205 mg/日,汁物・調味料206 mg/日であった。

◇対象背景
・男性
 年齢(歳): [Q1]49.2,[Q2]48.8,[Q3]49.7,[Q4]50.4,P for trend=0.02
 BMI(kg/m2): 24.4,24.1,23.6,22.8,P for trend<0.01
 飲酒: 96.5%,96.5%,97.2%,98.6%,P for trend=0.59
 喫煙: 57.3%,54.9%,47.9%,46.9%,P for trend=0.006
 収縮期血圧(mmHg): 123.2,120.2,119.5,118.7,P for trend=0.003
 拡張期血圧(mmHg): 78.8,77.2,76.3,74.9,P for trend=0.001

・女性
 年齢(歳): [Q1]48.3,[Q2]48.9,[Q3]48.9,[Q4]50.7,P for trend<0.01
 BMI(kg/m2): 24.4,23.5,22.7,22.1,P for trend<0.01
 飲酒: 82.4%,82.5%,88.1%,83.9%,P for trend=0.38
 喫煙: 12.7%,9.8%,5.6%,6.3%,P for trend=0.31
 収縮期血圧(mmHg): 115.5,115.2,113.4,112.2,P for trend=0.026
 拡張期血圧(mmHg): 71.5,71.2,69.8,69.2,P for trend=0.021

◇ 24時間蓄尿による,体重(kg)あたりのカリウムならびにナトリウム排泄量(mmol/24 時間/kg)

・男性
 カリウム: [Q1]0.52,[Q2]0.67,[Q3]0.78,[Q4]1.00,P for trend<0.001
 ナトリウム: 2.74,3.09,3.3,3.54,P for trend<0.001
 ナトリウム/カリウム比(mmol/mmol): 5.33,4.67,4.3,3.61,P for trend<0.001

・女性
 カリウム: [Q1]0.59,[Q2]0.77,[Q3]0.94,[Q4]1.24,P for trend<0.001
 ナトリウム: 2.82,3.36,3.56,3.76,P for trend<0.001
 ナトリウム/カリウム比(mmol/mmol): 4.91,4.4,3.84,3.11,P for trend<0.001

◇ 各食品から摂取するカリウム摂取量
体重(1 kg)あたりの24時間尿中カリウム排泄量(UK / BW)によるカテゴリーごとにみた,各食品の摂取エネルギー1000 kcalあたりのカリウム摂取量は以下のとおり。尿中カリウム排泄量が多い人は,炭水化物の摂取量が少なく,魚介類,野菜・果物,牛乳・乳製品の摂取量が多い傾向であった。

 炭水化物: [Q1]95,[Q2]94,[Q3]86,[Q4]84,P for trend<0.001
 魚類・水産加工品: 148,161,168,177,P for trend<0.001
 肉類・肉加工品・卵: 125,123,118,116,P for trend=0.03
 野菜・果物: 511,583,660,793,P for trend<0.001
 飲料*・菓子・スナック類: 260,273,279,306,P for trend<0.001
  牛乳・乳製品: 84,94,101,131,P for trend<0.001
 汁物・調味料: 95,101,106,107,P for trend<0.001
*牛乳,乳製品,コーヒー,お茶,果物ジュース,アルコールなど)

◇結論
カリウムを多く摂取する人は,血圧値が低く,さらに心血管疾患死亡リスクが低いと報告されている。日本人は諸外国に比してナトリウム摂取量が多く,カリウム摂取量が少ないことが知られているが,カリウムの摂取源となる食品の摂取状況についての報告はほとんどない。そこで,INTERMAP研究に参加した日本人を対象として,24時間蓄尿によるカリウムの排泄量と各食品の摂取量との関連を調べた。その結果,カリウムのおもな摂取源は,野菜・果物,魚介類,コーヒー・お茶,牛乳・乳製品であった。また,尿中カリウム排泄量が多い人は,炭水化物の摂取量が少なく,魚類,野菜・果物,牛乳・乳製品の摂取量が多い傾向であった。日本人がカリウム摂取量を増やすためには,これらの食品の摂取量を増やすことが有効である可能性が示唆された。


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