[1999年文献] 1980年代後半~1990年代前半にかけて,日本人の血圧,およびナトリウム/カリウム比は低下傾向
尿中の電解質と血圧との関係は変化することがわかった。また,日本人の尿中ナトリウム排泄量は,今回(1993年)の調査結果においてもまだ高めであるといえる。塩分摂取をさらに減らし,カリウム摂取を適度に増やすことによる高血圧の予防が必要である。
Nakagawa H, et al. Trends in blood pressure and urinary sodium and potassium excretion in Japan: reinvestigation in the 8th year after the Intersalt Study. J Hum Hypertens. 1999; 13: 735-41.
- コホート
- 1985年のINTERSALT研究に参加した日本の3地域で,当時と同様の手法を用いて8年後の1993年に調査を行った(INTERSALT-2研究)。
1993年にあらためて登録した大阪府吹田市の生命保険会社の社員とその配偶者200例,富山県のジッパー・アルミ建築資材工場に勤める200例,および栃木県の農村住民200例のうち,高血圧や24時間蓄尿などのデータに不備があった97例を除いた20~59歳の503例(男性は246例,女性は257例)。
大阪は193例,栃木は110例,富山は200例。 - 結 果
- 1993年のINTERSALT-2の調査結果を,1985年のINTERSALTの結果と比較した。
この間で,血圧に有意な変化があった地域・年齢層・性別は以下のとおり(P<0.05)。
・収縮期血圧(SBP): 大阪(20~39歳の男女),富山(20~39歳の女性)で有意に低下
・拡張期血圧(DBP): 大阪(20~39歳の女性)で有意に低下
また,この間で,尿中電解質に有意な変化があった地域・年齢層・性別は以下のとおり,
・尿中ナトリウム排泄: 富山(20~39歳の女性)で有意に低下(P<0.05)。
・尿中カリウム排泄: 大阪(20~39歳の男性)で有意に上昇(P<0.05)。
・ナトリウム/カリウム比: 大阪(20~39歳の男性および40~59歳の女性),富山(20~39歳の男性,20~39歳の女性,40~59歳の女性),栃木(40~59歳の女性)で有意に低下(P<0.05,大阪の男性および栃木のみP<0.01)。
このように,ナトリウム排泄の低下が見られたのは富山のみで,大阪と栃木では1985年調査時とあまり変化がなかった。
カリウム排泄についても上昇が見られたのは大阪のみで,栃木と富山では1985年調査時とあまり変化がなかった。
ナトリウム/カリウム比は,ほぼすべての地域で低下傾向。
血圧と各尿中電解質との関連を調べた結果は以下のとおり。
・血圧とナトリウム: 大阪では1985年調査時に有意な負の相関が見られたが,今回の調査では消失。また,富山では1985年調査時に正の相関傾向が見られたが,今回の調査では逆に有意な負の相関が見られた。
・血圧とナトリウム/カリウム比: 富山では1985年調査時に正の相関傾向がみられたが,今回の調査では有意な負の相関が見られた。
・血圧とカリウム: いずれの地域においても負の相関を示し,今回の調査でも負の相関が見られた。
以上のように,尿中の電解質と血圧との関係は変化することがわかった。
また,日本人の尿中ナトリウム排泄量は,今回(1993年)の調査結果においてもまだ高めであるといえる。塩分摂取をさらに減らし,カリウム摂取を適度に増やすことによる高血圧の予防が必要である。