[2008年文献] 1990~2001年にかけ,男女ともに心筋梗塞が増加
日本人では冠動脈疾患が少ないことが知られているが,最近は高齢者など一部の層で増加傾向がみとめられるとの報告もあることから,1990~2001年の12年間における急性心筋梗塞発症率を,地域発症登録研究により調査した。その結果,急性心筋梗塞は男女ともに増加していることが示された。
Rumana N, et al. Trend of increase in the incidence of acute myocardial infarction in a Japanese population: Takashima AMI Registry, 1990-2001. Am J Epidemiol. 2008; 167: 1358-64.
- コホート
- 滋賀県高島市の住民(2000年度人口55451人)のうち,1990年1月1日~2001年12月31日(12年間)に急性心筋梗塞(確診または疑い)を初発した352人(男性224人,女性128人)。
試験期間を以下のように4つに分けて比較を行った。
1990~1992年,1993~1995年,1996~1998年,1999~2001年 - 結 果
- ◇ 発症の状況
急性心筋梗塞(AMI)発症時の平均年齢は男性67.8歳,女性75.4歳。
発症時年齢が65歳以上だった人が全体の72.4 %を占めた。
◇ 発症率の推移
AMIの年齢調整発症率(10万人・年あたり)は以下のとおり。
1990~1992年: 39.9 (95 %信頼区間: 29.8-50.0)
1993~1995年: 48.6 (38.0-59.2)
1996~1998年: 49.7 (39.5-60.0)
1999~2001年: 62.6 (51.5-73.7)
年間増加率は7.8 %(95 %信頼区間4.6-11.1)で,有意な増加がみとめられた。
致死的AMI,非致死的AMI,入院を要したAMI,入院を要しなかったAMIのそれぞれについても,有意な増加がみとめられた。
・ 男性
男性におけるAMIの年齢調整発症率(10万人・年あたり)は以下のとおりで,有意に増加していることが示された(期間中における年間増加率7.6 %)。
1990~1992年: 66.5 (95 %信頼区間: 46.4-86.6)
1993~1995年: 63.0 (44.4-81.7)
1996~1998年: 77.0 (56.8-97.13)
1999~2001年: 100.7 (78.6-122.7)
・ 女性
女性におけるAMIの年齢調整発症率(10万人・年あたり)は以下のとおりで,1990~1992年から1993~1995年にかけて急激な増加がみられたものの,その後は発症率が変動し,期間中における年間増加率は8.3 %と有意であった。
1990~1992年: 18.7 (95 %信頼区間: 9.8-27.6)
1993~1995年: 36.9 (24.8-49.1)
1996~1998年: 30.2 (19.7-40.6)
1999~2001年: 35.7 (24.7-46.6)
◇ 結論
日本人では冠動脈疾患が少ないことが知られているが,最近は高齢者など一部の層で増加傾向がみとめられるとの報告もあることから,1990~2001年の12年間における急性心筋梗塞発症率を,地域発症登録研究により調査した。その結果,急性心筋梗塞は男女ともに増加していることが示された。