[2003年文献] PCI施行急性心筋梗塞患者で,心房細動は1年後の死亡の予測因子
経皮的冠動脈インターベンションを施行した急性心筋梗塞(AMI)患者における心房細動(AF)の影響を検討したはじめての研究。AFの頻度は12 %であること,また,AFは入院中の死亡とは関連しないが,1年後の死亡の有意な予測因子となることが示された。
Kinjo K, et al.; Osaka Acute Coronary Insufficiency Study (OACIS) Group. Prognostic significance of atrial fibrillation/atrial flutter in patients with acute myocardial infarction treated with percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol. 2003; 92: 1150-4.
- コホート
- 1998年4月~2002年3月の期間に,阪神地区の25の心臓救急病院に発症1週間以内に受診した急性心筋梗塞(AMI)患者のうち,発症24時間以内に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた2,487人を1年間追跡。追跡不能となった12人を除いた2,475人を解析対象とした。
登録時に心房細動(AF: atrial fibrillation)または心房粗動がみとめられた人,および入院期間中にAFまたは心房粗動を発症した人は,いずれもAF群としたが,両者はそれぞれ「登録時AF」「入院中AF」として区別した。 - 結 果
- ◇ 対象背景
心房細動(AF: atrial fibrillation)または心房粗動がみとめられた人(AF群)は297人(12.0 %)。
うち,107人(4.3 %)が登録時AF,190人(7.7 %)が入院中AFだった。
AF群では,非AF群にくらべて年齢が高く,Killip分類*が高く,登録前の心筋梗塞既往,登録前の脳血管疾患既往が多く,収縮期血圧<100 mmHgの割合,心拍数が1分100以上の割合が有意に高く,喫煙率が有意に低かった。
* Killip分類とは,身体所見から心機能を評価する分類。クラスが上がるほど重症。
AF発症と有意な関連を示したのは,年齢,性別(男性),1分100以上の心拍数,Killip分類クラスIVで,このうちもっとも関連が強いのが年齢だった。
◇ AFと入院期間中のイベント
AF群において,非AF群にくらべて有意に高い発症率を示した入院中イベントは以下のとおり。
心原性ショック: 15.7 %,6.1 % (P<0.001)
うっ血性心不全: 34.8 %,16.6 % (P<0.001)
心臓破裂: 3.0 %,1.4 % (P=0.042)
心室性頻拍,心室細動: 27.3 %,14.7 % (P<0.001)
脳卒中: 2.3 %,0.6 % (P=0.002)
◇ AFと死亡リスク
・ 入院中の死亡
AF群では,入院中の死亡率(16.0 %)が非AF群(6.7 %)よりも有意に高かった(P<0.001)。
しかし,多変量調整ハザード比を算出すると,AFは入院中の死亡の有意な予測因子とはならなかった(1.42,95 %信頼区間0.88-2.31,P=0.153)。この結果は,登録時AFと入院中AFで層別化した検討でも同様だった。
・ 1年後の死亡
AF群の1年後の累積死亡率(18.9 %)は,非AF群(7.9 %)よりも有意に高かった(P<0.001)。
AF群で,非AF群にくらべて有意に高い死亡率を示した死因は以下のとおり。
全心血管疾患: AF群17.2 %,非AF群7.3 % (P<0.001)
ポンプ失調: 13.1 %,4.7 % (P<0.001)
癌: 0.7 %,0.1 % (P=0.019)
AF群における全死亡の多変量調整ハザード比は1.64(95 %信頼区間1.05-2.55,P=0.030 vs. 非AF群)。
この結果は,生存退院した人について検討しても同様だった(AF群の全死亡の多変量調整ハザード比3.05,1.22-7.62,P=0.017 vs. 非AF群)。
登録時AFと入院中AFで層別化した検討を行った結果,入院中AFは1年後の死亡リスクと有意な関連を示した(ハザード比3.04,95 %信頼区間1.24-7.48)が,登録時AFでは関連はみられなかった(1.87,0.45-7.57)。
◇ 結論
経皮的冠動脈インターベンションを施行した急性心筋梗塞(AMI)患者における心房細動(AF)の影響を検討したはじめての研究。AFの頻度は12 %であること,また,AFは入院中の死亡とは関連しないが,1年後の死亡の有意な予測因子となることが示された。