[2014年文献] 1989~2005年の脳卒中発症例および急性心筋梗塞発症例の急性期(28日以内)死亡率に大きな変化はみられず
日本人一般住民を対象とした循環器疾患発症登録研究のデータを用いて,1989~2005年の17年間における脳卒中発症例および急性心筋梗塞(AMI)発症例の急性期(28日以内)死亡率の推移を検討した。その結果,脳卒中とAMIのいずれにおいても,一貫した増加や減少の傾向はみとめられなかった。
Rumana N, et al. Acute case-fatality rates of stroke and acute myocardial infarction in a Japanese population: Takashima stroke and AMI registry, 1989-2005. Int J Stroke. 2014;
- コホート
- 滋賀県高島市(旧・高島郡)の住民のうち,1989年1月1日~2005年12月31日(17年間)にみられた脳卒中初発例2239人ならびに急性心筋梗塞初発例433人。
- 結 果
- ◇ 発症および死亡の状況
(1)脳卒中
1989~2005年に確認された脳卒中(初発)は2239人。
内訳は脳梗塞1538人(68.7%),脳内出血476人(21.3%),くも膜下出血193人(8.6%),病型不明32人(1.4%)であった。
発症後28日以内の急性期に死亡したのは341人。
17年間の急性期死亡率(年齢調整)は,男性14.9%(95%信頼区間12.7-17.04%),女性15.7%(13.3-18.1%)であった。
(2)急性心筋梗塞(AMI)
1989~2005年に確認されたAMI(初発)は433人であった。
発症後28日以内の急性期に死亡したのは163人。
17年間の急性期死亡率(年齢調整)は,男性34.3%(95%信頼区間27.5-41.1%),女性43.3%(32.8-53.9%)であった。
◇ 脳卒中の急性期死亡率の推移
観察期間を4つに区分し,脳卒中の急性期死亡率(年齢調整)を比較した結果は以下のとおりで(それぞれ1989~1992年,1993~1996年,1997~2000年,2001~2005年の値),一貫した傾向はみとめられず,男女別にみても同様の結果であった。
男性+女性: 15.6%(12.0-19.2),14.5%(11.4-17.5),17.2%(13.8-20.5),13.7%(10.7-16.7)
男性: 15.2%(10.8-19.7),13.3%(9.2-17.4),16.0%(11.4-20.5),13.8%(9.6-18.0)
女性: 15.6%(9.7-21.5),15.6%(11.0-20.3),18.4%(13.4-23.4),13.1%(9.0-17.3)
脳卒中病型別にみた急性期死亡率(年齢調整)の推移は以下のとおりで(それぞれ1989~1992年,1993~1996年,1997~2000年,2001~2005年の値),くも膜下出血でもっとも高く,脳梗塞でもっとも低かった。
脳梗塞: 9.5%(6.0-12.9),8.3%(5.5-11.1),8.4%(5.6-11.3),7.1%(4.6-9.6)
脳内出血: 22.5%(13.0-32.0),23.9%(14.5-33.3),19.9%(12.0-27.8),18.1%(10.9-25.3)
くも膜下出血: 44.1%(15.0-73.2),43.0%(25.6-60.4),55.4%(35.1-75.7),46.9%(26.6-67.2)
また,年齢による層別解析を行うと,65歳未満にくらべ,65歳以上において急性期死亡率が高くなっていた。
◇ AMIの急性期死亡率の推移
観察期間を4つに区分し,AMIの急性期死亡率(年齢調整)を比較した結果は以下のとおりで(それぞれ1989~1992年,1993~1996年,1997~2000年,2001~2005年の値),一貫した傾向はみとめられず,男女別にみても同様の結果であった。
男性+女性: 39.0%(23.4-54.7),23.8%(14.0-33.6),47.4%(35.4-59.4),37.5%(27.2-47.7)
男性: 30.9%(15.7-46.2),23.0%(9.9-36.1),45.9%(31.2-60.6),30.5%(19.1-41.9)
女性: 60.4%(20.0-100.8),25.8%(10.2-41.5),48.5%(27.4-69.5),48.3%(27.8-68.7)
◇ 結論
日本人一般住民を対象とした循環器疾患発症登録研究のデータを用いて,1989~2005年の17年間における脳卒中発症例および急性心筋梗塞(AMI)発症例の急性期(28日以内)死亡率の推移を検討した。その結果,脳卒中とAMIのいずれにおいても,一貫した増加や減少の傾向はみとめられなかった。