[2008年文献] 脳卒中は春に多い
地域発症登録研究により,脳卒中発症率の季節的な変動について検討を行った。その結果,脳卒中は春および冬に多いことが示された。この結果は,脳梗塞および脳出血に分けてみても同様だった。春における脳卒中リスクの有意な上昇がみとめられたのは,女性,65歳以上,非糖尿病,非飲酒者,非喫煙者。
Turin TC, et al. Higher stroke incidence in the spring season regardless of conventional risk factors: Takashima Stroke Registry, Japan, 1988-2001. Stroke. 2008; 39: 745-52.
- コホート
- 滋賀県高島市の住民(2000年度人口55451人)のうち,1988年1月1日~2001年12月31日(14年間)に脳卒中を発症した1665人。
以下のように1年を四季に分け,脳卒中発症率を比較した。
冬(12月,1月,2月),春(3月,4月,5月),夏(6月,7月,8月),秋(9月,10月,11月) - 結 果
- ◇ 発症の状況
脳卒中発症時の平均年齢は71.6歳(男性69.4歳,女性74.2歳)。
病型別の発症数は以下のとおり。
全脳卒中: 1665人 (男性893人,女性772人)
脳梗塞: 1131人 (645人,486人)
脳出血: 352人 (171人,181人)
くも膜下出血: 157人 (62人,95人)
病型不明: 25人 (15人,10人)
◇ 季節ごとの脳卒中発症率
季節ごとの10万人・年あたりの脳卒中発症率(95 %信頼区間)は以下のとおりで,春にもっとも高く,夏にもっと低かった。
この傾向は,脳梗塞および脳出血についてもみとめられた。
全脳卒中: 冬214.8(195.1-234.4),春231.3(211.1-251.5),夏183.1(165.2-201.1),秋190.7(172.3-209.2)
脳梗塞: 冬149.3(132.9-165.6),春154.7(138.2-171.2),夏127.6(112.6-142.6),秋120.7(106.0-135.3)
脳出血: 冬42.1(33.4-50.8),春53.7(44.0-63.4),夏37.2(29.1-45.3),秋44.5(35.6-53.5)
◇ 季節ごとの脳卒中発症リスクと関連因子
春における全脳卒中発症のオッズ比は,夏よりも有意に高かった。この結果は,糖尿病,飲酒,喫煙により調整を行っても変わらなかったが,高血圧により調整を行うと有意性は消失した。
春における病型ごとのオッズ比(95 %信頼区間)は以下のとおり(vs. 夏)。
脳梗塞: 1.21 (1.03-1.43)
脳出血: 1.47 (1.09-1.97)
女性,および65歳以上のサブグループにおいても,春における全脳卒中発症のオッズ比は夏より有意に高かった。
春における女性および65歳以上の人のオッズ比(95 %信頼区間)は以下のとおり(vs. 夏)。
女性: 1.50 (1.22-1.84)
65歳以上: 1.27 (1.09-1.48)
また,対象者を高血圧,糖尿病,飲酒,喫煙の有無によるサブグループに分けて解析を行った。その結果,いずれのサブグループでも,春における脳卒中発症のオッズ比は夏よりも高い傾向を示したが,有意な差がみとめられたのは,非糖尿病,非飲酒者,および非喫煙者。
◇ 結論
地域発症登録研究により,脳卒中発症率の季節的な変動について検討を行った。その結果,脳卒中は春および冬に多いことが示された。この結果は,脳梗塞および脳出血に分けてみても同様だった。春における脳卒中リスクの有意な上昇がみとめられたのは,女性,65歳以上,非糖尿病,非飲酒者,非喫煙者。