[2003年文献] 急性心筋梗塞発症後のCRP高値は,全死亡および心血管疾患死亡リスクと関連
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者を前向きに登録した観察研究により,発症後に得られたCRPと長期的な予後との関連について検討した。その結果,発症後のCRP高値はAMI患者の全死亡リスク,および心血管疾患死亡リスクと有意に関連していた。CRPと梗塞サイズとの関連はみとめられなかった。
Kinjo K, et al.; Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Group. Impact of high-sensitivity C-reactive protein on predicting long-term mortality of acute myocardial infarction. Am J Cardiol. 2003; 91: 931-5.
- コホート
- 1999年4月~2001年6月の期間に阪神地区の25の心臓救急病院に発症1週間以内に受診し,以下の3つの基準のうち2つ以上を満たした急性心筋梗塞患者1,309人のうち,連絡の取れなくなった2人を除いた1,307人を平均522日間追跡(追跡率99.8 %)。
(1) 胸中央部の痛み,絞扼感,圧迫感が30分以上続く
(2) 心電図の特徴的変化: 2つ以上の胸部誘導または1つ以上の標準誘導における0.1 mV以上のST上昇,2誘導以上における0.1 mV以上のST下降,異常Q波,または2誘導以上におけるT波陰転
(3) 血清クレアチンキナーゼの上昇(正常値の2倍以上)
平均年齢63.4歳,男性78 %,再灌流療法90 %,血栓溶解療法9.6 %,経皮的冠動脈インターベンション86.8 %,緊急冠動脈バイパス手術2.1 %。
CRP値は,発症後の安定期(平均25日後)に採取した血液検体を用いて測定し,以下のとおり対象者を四分位に分けて解析を行った。
0.06 mg/dL未満,0.06~0.13 mg/dL,0.14~0.37 mg/dL,0.38 mg/dL以上
もっとも値が高い四分位(0.38 mg/dL以上)を「CRP高値群」,それ以外(0.38 mg/dL未満)の人を「CRP低値群」とした。 - 結 果
- ◇ 対象背景
CRP高値群(327人)において,CRP低値群(980人)と有意な差がみとめられたのは以下の項目。
年齢: CRP高値群66.3歳,CRP低値群62.5歳 (P<0.001)
糖尿病: 37.8 %,29.8 % (P=0.009)
Killip分類* (P<0.001)
クラスI: 81.3 %,90.2 %
クラスII: 11.7 %,6.9 %
クラスIII: 3.8 %,1.6 %
クラスIV: 3.2 %,2.1 %
血行再建術: 86.5 %,91.4 % (P=0.010)
経皮的冠動脈インターベンション(PCI): 82.7 %,89.6 % (P=0.001)
ステント挿入: 62.6 %,55.2 % (P=0.040)
冠動脈バイパス手術: 5.0 %,1.3 % (P<0.001)
* Killip分類とは,身体所見から心機能を評価する分類。クラスが上がるほど重症。
CRPと有意な関連を示していたのは,年齢,およびPCI不施行。梗塞サイズはCRPとの関連を示さなかった。
◇ CRP値と予後
CRP高値群では,CRP低値群にくらべて追跡期間中の累積死亡率が有意に高かった(8.9 % vs. 2.0 %,P<0.001)。
死因別の検討において,CRP高値群でCRP低値群より有意に高い死亡率を示したのは心血管疾患死亡(6.4 % vs. 0.8 %,P<0.001),ポンプ失調(4.0 % vs.0.2 %,P<0.001),梗塞再発(1.8 % vs. 0 %,P<0.001)。
CRP高値群における全死亡のハザード比(多変量調整)は4.94 (95 %信頼区間1.13-21.6,P=0.034),心血管疾患死亡では9.58 (1.17-78.4,P=0.035)。
PCI施行例について解析を行うと,CRP高値群における全死亡のハザードは4.34 (95 %信頼区間1.06-1.78),心血管疾患死亡では8.24 (1.09-62.5)。
◇ 結論
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者を前向きに登録した観察研究により,発症後に得られたCRPと長期的な予後との関連について検討した。その結果,発症後のCRP高値はAMI患者の全死亡リスク,および心血管疾患死亡リスクと有意に関連していた。CRPと梗塞サイズとの関連はみとめられなかった。