[2004年文献] BMIは,地域を問わず脳卒中リスク,虚血性心疾患リスクと正の関連

BMIと心血管疾患リスクとの関連を検討するために,アジア・太平洋地域の33の前向きコホート研究のメタ解析を実施した。その結果,脳卒中,虚血性心疾患のいずれについても,BMIが高くなるほど発症リスクが高くなることが示された。BMIと脳卒中および虚血性心疾患発症リスクとの関連の強さは,いずれもアジアとオーストラリア・ニュージーランドとで同等だったことから,アジア・太平洋地域において,BMIのコントロールを行うことでひろく心血管疾患を減らすことができる可能性が示された。

Ni Mhurchu C, et al.; Asia Pacific Cohort Studies Collaboration. Body mass index and cardiovascular disease in the Asia-Pacific Region: an overview of 33 cohorts involving 310 000 participants. Int J Epidemiol. 2004; 33: 751-8.pubmed

コホート
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration(APCSC: アジア・太平洋地域の前向きコホート研究の個人データに基づくメタ解析)の参加コホートのうち,33コホートの31万283人。
平均追跡期間は6.9年間(214万8354人・年)。
BMIが12 kg/m2未満または60 kg/m2超の14人は除外した。

ベースライン時の平均年齢は47歳で,女性は41%。
参加国ごとの人数の割合は,日本10%,中国15%,韓国52%,その他のアジア4%,オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)20%。

BMIについては,WHOの分類に従い,対象者を以下のようなカテゴリーに分けて解析を行った。ただし,WHOの「正常」カテゴリー(18.5~24.9 kg/m2)については,含まれる人数が多いことから2つに分割した。
   <18.5 kg/m2,18.5~21.9 kg/m2,22.0~24.9 kg/m2,25.0~29.9 kg/m2,≧30 kg/m2
結 果
BMIの平均は23.6 kg/m2
地域ごとにみると,アジアでは22.9 kg/m2,オーストラリアおよびニュージーランド(ANZ)では26.4 kg/m2だった。

◇ BMIと脳卒中発症リスク
脳卒中を発症したのは3332人。
うち40%(1334人)が虚血性脳卒中,26%(851人)が出血性脳卒中と診断された(その他の病型については記録なし)。

BMIと脳卒中発症リスクとの関連を検討した結果,いずれの病型についてもBMIが高くなるほど調整ハザード比(年齢,コホート,喫煙で調整)が増加していた。ただし出血性脳卒中では,BMIがもっとも高いカテゴリーの調整ハザード比は顕著に高いものの,虚血性脳卒中にくらべてBMIと調整ハザード比との関連が弱かった。
BMIが2 kg/m2低下した場合のリスク低下率は9%(95%信頼区間6-11%)であり,病型別にみると虚血性脳卒中12%(9-15%),出血性脳卒中8%(4-12%)であった(P for homogeneity=0.04)。
この結果は,男女とも同様であった。

収縮期血圧による調整を行うと,BMIと脳卒中発症リスクとの関連の強さは約1/3に弱められ,BMI 2 kg/m2低下にともなう脳卒中発症リスクの低下率は3%(95%信頼区間1-5%)となった。
一方,総コレステロール値およびアルコール摂取による調整を行っても結果は同様であった。

・年齢層ごとの検討
年齢層(60歳未満,60~69歳,70歳以上)ごとに検討を行った結果,年齢が若いほどBMIと脳卒中発症リスクとの関連が強くなっていた。

・地域ごとの検討
地域(アジア,ANZ)ごとに検討を行った結果,アジアでは脳卒中発症時の平均年齢が63歳と,ANZ(74歳)にくらべて低かった。
年齢調整を行ったうえでBMIと脳卒中発症リスクとの関連を検討すると,BMI 2 kg/m2低下にともなう脳卒中発症リスクの低下率は,アジア9%(95%信頼区間6-12%),ANZ 8%(-3-18%)と同等であった(P for homogeneity=0.9)。

◇ BMIと虚血性心疾患(IHD)発症リスク
IHDを発症したのは2073人。
うち致死性IHDが59%,非致死性IHDが41%であったが,BMIとの関連に差はなかったことから,両者をあわせて解析を行った。

BMIとIHD発症の調整ハザード比(年齢,コホート,喫煙で調整)は強い直線的な関連を示しており,BMI 2 kg/m2低下にともなうIHD発症リスクの低下率は11%(95%信頼区間9-13%)であった。
この結果は,男女とも同様であった。

収縮期血圧による調整を行うと,BMIとIHD発症リスクとの関連の強さが約2/3に弱められ,BMI 2 kg/m2低下に伴うIHD発症リスクの低下率は8%(95%信頼区間6-10%)となった。

・年齢層ごとの検討
年齢層(60歳未満/60~69歳/70歳以上)ごとに検討を行った結果,年齢が低いほどBMIとIHD発症リスクとの関連が強くなっていた。

・地域ごとの検討
地域(アジア,ANZ)ごとに検討を行った結果,アジアではIHD発症時の平均年齢が64歳と,ANZ(72歳)にくらべて低かった。
年齢調整を行ったうえでBMIとIHD発症リスクとの関連を検討すると,BMI 2 kg/m2低下にともなうリスク低下率は,アジア14%(95%信頼区間10-19%),ANZ 10%(2-17%)と同等であった(P for homogeneity=0.3)。


◇ 結論
BMIと心血管疾患リスクとの関連を検討するために,アジア・太平洋地域の33の前向きコホート研究のメタ解析を実施した。その結果,脳卒中,虚血性心疾患のいずれについても,BMIが高くなるほど発症リスクが高くなることが示された。BMIと脳卒中および虚血性心疾患発症リスクとの関連の強さは,いずれもアジアとオーストラリア・ニュージーランドとで同等だったことから,アジア・太平洋地域において,BMIのコントロールを行うことでひろく心血管疾患を減らすことができる可能性が示された。


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