[2006年文献] 動脈硬化の危険因子を有している若年者は冠動脈石灰化(CAC)の進展リスクが高い。
PDAYリスクスコア*の15年間のCAC予測能の分析(CARDIA)

Gidding SS, McMahan CA, McGill HC, Colangelo LA, Schreiner PJ, Williams OD, Liu K: Prediction of coronary artery calcium in young adults using the Pathobiological Determinants of Atherosclerosis in Youth (PDAY) risk score: the CARDIA study. Arch Intern Med. 2006; 166: 2341-7.pubmed

目 的
PDAYリスクスコア*が若年者における冠動脈石灰化(CAC)を予測できるかを検証する。

* 外因(事故,殺人,自殺)により死亡した若年者(15〜34歳)を剖検し,アテローム性動脈硬化の決定因子を検討するPathobiological Determinants of Atherosclerosis in Youth (PDAY)研究が作成した動脈硬化発症予測のリスクスコア。
性(男性: 0ポイント,女性: −1ポイント),年齢(15〜19歳: 0,20〜24歳: 5,25〜29歳: 10,30〜34歳: 15),非HDL-C(<130mg/dL: 0,130〜159mg/dL: 2,160〜189mg/dL: 4,190〜219mg/dL: 6,≧220mg/dL: 8),HDL-C(<40mg/dL: 1,40〜59mg/dL: 0,≧60mg/dL: −1),高血糖(5,正常: 0),高血圧(4,正常: 0),喫煙(1,非喫煙: 0),肥満(男性・BMI≧30kg/m2: 6,男性・BMI<30kg/m2: 0,女性: 0)。
コホート
アメリカの4施設で1985〜1986年に登録した5115人の若年男女における生活習慣,その他の因子の冠動脈疾患進展への寄与に関する長期観察研究:Coronary Artery Disease Risk Development in Young Adults(CARDIA)。
15年目の検診。33〜45歳;CTを実施した3043人のうち,PDAYおよびFraminghamリスクスコアを算出できたもの,登録時(2967人,Framinghamリスクスコアは2719人),5年後(2769人),10年後(2732人),15年後(2975人)で検討。
対象ベースライン時平均年齢は男性25.1歳,女性25.3歳,白人は男性58.0%,女性52.3%。
結 果
・各因子の変化(ベースライン時→5年後→10年後→15年後)
男性
非HDL-C(126.9→131.8→136.6→144.1mg/dL),HDL-C(50.1→48.7→45.6→45.0mg/dL),喫煙率(26.9→26.2→23.5→21.9%),糖尿病(0.7→0.9→2.4→3.9%),BMI(24.3→25.8→26.9→28.0kg/m2),高血圧(12.8→10.7→16.5→26.4%),心血管疾患家族歴(13.8→19.8→26.0→25.4%)。
PDAYリスクスコア(平均[範囲]2[−1〜19]→2[−1〜18]→3[−1〜24]→5[−1〜25]),Framinghamリスクスコア*(平均[範囲]−3[−10〜11]→−3[−10〜17]→1[−10〜22]→5[−10〜26])。*年齢を除く
女性
非HDL-C(121.9→119.1→121.6→126.7mg/dL),HDL-C(56.1→57.0→53.9→55.1mg/dL),喫煙率(26.0→24.1→21.4→19.3%),糖尿病(0.6→0.8→3.5→4.7%),BMI(24.3→25.9→27.5→28.9kg/m2),高血圧(3.5→5.4→10.5→21.1%),心血管疾患家族歴(14.3→21.2→27.4→26.8%)。
PDAYリスクスコア(平均[範囲]0[−2〜18]→−1[−2〜18]→0[−2〜18]→0[−2〜17]),Framinghamリスクスコア*(平均[範囲]−2[−8〜28]→−2[−8〜24]→1[−8〜31]→5[−8〜25])。*年齢を除く

・5年後から10年後にかけ, BMIが上昇,非HDL-Cが上昇の傾向,喫煙率,HDL-Cは低下し,10年間で高血圧,糖尿病が増加した。

・15年後のCACが0を超えたものは男性14.8%(201例/1358人),女性5.0%(80例/1609人)で平均スコア(範囲)は81.8(0.8〜3520.5),中央値21.8。
年齢,性で調整後の改善可能な危険因子によるPDAYリスクスコア1ポイント増加によるオッズ比(OR)は,全時点においてCACを有していること(1.09〜1.15),石灰化量*(1.10〜1.16)で1.00を有意に超えていた。
 *0,1〜9,10〜19,20〜99,100〜399,≧400の6カテゴリー

・石灰化量と改善可能な危険因子によるリスクスコアは有意な正の相関を示し(γ=0.51;95%信頼区間0.43-0.58),石灰化量≧100の46例中33例(71.7%)がPDAYリスクスコア≧3であった。

・リスクレベル(保有している改善可能な危険因子0〜1:低リスク[対照;OR 1.0],1〜2:中等度リスク,≧3:高リスク)でみると,ベースライン時に低リスクおよび15年間の変化が小さかったものは,リスクスコアの増加が最も大きくCACの可能性も高くなったが,有意ではなかった。中等度リスクであまり変化しないか上昇したものは,低リスク・変化の少ないものに比べCACの進展が有意に多く,中等度リスクでスコアが減少したものは低リスク・変化の少ないものとの間に有意差はみられなかった。高リスクのものは自身のリスクスコアの変化にかかわらず低リスク・変化の少ないものより有意にCACの進展が多かった。

・ベースライン時にリスクスコアが低かったものは15年後も低く,高かったものは15年後もやはり高かった。

・15年間のリスクスコアの増加によりCACのオッズ比が上昇し,減少により低下した。 また心血管疾患家族歴によりCACのオッズ比は上昇した。

・改訂PDAYリスクスコア(女性を−8ポイント,心血管家族歴を+4ポイントに変更)は元のPDAYリスクスコア,FraminghamリスクスコアよりもCACの予測能は優れていた。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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