[2001年文献] 急性心筋梗塞の発症が多いのは午前中と夜
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者の登録研究により,AMI発症時間の日内パターンを検討した結果,朝(8~12時),および夜(20~24時)の2つのピークがみとめられた。朝の発症者には女性および65歳以上の人が多く,夜の発症者には男性,65歳未満の人,飲酒者,喫煙者,および就業者が有意に多かった。飲酒・喫煙する若い勤務者男性では,この研究では検討していない社会経済的因子(残業など)がモーニングサージよりも強く発症に関与し,夜にピークがあらわれている可能性がある。
Kinjo K, et al.; Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Group. Circadian variation of the onset of acute myocardial infarction in the Osaka area, 1998-1999: characterization of morning and nighttime peaks. Jpn Circ J. 2001; 65: 617-20.
- コホート
- 1998年4月~2000年1月の期間に,阪神地区の25の心臓救急病院に発症1週間以内に受診し,以下の3つの基準のうち2つ以上を満たした急性心筋梗塞患者1,609人のうち,発症時刻の明確な記録のない人を除いた1,252人。
(1) 胸中央部の痛み,絞扼感,圧迫感が30分以上続く
(2) 心電図の特徴的変化: 2つ以上の胸部誘導または1つ以上の標準誘導における0.1 mV以上のST上昇
(3) 血清クレアチンキナーゼの上昇(正常値の2倍以上) - 結 果
- ◇ 対象背景
男性76.4 %,65 歳以上50.1 %,肥満(BMI≧25 kg/m2)28.7 %,糖尿病30.8 %,高血圧46.6 %,高脂血症33.6 %,登録時点での喫煙率63.4 %,登録以前の心筋梗塞既往13.7 %,梗塞前狭心症36.3 %,習慣的な飲酒50.1 %,就業率50.2 %。
◇ 急性心筋梗塞(AMI)の日内発症パターン
AMI発症時間の日内パターン(1時間ごとの発症数)は,2つのピークを示した(8時,23時)。
4時間ごとに6つの時間帯に分けたときの発症数は以下のとおりで,8~12時,20~24時の2つの時間帯における有意な発症数増加ピークがみとめられた(*片側二項検定によるP<0.01)。
0~4時: 168人
4~8時: 183人
8~12時: 275人*
12~16時: 212人
16~20時: 174人
20~24時: 240人*
◇ 発症時間ごとの臨床背景
6つの時間帯の発症者背景で有意な差がみとめられたのは,男性の割合,65歳以上の割合,登録時点での喫煙率,習慣的な飲酒,就業率(P<0.05)。
朝のピーク(8~12時)の時間帯に発症した患者では,女性,および65歳以上の人が有意に高かった(片側二項検定によるP<0.05)。
一方,夜のピーク(20~24時)の時間帯に発症した患者では,男性,65歳未満の人,習慣的に飲酒する人が有意に多く,登録時点での喫煙率,就業率も有意に高かった(片側二項検定によるP<0.05)。
◇ 結論
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者の登録研究により,AMI発症時間の日内パターンを検討した結果,朝(8~12時),および夜(20~24時)の2つのピークがみとめられた。朝の発症者には女性および65歳以上の人が多く,夜の発症者には男性,65歳未満の人,飲酒者,喫煙者,および就業者が有意に多かった。飲酒・喫煙する若い勤務者男性では,この研究では検討していない社会経済的因子(残業など)がモーニングサージよりも強く発症に関与し,夜にピークがあらわれている可能性がある。