[2007年文献] 果物,野菜および魚が多く,赤身肉および加工肉が少ない食事をとると,静脈血栓塞栓症発症リスクが低下する(LITE study)
Steffen LM, et al: Greater fish, fruit, and vegetable intakes are related to lower incidence of venous thromboembolism: the Longitudinal Investigation of Thromboembolism Etiology. Circulation. 2007; 115: 188-95.
- 目的
- ビタミンB,ω-3脂肪酸が豊富な食物は静脈血栓塞栓症(VTE)の発症と逆相関し,飽和脂肪酸,肉は正の相関にあることを検証する。
- コホート
- Longitudinal Investigation of Thromboembolism Etiology(LITE) study:Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) studyとCardiovascular Health Study(CHS)の2つのコホート研究において,VTE発症との関連を栄養(葉酸,ビタミンB6およびB12,ω-3および飽和脂肪酸),これらの栄養分が豊富な食物,並びに食事パターンから検討する前向き研究。
本報はARIC studyでの検討結果。
ARIC study:45~64歳。15,792人からVTE症例,黒人・白人以外の人種,エネルギー摂取量が男性:<700kcal,>4500kcal,女性:<500kcal,>3500kcalなどを除外した14,962人(白人男性5178人,黒人男性1531人,白人女性5771人,黒人女性2482人)。
追跡期間はベースライン時(1987~1989年)からVTE発症時,死亡時,最終追跡連絡時,もしくは2001年12月31日まで。
ベースライン時と6年後に食物摂取頻度質問票で食事摂取内容を評価した。
◆ベースライン時背景:平均年齢54歳,BMI 27.7kg/m2,過体重あるいは肥満67.7%,糖尿病11.7% 。葉酸の摂取量の平均値はアメリカ成人推奨量である400μg/日より少なかったが,ビタミンB6(推奨量1.5~1.7mg),B12(2.4μg)は多かった。果物,野菜の摂取は4.3サービング(品)/日で推奨回数を下回り,赤身の肉,加工肉は1.1品 /日,1日当たりの魚の摂取は0.25品。 - 結 果
- ・平均追跡期間12.5年で癌と関連しないVTE発症は196例。
栄養とVTE発症の関連
・葉酸摂取量の5分位最低区分(<160μg/日)に比べ,≧160μg/日の2~5分位区分でVTE発症が34~51%低かった(P for trend=0.06)。
・ビタミンB6は摂取量に依存してVTE発症が少なく,5分位最大区分 vs 最低区分のVTE発症のハザード比(HR)は0.37(95%信頼区間0.17-0.80,P for trend=0.007)。
・ω-3摂取量5分位最低区分(<0.1g/日)と比べ2~5分位区分でHRは30~46%低かった。相関の直線性傾向は有意ではなかった(P=0.37)。
・飽和脂肪酸,ビタミンB12とVTE発症との間に相関はみられなかった。
食物とVTE発症の関連
・果物,野菜の摂取量が5分位最低区分(<2.5品)に比べ,2~5分位区分(≧2.5品)でVTEのオッズ比は27~53%低下した(P for trend=0.03)。
・魚摂取量の5分位最低区分(<1回/週)に比べ2~5分位区分(1回/週以上)でVTEの発症が30~45%低下し,閾値効果が示唆されたが,直線性傾向はみられなかった(P for trend=0.3)。
・乳製品,精製穀物,全粒粉とVTE発症との間に関連はなかった。
・赤身肉および加工肉の摂取量を5分位最低区分(<0.5品/日)と比べ,最大区分(>1.5品/日)でVTE発症リスクが2倍となった(P for trend=0.02)。
食事内容とVTE発症の関連
・Prudent diet(植物性食品や魚類多めで赤身肉や加工肉が少なめ)スコアの5分位最低区分(-0.7未満)に比べ,2~5分位区分で発症リスクが28~38%低下したが有意ではなく,閾値効果が示唆されたが直線性傾向はみられなかった(P for trend=0.12)。Western dietスコア5分位最大区分は最低区分に比べリスクが60%上昇した(P for trend=0.04)。
・喫煙,身体活動,飲酒,ホルモン補充療法(女性)などの標準的な心血管疾患危険因子で調整後も,食事とVTE発症の関連は同様で,VIIc・VIIIc・フォン・ヴィレブランド因子で調整後のみ関連度がわずかに低下した。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康