[2020年文献] 健康的な植物性の食品を中心とした食事は血圧低値と関連する
野菜や果物,全粒穀物などの植物性食品を多く摂取し,加工食品や動物性食品の摂取を減らすことは,心血管疾患(CVD)リスクの低下と関連している。このような食事の総合的な指標として,植物性食品の指標(plant-based diet index : PDI),さらにPDIを,健康的な植物性食品の指標(healthy PDI: hPDI)と不健康な植物性食品の指標(unhealthy PDI: uPDI)にわけた3つが提案されており,hPDIは冠動脈疾患と負に関連し,uPDIは正に関連することが報告されている。しかし,PDIと血圧との関連を,異なる母集団で同時に検討した研究はこれまでなかった。そこで,食事パターンの異なる4ヵ国の母集団において,各国の食事ガイドラインに合わせて改変した各PDIと血圧との関連を断面的に評価した。その結果,改変hPDIは血圧低値と関連し,改変uPDIは血圧高値と関連していた。この結果は,野菜や全粒穀物を中心とした植物性食品の摂取量を増やし,精製穀物や加糖飲料,肉類の摂取量を減らすことは,血圧によい影響をおよぼす可能性を示唆している。また,植物性食品の栄養の質が,動物性食品の摂取量を減らすことと同様に重要であることが示された。
Aljuraiban G, et al.; INTERMAP Research Group. Association between plant-based diets and blood pressure in the INTERMAP study. BMJ Nutr Prev Health. 2020; 3: 133-142.
- コホート
- INTERMAPに参加した日本,中国,英国,米国の40~59歳の4895人のうち,全4回の評価に参加しなかった110人,信頼性の高い食事データが得られなかった7人,1日の総エネルギー摂取量が500 kcal未満または5000 kcal以上(女性),500 kcal未満または8000 kcal以上(男性)の37人,データに不備のあった61人を除外した4680人(うち女性は2321人)。3週間の間隔をあけて連続2日間,計4回の評価において,4回の食事調査(24時間思い出し法),8回の血圧測定を行った(断面研究)。
Satijaらが提唱した,植物性食品の指標(PDI),健康的な植物性食品の指標(hPDI),不健康な植物性食品の指標(uPDI)*を,各国の食事ガイドラインに従って改変した。全母集団で多く摂取されていた12の食品群(果物,野菜,豆類,植物性油脂,茶/コーヒー,精製穀物,芋類,スイーツ/デザート,動物性脂肪,卵,肉類,加工食品)について,国の推奨摂取量と同等以上を摂取している参加者をもっとも摂取量が多い群(Q4群)に分類し,4点を加点,推奨摂取量に満たない参加者を摂取量に応じて下位3群(Q3~Q1群)に分類し,3~1点を加点した。摂取量が少なかった6食品群(ナッツ類,魚介類,果汁,全粒穀物,乳製品,加糖飲料)については,摂取していれば1点,摂取していなければ0点とした。これらのスコアを合計し,改変PDI,hPDI,uPDIを算出した。高スコアほど動物性食品の摂取が少ないことを示すが,指標により健康の度合いは異なる。最高スコアは54点,最低スコアは12点。
*PDIは植物性食品に加点し,動物性食品に減点する。一方,hPDIは複数のメタ解析の結果から健康的とされる植物性食品(全粒穀物,果物,野菜,ナッツ類,豆類,植物性油脂,茶/コーヒー)に加点,不健康とされる植物性食品(果汁,加糖飲料,精製穀物,芋類,スイーツ/デザート)や動物性食品(乳製品,卵,魚介類,肉類[ハンバーガーなどを含む])に減点し,uPDIは不健康な植物性食品に加点,健康的な植物性食品に減点する。 - 結 果
- ◇対象背景
ベースラインの対象者の背景は以下のとおり。
対象者数(人): [Q1]1233,[Q2]1046,[Q3]1258,[Q4]1143
hPDI(中央値): 25,29,31,35
PDI: 26.1,28.1,29.6,31.6,P<0.0001
uPDI: 31.8,30.3,29.1,27.1,P<0.0001
男性: 53. 5%,52.6%,51.4%,44.1%
喫煙率: 30.0%,26.0%,23.2%,18.5%
