[2017年文献] 糖尿病有病者の心血管疾患死亡リスクは,若年者でも高齢者でも高い

糖尿病と心血管疾患リスクとの関連が年齢層によって異なるかどうかについて,国内の8コホート研究のメタ解析による検討を行った。10.3年間の追跡の結果,糖尿病は性を問わず全死亡および心血管疾患死亡のリスクと有意に関連していた。疾患別にみると,糖尿病有病者の冠動脈疾患死亡リスクは約2倍,脳卒中死亡リスクは約1.4倍であった。年齢層別にみると,糖尿病有病者における心血管疾患死亡の相対リスクに大きな差はみられなかったが,絶対リスク差は高齢になるほど大きくなっていた。以上の結果より,心血管疾患による死亡のリスクを低下させるためには,高齢者を含めて糖尿病のコントロールが重要であることが示唆される。

Hirakawa Y, et al.; Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan Research Group (EPOCH-JAPAN). Age-specific impact of diabetes mellitus on the risk of cardiovascular mortality: An overview from the evidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in the Japan Research Group (EPOCH-JAPAN). J Epidemiol. 2017; 27: 123-129.pubmed

コホート
EPOCH-JAPANの13コホート中,死因別死亡のデータ,および糖尿病既往歴のデータを有する8コホートの40~90歳の53629人のうち,ベースライン健診のデータに不備がある,または心血管疾患既往のある人を除いた38854人。
平均年齢は58歳,男性の割合は43.9%。
各コホートのベースライン健診が実施されたのは1977~1994年で,平均追跡期間は10.3年間。

糖尿病の診断基準は,空腹時血糖≧126 mg/dL,非空腹時血糖≧200 mg/dL,または糖尿病治療中とした。
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時の糖尿病非有病者(36987人)と有病者(1867人)のあいだに有意な差がみとめられた項目は以下のとおり。
  年齢: 非有病者58歳,有病者63歳(P<0.001)
  男性の割合: 43.4%,53.3%(P<0.001)
  収縮期血圧: 132 mmHg,136 mmHg(P<0.001)
  総コレステロール: 201 mg/dL,205 mg/dL(P<0.001)
  BMI: 23.3 kg/m2,23.5 kg/m2(P=0.005)
  喫煙率: 27.3%,30.4%(P=0.03)

◇ 糖尿病と心血管疾患死亡リスク
糖尿病有病者における全死因,心血管疾患および各病型による死亡の多変量調整ハザード比(vs. 非有病者)は以下のとおりで,糖尿病有病者の全死亡リスク,心血管疾患死亡リスク,脳卒中死亡リスクおよび冠動脈疾患死亡リスクは,いずれも非有病者より有意に高かった。
年齢,性,収縮期血圧,BMI,総コレステロール,喫煙,飲酒で調整)

・男性+女性
  全死亡: 1.39(95%信頼区間1.25-1.55),P<0.001
   心血管疾患死亡: 1.62(1.35-1.94),P<0.001
    脳卒中死亡: 1.40(1.05-1.85),P=0.02
    冠動脈疾患死亡: 2.13(1.47-3.09),P<0.001

・男性
  全死亡: 1.32(1.15-1.52),P<0.001
   心血管疾患死亡: 1.41(1.10-1.82),P=0.008
    脳卒中死亡: 1.33(0.92-1.94),P=0.13
    冠動脈疾患死亡: 1.42(0.81-2.48),P=0.22

・女性
  全死亡: 1.53(1.30-1.80),P<0.001
   心血管疾患死亡: 1.96(1.51-2.55),P<0.001
    脳卒中死亡: 1.48(0.97-2.28),P=0.07
    冠動脈疾患死亡: 3.45(2.08-5.70),P<0.001

◇ 年齢層ごとにみた糖尿病と心血管疾患死亡リスク
年齢層ごとにみた,糖尿病有病者の心血管疾患死亡の性調整ハザード比(HR)および絶対リスク差(absolute risk difference: ARD,1000人・年あたり)は以下のとおり。
糖尿病による相対リスクは若年者でも高齢者でも同様であったが(P for heterogeneity=0.18),絶対リスク差は,高齢になるほど顕著に大きくなっていた。

  40~49歳: ARD 0.5,HR 1.70(95%信頼区間0.53-5.43)
  50~59歳: ARD 1.7,HR 2.02(1.23-3.31)
  60~69歳: ARD 4.2,HR 2.06(1.53-2.76)
  70~79歳: ARD 4.8,HR 1.38(1.04-1.82)
  80~90歳: ARD 19.4,HR 1.72(1.08-2.73)


◇ 結論
糖尿病と心血管疾患リスクとの関連が年齢層によって異なるかどうかについて,国内の8コホート研究のメタ解析による検討を行った。10.3年間の追跡の結果,糖尿病は性を問わず全死亡および心血管疾患死亡のリスクと有意に関連していた。疾患別にみると,糖尿病有病者の冠動脈疾患死亡リスクは約2倍,脳卒中死亡リスクは約1.4倍であった。年齢層別にみると,糖尿病有病者における心血管疾患死亡の相対リスクに大きな差はみられなかったが,絶対リスク差は高齢になるほど大きくなっていた。以上の結果より,心血管疾患による死亡のリスクを低下させるためには,高齢者を含めて糖尿病のコントロールが重要であることが示唆される。


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