[2014年文献] 急性心筋梗塞発症数の日内変動パターンは生活習慣因子と関連する
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者の登録研究により,AMI発症数の日内変動パターンを検討した結果,朝の急峻で高いピークと夜の緩やかで低いピークの2つがみとめられ,AMI発症数の日内変動パターンは曜日により異なった。またAMI発症数の日内変動パターンとのあいだに有意な関連がみとめられた生活習慣因子は,血清トリグリセリド(TG)値・喫煙・年齢・飲酒・入院時の血糖値・性別・就労状況であり,そのなかでもっとも強い影響がみとめられたのは血清TG値であった。TG≧150 mg/dLの人では,AMI発症のピークが朝に2つみられたことから,生活習慣因子はAMI発症数の日内変動パターンに影響をおよぼす可能性が示唆された。
Edahiro R, et al.; OACIS Investigators. Association of lifestyle-related factors with circadian onset patterns of acute myocardial infarction: a prospective observational study in Japan. BMJ Open. 2014; 4: e005067.
- コホート
- 1998~2008年の期間にOACISに登録された急性心筋梗塞(AMI)の入院患者連続8603人のうち,発症時刻の正確な記録がある7755人を解析対象とした。追跡期間(中央値)は365日。
AMI発症数の日内変動パターン(ピークなし/第1ピーク/第2ピーク)については,2フォン・ミーゼス分布(two von Mises distributions)および尤度比検定を用いて検討を行った。また,階層尤度比検定により,AMI発症数の日内変動パターンに関連する因子を特定した。 - 結 果
- ◇ 対象背景
年齢: 66歳(中央値),男性の割合: 75.7%,就業率: 48.2%,BMI: 23.4 kg/m2(中央値),喫煙習慣: 63.9%,飲酒習慣: 45.3%,糖尿病の割合: 33.4%,高血圧の割合: 58.9%,脂質異常症の割合: 44.1%,心筋梗塞既往: 13.0%,狭心症の割合: 23.4%,多枝病変: 38.4%,側副血行: 35.7%,発症後24時間未満の入院: 89.1%,Killip分類≧II: 18.0%,initial TIMI≦II: 68.4%,ST上昇型心筋梗塞の割合: 86.0%
・心筋梗塞の発症部位
左前下行枝: 41.7%,右冠動脈: 33.4%,左回旋枝: 13.6%,左冠動脈主幹: 2.2%
◇ 急性心筋梗塞(AMI)発症数の日内変動パターン
AMI発症数の日内変動パターンは2つのピークを示し,第1ピークは朝の急峻で高いピーク(9:01,95%信頼区間8:53-9:08),第2ピークは夜の緩やかで低いピークであった(20:11,19:48-20:34)。
曜日ごとの,AMI発症数の日内変動パターンの2つのピークの時刻は以下のとおり(それぞれ第1ピーク,第2ピーク)。第1ピークがもっとも早いのは月曜日,もっとも遅いのは日曜日であった。土曜日の第2ピークは,第1ピークと比べて,急峻で高かった。
月曜日(発症者: 1133人): 8:24(8:04-8:44),19:40(18:35-20:46),bimodalのP<0.001(火~日曜日も同様)
火曜日(1129人): 9:28(9:06-9:51),21:13(20:40-21:46)
水曜日(1096人): 8:55(8:34-9:15),21:01(20:28-21:34)
木曜日(1086人): 8:43(8:15-9:10),19:09(18:23-19:55)
金曜日(1165人): 9:02(8:45-9:19),19:55(18:53-20:56)
土曜日(1085人): 8:53(8:20-9:27),20:41(20:16-21:07)
日曜日(1061人): 9:44(9:22-10:06),18:56(17:24-20:29)
◇ AMI発症数の日内変動パターンに影響をおよぼす因子の同定
AMI発症数の日内変動パターンと有意な関連がみとめられた因子は以下のとおり。もっとも強い関連を示したのは入院時の血清トリグリセリド(TG)値であった。
血清TG値(≧150 mg/dL vs. <150 mg/dL),階層尤度比検定P<0.001
喫煙習慣の有無(喫煙 vs. 非喫煙),P<0.001
年齢(<65歳 vs. ≧65歳),P<0.001
飲酒習慣の有無(飲酒 vs. 非飲酒),P<0.001
入院時の血糖値(≧140 mg/dL vs. <140 mg/dL),P=0.007
性別(男性 vs. 女性),P=0.010
就労状況(就労 vs. 非就労),P=0.048
TG≧150 mg/dL(1473人)の患者のみを対象とした解析では,AMI発症数の2つのピークはいずれも朝にみとめられた(8:47[8:36-8:58],8:18[2:18-14:18])。
◇ 結論
阪神地区における急性心筋梗塞(AMI)患者の登録研究により,AMI発症数の日内変動パターンを検討した結果,朝の急峻で高いピークと夜の緩やかで低いピークの2つがみとめられ,AMI発症数の日内変動パターンは曜日により異なった。またAMI発症数の日内変動パターンとのあいだに有意な関連がみとめられた生活習慣因子は,血清トリグリセリド(TG)値・喫煙・年齢・飲酒・入院時の血糖値・性別・就労状況であり,そのなかでもっとも強い影響がみとめられたのは血清TG値であった。TG≧150 mg/dLの人では,AMI発症のピークが朝に2つみられたことから,生活習慣因子はAMI発症数の日内変動パターンに影響をおよぼす可能性が示唆された。