[2007年文献] 65歳以上の男性では,月曜日・火曜日に脳卒中が多い

「脳卒中の発症率は曜日によって異なる」という仮説を検証するために,地域発症登録研究における検討を行った。その結果,65歳以上の男性では,「週はじめ」の区分(月曜日,火曜日)において全脳卒中および脳梗塞の発症率が高いことが示された。64歳以下の男性および女性では曜日による有意差はみとめられなかった。1週間の日常生活リズムのなかに脳卒中発症の引き金となる内的・外的要因があるのかどうかなどについて,長期的なデータに基づいたさらなる検討が求められる。

Turin TC, et al.; Takashima Stroke Registry. Increase of stroke incidence after weekend regardless of traditional risk factors: Takashima Stroke Registry, Japan; 1988-2003. Cerebrovasc Dis. 2007; 24: 328-37.pubmed

コホート
滋賀県高島市の住民(2000年度人口55451人)のうち,1988年1月1日~2003年12月31日(16年間)に脳卒中を発症した1773人(男性943人,女性830人)。
診断・病型判断のために, CTもしくはMRIを92.9 %に実施。

1週間の各曜日における発症率,および以下の曜日区分での発症率の比較を行った。
   週末: 土曜日,日曜日
   週はじめ: 月曜日,火曜日
   その他: 水曜日,木曜日,金曜日

また,64歳以下(439人)および65歳以上(1334人)の2つの年齢層ごとの解析を行った。
結 果
脳卒中の発症は1773人で,平均年齢は男性69.4歳,女性74.5歳。
うち脳梗塞は67.3 %(1194人,男性671人,女性523人),脳出血は21.7 %(384人,男性188人,女性196人)。
心筋梗塞既往のある発症者は33人(1.9 %)だった。

◇ 曜日ごとの脳卒中発症状況
曜日ごとの全脳卒中の発症状況は以下のとおり(それぞれ土曜日,日曜日,月曜日,火曜日,水曜日,木曜日,金曜日の発症件数)。
   男性(64歳未満): 37,48,39,39,43,47,38 (曜日変動のP=0.82)
   女性(64歳未満): 26,24,15,17,22,19,25 (P=0.53)
   男性(65歳以上): 83,83,109,117,90,92,78 (P=0.034)
   女性(65歳以上): 92,98,102,87,90,104,109 (P=0.67)
65歳以上の男性では,全脳卒中および脳梗塞の発症に有意な曜日変動性がみとめられた。発症が多いのは月曜日および火曜日だった。

◇ 曜日区分ごとの脳卒中発症率比
「週末」および「週はじめ」における全脳卒中の発症率比(incidence rate ratio,vs. 「その他」)は以下のとおり。
   全体: 週末 0.97 (95 %信頼区間0.87-1.09),週はじめ 1.04 (0.93-1.16),その他1 (対照)
   男性: 週末 0.97 (0.83-1.14),週はじめ 1.17 (1.01-1.37),その他 1
   女性: 週末 0.98 (0.83-1.15),週はじめ 0.90 (0.76-1.06),その他 1

・ 男性
全脳卒中および脳梗塞について,「週はじめ」における脳卒中発症率比の有意な上昇がみとめられた(vs. 「その他」)。一方,脳出血およびくも膜下出血では,曜日区分による有意な差はみとめられなかった。
65歳以上の男性において,全脳卒中の発症率が「週はじめ」に高いという傾向と各危険因子(高血圧,糖尿病,喫煙,飲酒)との関連を検討したところ,この傾向は各危険因子をもつ人,もたない人のいずれにおいてもみとめられた。

・ 女性
いずれの脳卒中病型についても,曜日区分による有意な差はみとめられなかった。


◇ 結論
「脳卒中の発症率は曜日によって異なる」という仮説を検証するために,地域発症登録研究における検討を行った。その結果,65歳以上の男性では,「週はじめ」の区分(月曜日,火曜日)において全脳卒中および脳梗塞の発症率が高いことが示された。64歳以下の男性および女性では曜日による有意差はみとめられなかった。1週間の日常生活リズムのなかに脳卒中発症の引き金となる内的・外的要因があるのかどうかなどについて,長期的なデータに基づいたさらなる検討が求められる。


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