サプリメント服用: 27.3%,30.2%,37.4%,44.1%
心血管疾患(CVD)/糖尿病既往: 10.8%,11.4%,14.4%,13.5%
降圧薬,心血管疾患/糖尿病治療薬服用: 29.5%,30.7%,29.9%,27.4%
高血圧家族歴: 51.4%,53.2%,57.3%,56.7%
特別食遵守率: 9.3%,11.8%,13.4%,19.3%
年齢(歳): 48.9,48.6,49.2,49.9,P<0.0001
教育(年): 12.0,12.2,12.4,12.7,P<0.0001
中等度~高度の身体活動(時間/日): 3.4,3.6,3.5,3.4,P=0.27
収縮期血圧(SBP,mmHg): 120.2,119.8,118.4,117.7,P=0.0007
拡張期血圧(DBP,mmHg): 74.7,74.2,73.5,73.3,P=0.004
BMI(kg/m2): 26.0,26.7,26.3,25.7,P<0.0001
総エネルギー摂取量(kcal/日): 2273,2174,2113,2034,P<0.0001
尿中ナトリウム排泄量(mmol/24時間): 183.8,178.8,168.8,158.0,P=0.03
尿中カリウム排泄量(mmol/24時間): 49.2,51.3,54.3,58.7,P<0.0001
◇ 改変PDI,改変hPDIと血圧の関連
改変PDIスコアと血圧との関連はみられなかった。改変hPDIスコアの6 点(1 SD)増加ごとの血圧の変化†(95%信頼区間)は以下のとおり。改変hPDIスコアはが高いほど,SBP,DBPがそれぞれ低いという有意な関連がみられた。この関連は,BMI,尿中ナトリウム・カリウム排泄量で調整しても変わらなかったが,野菜,全粒穀物で調整すると弱まった(† 母集団,年齢,性別,中等度~高度の身体活動,サプリメント服用,過去7日間の飲酒,喫煙,総エネルギー摂取量,CVD/糖尿病既往,高血圧家族歴,教育年数,降圧薬・CVD/糖尿病治療薬使用,特別食遵守率で調整)。
全体:[SBP変化(mmHg)]-0.82(-1.32,-0.49)**,[DBP変化(mmHg)]-0.49(-0.91,-0.28)*
欧米人(2696人):-0.89(-1.61,-0.66)**,-0.58(-1.07,-0.28)*
アジア人(1984人):−0.73(−1.43,−0.38)*,−0.29(−1.07,0.49)
*P<0.05,**P<0.01
◇ 改変uPDIと血圧との関連
改変uPDIスコア6 点(1SD)増加ごとの血圧の変化†(95%CI)は以下のとおり。改変uPDIスコアが高いほど,SBPが高いという有意な関連がみられ,欧米人においては,DBPが高いという有意な関連がみられた。この関連は,精製穀物,加糖飲料,または肉類で調整すると弱まった。
全体:[SBP変化(mmHg)]0.77(0.30,1.20)**,[DBP変化(mmHg)]0.24(-0.13,0.61)
欧米人:1.00(0.35,1.66)**,0.48(0.14,0.93)*
アジア人:0.81(0.42,1.18)*,0.27(-0.92,0.39)
◇ 結論
野菜や果物,全粒穀物などの植物性食品を多く摂取し,加工食品や動物性食品の摂取を減らすことは,心血管疾患(CVD)リスクの低下と関連している。このような食事の総合的な指標として,植物性食品の指標(plant-based diet index : PDI),さらにPDIを,健康的な植物性食品の指標(healthy PDI: hPDI)と不健康な植物性食品の指標(unhealthy PDI: uPDI)にわけた3つが提案されており,hPDIは冠動脈疾患と負に関連し,uPDIは正に関連することが報告されている。しかし,PDIと血圧との関連を,異なる母集団で同時に検討した研究はこれまでなかった。そこで,食事パターンの異なる4ヵ国の母集団において,各国の食事ガイドラインに合わせて改変した各PDIと血圧との関連を断面的に評価した。その結果,改変hPDIは血圧低値と関連し,改変uPDIは血圧高値と関連していた。この結果は,野菜や全粒穀物を中心とした植物性食品の摂取量を増やし,精製穀物や加糖飲料,肉類の摂取量を減らすことは,血圧によい影響をおよぼす可能性を示唆している。また,植物性食品の栄養の質が,動物性食品の摂取量を減らすことと同様に重要であることが示された。