[2007年文献] 男性において,中程度(1〜4回/週)の飲酒は心不全の発症リスクと逆相関した(Physicians' Health Study I)
Djousse L and Gaziano JM: Alcohol consumption and risk of heart failure in the Physicians' Health Study I. Circulation. 2007; 115: 34-9.
- 目 的
- 男性において適度な飲酒が心不全のリスクを低下させるかを検証する。
- コホート
- Physicians' Health Study I(1981年開始)
試験開始時に40〜85歳であった(平均年齢53.8歳)アメリカの男性医師22071人において,低用量アスピリンとβ-カロテンの心血管疾患および癌の一次予防を検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験であるが,生活習慣関連結果も多く発表されている。
飲酒のデータのないもの,心不全発症例などを除外した21601人。
◆ベースライン時の飲酒の頻度:<1回/週(5629人),1〜4回/週(7858人),5〜7回/週(7449人),>7回/週(665人)。
追跡期間は1982〜2005年。 - 結 果
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・平均追跡期間18.4年で心不全(HF)発症は904例。
・年齢,喫煙例,高血圧,心房細動(AF),心臓弁膜症は飲酒量が多くなると増加し,狭心症,糖尿病が減少した。
・飲酒量とHFの関連
<1回/週:25.0例/10000人・年,1〜4回/週:20.0例/10000人・年,5〜7回/週:24.3例/10000人・年,>7回/週:20.6例/10000人・年。
年齢(<50歳,50〜59歳,60〜69歳,≧70歳),喫煙(一度もない,喫煙歴,喫煙中)で調整したハザード比(HR)は,<1回/週:1,1〜4回/週:088(95%信頼区間0.75-1.05),5〜7回/週:0.80(0.68-0.94),>7回/週:0.62(0.40-0.95)。直線性の傾向P=0.002。
年齢,喫煙,BMI(<25,25〜29,≧30kg/m2),弁膜症で調整したHRは,<1回/週:1,1〜4回/週:0.90(0.76-1.07),5〜7回/週:0.84(0.71-0.99),>7回/週:0.62(0.41-0.96)。直線性の傾向P=0.012。
・HF発症前に心筋梗塞(MI)を発症したものは143例(15.8%)。
MI非発症例におけるHF発症のHRは<1回/週:205例(1.0),1〜4回/週:246例(0.93[0.77-1.12]),5〜7回/週:290例(0.91[0.76-1.09]),>7回/週:20例(0.66[0.10-1.04])で直線性の傾向P=0.13。
・冠動脈疾患(CAD)発症例は346例(38.3%)。
CAD非発症例におけるHFの発症HRはそれぞれ148例(1.0),173例(0.93[0.74-1.16]),219例(0.97[0.79-1.21]),18例(0.84[0.51-1.37])で直線性の傾向P=0.73。 年齢,BMI,喫煙,高血圧・AF・心臓弁膜症既往で調整後,飲酒とMIは逆相関した。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康