[学会報告・日本循環器管理研究協議会2009] CIRCS,久山町研究,JACC,JMSコホート研究,NIPPON DATA90,大迫研究,端野・壮瞥町研究
第45回日本循環器病予防学会・日本循環器管理研究協議会(日循協)総会は,横浜シンポジアにて2009年6月5日(金)~6日(土)の2日間にわたって行われた。
以下に,学会で発表された疫学研究の一部を紹介する。
CIRCS 大阪コホート | ― | 自覚的ストレスは,食行動と肥満との関連を増強する |
久山町研究 | ― | 喫煙は脳卒中,脳梗塞,くも膜下出血の発症リスクと有意に関連 |
JACC | ― | 脳卒中家族歴は脳卒中死亡リスクと関連 |
JMSコホート研究 | ― | 身体活動強度が高い人では脳卒中死亡リスクが低下 |
NIPPON DATA90 | ― | 境界域の危険因子の集積は循環器疾患死亡リスクと関連 |
NIPPON DATA90 | ― | メタボリックシンドロームの有無にかかわらず,喫煙者の循環器疾患死亡リスクは上昇する |
大迫研究 | ― | 1日1合以上の飲酒者は起床後の血圧が高い |
大迫研究 | ― | レプチンは家庭血圧での高血圧と関連 |
端野・壮瞥町研究 | ― | 正常高値血圧でもCKDを有していると心血管イベントリスクが上昇 |
[CIRCS 大阪コホート] 自覚的ストレスは,食行動と肥満との関連を増強する
発表者: 大阪大学・丸山 広達 氏目的: | 食行動と肥満との関連に対するストレスの影響を検討。肥満に関連する可能性のある食行動として「早食い」「満腹まで食べる」「就寝前に食べる」の3つについて調査し,ストレスの有無ごとに肥満および腹部肥満との関連を分析した。 | |
コホート: | CIRCS 大阪府八尾市コホートの1754人(男性534人,女性1220人)(断面解析)。 (CIRCSへ) | |
結果: | 自覚的ストレスがある場合,男性では「満腹まで食べる」行動と腹部肥満,女性では「就寝前に食べる」行動と肥満との関連が強いことが示された。 |
[久山町研究] 喫煙は脳卒中,脳梗塞,くも膜下出血の発症リスクと有意に関連
発表者: 九州大学・秦 淳 氏目的: | これまでに一定の見解が得られていない喫煙と脳卒中発症リスクとの関連について検討。 | |
コホート: | 久山町研究第3集団の40~79歳の2421人を14年間追跡。 (久山町研究へ) | |
結果: | 喫煙は,少量であっても虚血性心疾患および脳卒中の独立した危険因子であり,高コレステロール血症がある場合にリスクがより高くなった。病型別にみると,喫煙は脳梗塞およびくも膜下出血リスクの上昇と有意に関連していたが,脳出血との関連はみられず。 |
[JACC] 脳卒中家族歴は脳卒中死亡リスクと関連
発表者: 大阪大学・江口 依里 氏目的: | 循環器疾患家族歴と循環器疾患死暴徒の関連を検討。 | |
コホート: | JACC Studyコホートの40~79歳の82332人(男性34678人,女性47654人)を14.2年間追跡。 (JACCへ) | |
結果: | 男女とも,両親の脳卒中の既往は本人の脳卒中死亡リスクと関連しており,健診時の家族歴の聴取がリスクの予測に有用である可能性が示された。 |
[JMSコホート研究] 身体活動強度が高い人では脳卒中死亡リスクが低下
発表者: 浜松医科大学・柴田 陽介 氏目的: | 身体活動強度と脳卒中死亡との関連を検討。 | |
コホート: | JMSコホート研究の9810人を平均11.9年間追跡。 (JMSコホート研究へ) | |
結果: | Physical Activity Index(PAI)でみた身体活動強度は,男女ともに脳卒中死亡リスクの低下と関連していた。仕事の身体活動強度にくらべ,余暇の身体活動強度のほうがリスク低下との関連が強かった。 |
[NIPPON DATA90] 境界域の危険因子の集積は循環器疾患死亡リスクと関連
発表者: 滋賀医科大学・門田 文 氏目的: | 従来の健診で「要観察」とされてきた境界域の危険因子* の集積と循環器疾患死亡リスクとの関連を検討。 | |
コホート: | NIPPON DATA90の30歳以上の男女6757人を15年間追跡。 (NIPPON DATAへ) | |
結果: | 境界域危険因子の集積数と循環器疾患死亡リスクとの間に有意な関連がみとめられた。しかし,境界域危険因子をもつ群の循環器疾患死亡の人口寄与危険度割合は13.6 %であり,要治療域危険因子をもつ群(高危険因子群)のほうが67.5 %と顕著に大きかった。 |
[NIPPON DATA90] メタボリックシンドロームの有無にかかわらず,喫煙者の循環器疾患死亡リスクは上昇する
発表者: 滋賀医科大学・高嶋 直敬 氏目的: | 喫煙と循環器疾患死亡リスクとの関連について,メタボリックシンドローム(MetS)および肥満の有無で層別化して検討。 | |
コホート: | NIPPON DATA90の30歳以上の男女7329人を15年間追跡。 (NIPPON DATAへ) | |
結果: | 喫煙者における循環器疾患死亡のハザード比は,MetSの有無にかかわらず,対照(喫煙未経験かつMetSなし)の3倍以上であった。肥満が少なく喫煙率の高い日本人では,MetSの有無にかかわらず喫煙への介入が必要であることが示唆される。 |
[大迫研究] 1日1合以上の飲酒者は起床後の血圧が高い
発表者: 東北大学・中下 愛実 氏目的: | 飲酒習慣と血圧日内変動との関連を検討。 | |
コホート: | 大迫研究の55歳以上の男性194人。 (大迫研究へ) | |
結果: | 1日1合以上の飲酒者は,非飲酒者にくらべて起床2時間後の血圧が有意に高く,昼間血圧も持続的な高値を示した。これまでに報告されてきた多量飲酒と脳出血リスクとの関連に,早朝/昼間血圧の上昇が関与している可能性が示唆される。 |
[大迫研究] レプチンは家庭血圧での高血圧と関連
発表者: 東北大学・林 克剛 氏目的: | 血中のレプチン値およびアディポネクチン値と家庭血圧との関連を検討。 | |
コホート: | 大迫研究の糖尿病検診を受診した男女323人(男性101人、女性222人)。 (大迫研究へ) | |
結果: | レプチン値の上昇は家庭血圧による高血圧有病と有意な関連を示したが,随時血圧による高血圧有病との関連はみとめられなかった。アディポネクチンと,家庭血圧での高血圧および随時血圧での高血圧有病との関連はみとめられなかった。 |
[端野・壮瞥町研究] 正常高値血圧でもCKDを有していると心血管イベントリスクが上昇
発表者: 札幌医科大学・大西 浩文 氏目的: | 血圧カテゴリー,および慢性腎臓病(CKD)が心血管イベントに与える影響を検討。 | |
コホート: | 端野・壮瞥町研究の1908人を平均10.9年間追跡。 (端野・壮瞥町研究へ) | |
結果: | 対照(至適血圧・CKDなし)にくらべ,「正常高値血圧・CKDあり」,「高血圧・CKDなし」,「高血圧・CKDあり」の各群において心血管イベントリスクの有意な上昇がみとめられた。 |