[2007年文献] アメリカにおいて高血圧罹患率の有意な変化はないが,特に高齢者での血圧コントロールが有意に改善(1999~2004年)
Ong KL, Cheung BM, Man YB, Lau CP, Lam KS: Prevalence, awareness, treatment, and control of hypertension among United States adults 1999-2004. Hypertension. 2007; 49: 69-75.
- 目的
- アメリカで6500万人以上が罹患しているといわれている高血圧の罹患状況,発見,治療,コントロールの経時的傾向をみる。
- コホート
- 疾病対策予防センター(CDC)が実施している米国健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)1999~2004年。
18歳以上の14,653人:1999~2000年の調査4749人+2001~2002年5032人+2003~2004年4872人。
除外基準:質問には回答したが検査を受けていないもの;血圧,BMIのデータが紛失しているもの。
◆対象ベースライン時背景:平均年齢(1999~2000年群43.88歳,2001~2002年群44.02歳,2003~2004年44.97歳),女性(51.7%,51.5%,51.2%),非ヒスパニック・白人(70.7%,72.6%,73.2%),BMI(27.81kg/m2,27.87 kg/m2,27.99 kg/m2),血圧(122.30/72.23mmHg,121.64/71.80mmHg,122.10/70.54mmHg),糖尿病(5.8%,6.1%,7.0%)。
用語の定義
高血圧:血圧≧140/90mmHgあるいは降圧治療を受けている。
高血圧の発見:高血圧の診断を受けたもの。
高血圧の治療:降圧薬の服用。
高血圧コントロール:降圧治療・非糖尿病例で血圧が<140/90mmHgに降圧した場合。糖尿病の合併例においては,医師による診断,インスリンあるいは経口糖尿病治療薬服用例を糖尿病合併例と定義し,<130/80mmHgを高血圧コントロールとした。 - 結 果
- 年齢調整後の高血圧の罹患率は1999~2000年28.6%→2001~2002年27.9%→2003~2004年29.6%で有意な増加はみられなかった。
年齢別にみると,18~39歳:7.7%→7.0%→7.3%,40~59歳:30.2%→28.1%→32.6%,≧60歳:64.2%→65.7%→66.3%。
年齢調整後の性別では男性:28.7%→26.5%→30.7%,女性:28.3%→28.9%→28.2%。
BMI別では<25.0 kg/m2:19.2%→20.4%→20.5%,25.0~29.9 kg/m2:27.4%→26.9%→28.4%,≧30.0 kg/m2:40.6%→36.1%→39.0%。
2003~2004年:多変量ロジスティック回帰分析後の高血圧罹患のオッズ比で有意な相関がみられたのは,40~59歳6.04(95%信頼区間3.99-9,16,p<0.001 vs 18~39歳),≧60歳27.35(18.88-39.61,p<0.001 vs 18~39歳),非ヒスパニック系黒人1.61(1.30-1.99,p<0.001 vs 非ヒスパニック系白人),中学卒業1.41(1.01-1.97,p<0.05 vs 高校以上), BMI 25~29kg/m2 1.73(1.18-2.54,p<0.01 vs <25 kg/m2),≧30 kg/m2 3.39(2.49-4.61,p<0.001 vs <25 kg/m2)。
年齢調整後の高血圧の発見率:1999~2000年63.0%→2001~2002年62.5%→2003~2004年66.5%,治療率:47.3%→50.1%→53.7%,コントロール率:高血圧例25.0%→30.3%→33.1%(p<0.01 vs 1999~2000年);治療例51.3%→63.9%→63.9%;糖尿病を合併した高血圧治療例15.7%→32.1%→33.2%。
高血圧コントロール率は男女,非ヒスパニック系黒人,メキシコ系アメリカ人で有意に上昇し,高齢(60歳以上)で発見,治療,コントロールが有意に改善した。
今後とも高血圧管理をさらに進めてゆくべきである。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康