[2007年文献] 炎症マーカー(CRP)・線溶能マーカー(PAI-1)・糸球体内皮機能マーカー (尿アルブミン/クレアチニン比)の上昇と高血圧発症は有意に関連する (Framingham Offspring Study)

Wang TJ, et al: Multiple biomarkers and the risk of incident hypertension. Hypertension. 2007; 49: 432-8.pubmed

目的
9つのバイオマーカー(C反応性蛋白[CRP],フィブリノゲン,プラスミノーゲンアクチベーター抑制因子1[PAI-1],アルドステロン,レニン,Bタイプナトリウム利尿ペプチド[BNP],N-terminal pro-心房ナトリウム利尿ペプチド[N-ANP],ホモシステイン,尿アルブミン/クレアチニン比[UACR])と高血圧(≧140/90mmHg,降圧治療)発症の関連を検討する。
コホート
Framingham Offspring Study(Framingham Heart Studyオリジナルコホートの子供およびその配偶者5124人を1971年から追跡)
第6回目(検査は4年ごとに実施)の検査時(1995~1998年・3532人)に高血圧を発症していなかった1456人:男性618人,女性838人。
◆ベースライン時の参加者背景:平均年齢(男性55歳,女性56歳),血圧(121/75mmHg,117/71mmHg),BMI(28.2kg/m2,26.4kg/m2),6回目から7回目の検査時での体重変化(1.0kg,1.1kg),喫煙(16%,17%),糖尿病(6%,3%),クレアチニン(1.2mg/dL,1.1mg/dL)。
結 果
・平均追跡期間3年で高血圧発症は232例(16%),うち女性は121例。

・ベースライン時のマーカー値
CRP(男性1.54mg/L,女性1.73mg/L),フィブリノゲン(312mg/dL,329mg/dL),PAI-1(22.9ng/mL,17.5ng/mL),アルドステロン(9ng/dL,10ng/dL),レニン(15mU/L,11mU/L),アルドステロン/レニン比(0.6,0.9),BNP(4.5pg/mL,8.5pg/mL),N-ANP(254pmol/L,330pmol/L),ホモシステイン(9.5μmol/L,8.0μmol/L),UACR(3.9mg/g,7.5mg/g)。

・年齢,性で調整後のバイオマーカー間の相関が最も高かったのは,BNPとN-ANP(r=0.51),次いでCRPとフィブリノゲン(r=0.48),レニンとアルドステロン(r=0.36)であった(全P<0.001)。

・危険因子で調整後,9つのバイオマーカー全体と高血圧発症とは有意に関連した(P=0.002)。

・変数減少法(多変量*調整後の各マーカー1標準偏差[SD]増加ごとのオッズ比[OR])で,単独で高血圧発症と有意に関連したのは,CRP,PAI-1,UACRで,その相関の強さは同程度であった。
CRP:OR 1.26(95%信頼区間1.05-1.51,P=0.013),PAI-1:1.28(1.05-1.57,P=0.016),UACR:1.21(1.02-1.43,P=0.027)。
* 年齢,性,血圧,血圧カテゴリー,クレアチニン,糖尿病,喫煙,BMI,体重変化

・上昇(平均の≧1SD)バイオマーカーを1つ有していたものは27%,2~3つ有していたのは9%。
有する上昇バイオマーカーが増えるごとに高血圧発症リスクは増加した。
上昇バイオマーカーを有していない場合の高血圧発症は4.5例/100人・年,1つ有している場合6.4例/100人・年,2つ以上の場合9.9例/100人・年。
上昇バイオマーカーを2つ以上有している場合の高血圧発症の予測の閾値は,特異度は高かったが(0.92),感度は低かった(0.15)。1つ以上有する場合の特異度は0.66,感度は0.47。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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