[2003年文献] 透析患者(特に糖尿病)のうち,透析期間が長い人では死亡リスクが高い
慢性血液透析患者(特に糖尿病患者)のうち,透析期間が長い人では死亡リスクが高いことが明らかになった。
Iseki K, et al. Effect of the duration of dialysis on survival in a cohort of chronic haemodialysis patients. Nephrol Dial Transplant. 2003; 18: 782-7.
- コホート
- OKIDSに登録され,1991年1月の時点で慢性血液透析を1か月以上受けていた1243人を1991年1月~2000年12月にかけて追跡。
男性720人,女性523人。平均年齢は52.2歳。
透析期間により,全体を1~12か月(223人),13~60か月(510人),61~120か月(313人),121か月以上(197人)の4つのカテゴリーに分けて検討を行った。 - 結 果
- 透析期間の平均は61.9か月間。
121か月以上の長期透析患者で1~12か月の短期透析患者に比べ有意に高い値を示したのは透析量および男性の割合で,有意に低い値を示したのは年齢,収縮期血圧,降圧薬服用率。
透析量(指示量,実施量とも)は,透析期間が長くなるほど有意に大きくなった。
透析期間ごとの臨床および生化学データは以下のとおり(それぞれ1~12か月,13~60か月,61~120か月,121か月以上の値,*P<0.05,**P<0.01 vs. 12か月以下)。
男性(%): 50.2,57.6,58.1,67.0**
年齢(歳): 56.4,52.7**,49.9**,47.3**
透析開始時年齢(歳): 55.9,49.8**,42.4**,34.6**
透析量(m2)/週): 12.7,18.3**,20.8**,20.6**
BMI(kg/m2): 21.5,21.9,21.6,21.1**
収縮期血圧(mmHg): 154.9,152.3,151.8,145.0**
拡張期血圧(mmHg): 79.5,80.4,82.8**,81.1
血清アルブミン(g/dL): 3.8,3.9*,3.9*,3.9*
総コレステロール(mg/dL): 167.9,170.8**,173.4**,170.9
トリグリセリド(mg/dL): 138.3,166.7**,175.3**,155.4
血中尿素窒素(mg/dL): 82.8,87.8**,86.0,84.2
血清クレアチニン(mg/dL): 11.0,13.4**,14.0**,13.9**
喫煙率(%): 17.5,22.7,24.0*,29.9**
飲酒率(%): 16.6,18.2,23.6*,27.4**
降圧薬服用率(%): 53.4,57.1,49.8,40.6**
死亡は568人。
5年生存率は71.3 %,10年生存率は52.3 %だった。
多変量比例ハザード解析によると,死亡のハザード比(性別,年齢,血清アルブミン,拡張期血圧により調整)は,透析期間が長くなるほど有意に増加した。
糖尿病患者においては死亡のハザード比が1.073(95 %信頼区間1.007-1.142,P=0.0284)と,糖尿病をもたない患者の1.029(1.004-1.054,P=0.0228)よりも高くなった。
以上のように,慢性血液透析患者(特に糖尿病患者)のうち,透析期間が長い人では死亡リスクが高いことが明らかになった。