[2004年文献] 男性のBMIは末期腎疾患の有意な危険因子
男性では,BMIがESRDの発症リスクと有意に相関していることが明らかになった。この相関は,血圧および蛋白尿とは独立していた。このことから,ESRDの増加を食い止めるためには,少なくとも男性において肥満の予防および治療が必要だと考えられる。
Iseki K, et al. Body mass index and the risk of development of end-stage renal disease in a screened cohort. Kidney Int. 2004; 65: 1870-6.
- コホート
- 1983年に沖縄県総合保健協会(Okinawa General Health Maintenance Association,OGHMA) による健診を受診した20歳以上の沖縄県住民100753人(男性47504人,女性53249人。1983年当時沖縄県に在住していた成人の約13.0 %)。
このうちOKIDSにも登録された透析患者(1983~2000年のあいだに新たに透析を開始し,1か月以上生存)についてOGHMAの健診データとOKIDSのデータの照合を行うことにより,1983年の健診受診者のうち2000年までに末期腎疾患を発症した人を把握した。
1983年にすでに透析を行っていた人は除外。
BMIの四分位数により,全体を以下の4つのカテゴリーに分けて検討を行った。
21.0 kg/m2未満,21.0~23.1 kg/m2,23.2~25.4 kg/m2,25.5 kg/m2以上 - 結 果
- BMIの平均は23.4 kg/m2で,男女ともに正規分布を示した。
51歳以上の年齢層では,女性のほうが男性よりも高いBMIを示した。
BMIと有意な正の相関を示したのは,年齢,収縮期血圧,拡張期血圧,蛋白尿の割合(いずれもP<0.0001)。
末期腎疾患(ESRD)を発症したのは404人(男性232人,女性172人)。
ESRD患者のBMIの平均は24.4 kg/m2で,透析開始時のBMIの平均(22.3 kg/m2)よりも有意に大きかった(P<0.0001)。
BMI(kg/m2)のカテゴリーごとの17年間のESRD累積発症率(1000人あたり),およびベースラインから透析開始までの期間の平均は以下のとおり。
21.0未満: 2.48
21.0~23.1: 3.79
23.2~25.4: 3.86
25.5以上: 5.81
多変量ロジスティック解析によると,各因子のESRD発症のオッズ比は以下のとおり(95 %信頼区間)。
性別(男性): 1.510(1.225-1.861,P=0.0001)
収縮期血圧(1 mmHg上昇): 1.018(1.013-1.023,P<0.0001)
BMI(四分位カテゴリーが1つ上昇): 1.111(1.012-1.220,P=0.0274)
蛋白尿: 2.835(2.637-3.048,P<0.0001)
ただし男女別に解析を行うと,男性ではBMIの四分位はESRDの有意な予測因子であったが,女性では有意な相関はみとめられなかった。
また,BMIを連続変数として解析をおこなうと,男性では調整オッズ比1.063(95 %信頼区間1.023-1.104)と有意な相関を示したものの,女性では有意な相関はみとめられなかった。
BMI(kg/m2)のカテゴリーごとのESRD発症のオッズ比(年齢,収縮期血圧,蛋白尿で調整)は以下のとおり。
男性
21.0未満: 1
21.0~23.1: 1.788(95 %信頼区間1.123-2.846,P=0.0142)
23.2~25.4: 1.950(1.230-3.090,P=0.0045)
25.5以上: 2.389(1.529-3.735,P=0.0001)
女性
21.0未満: 1
21.0~23.1: 1.249(0.780-1.996,有意差なし)
23.2~25.4: 0.879(0.535-1.445,有意差なし)
25.5以上: 0.955(0.604-1.510,有意差なし)
蛋白尿をもつ人についてみると,男女ともBMIはESRDの有意な予測因子とはならなかった。
一方,蛋白量をもたない人についてみると,男性ではBMIがESRDの有意な予測因子であった(1.516,95 %信頼区間1.270-1.809)が,女性では有意な相関はみとめられなかった。
以上のように,男性では,BMIがESRDの発症リスクと有意に相関していることが明らかになった。この相関は,血圧および蛋白尿とは独立していた。このことから,ESRDの増加を食い止めるためには,少なくとも男性において肥満の予防および治療が必要だと考えられる。