[2007年文献] ギリシャ人男性,特に勤労世代において,シエスタ(昼寝)は冠動脈疾患死亡と逆相関した。(EPIC-Greek Study)
Naska A, et al: Siesta in healthy adults and coronary mortality in the general population. Arch Intern Med. 2007; 167: 296-301.
- 目的
- 日常的にシエスタ(昼寝や午後の長い休憩)をとる習慣のある地中海沿岸やラテン・アメリカの国々では,冠動脈疾患(CHD)による死亡率が低いことから,シエスタがCHD死亡のリスクを減らすのではないかという仮説がある。
そこで,日常的に昼寝をとる習慣のあるギリシャ人の大規模コホートで,昼寝とCHD死亡率との関連を検討した。 - コホート
- EPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)のギリシャ人コホート。
1994~1999年にかけて登録されたギリシャ各地の20~86歳のボランティア26886人(94.1%)を2005年まで追跡。このうち,データに不備があった1184人,冠動脈疾患,脳卒中または癌の既往があった2021人を除外し,23681人について解析を行った。平均追跡期間は6.32年。
調査に際しては,面接官が参加者から話を聞き,調査票に記入を行った。調査項目は昼寝の習慣の有無,昼寝時間,昼寝の頻度,日常的な運動習慣,余暇の運動習慣,1日の合計睡眠時間,その他生活習慣,日常の食生活,疾患既往,身長,体重など。追跡時の死亡に関する情報は死亡診断書などの公的文書から取得した。
全体を,昼寝の頻度により以下のカテゴリーに分けて解析を行った。
・しない: 昼寝をしない人
・不定期: 平均30分以上の昼寝をするが週に3回未満の人,または昼寝の頻度にかかわらず平均30分未満の人
・定期的: 平均30分以上の昼寝を週に3回以上する人
・する: 「不定期」と「定期的」の人の合計 - 結 果
- 死亡は792人。うちCHDによる死亡は133人(男性85人,女性48人)だった。
CHD死亡率との関連が見られたのは男女とも年齢,喫煙。CHD死亡率と負の関連が見られたのは運動量(女性),地中海食スコア*(男性)。
(*伝統的な地中海式の食事をどの程度とっているかを0~9の数字で示したもの)
各変量を調整すると,男性では昼寝とCHD死亡率との間に有意な負の関連が見られたが,女性では有意な関連はなかった。
男女を合わせて解析すると,昼寝をする人全体と定期的にする人は,しない人に比べてCHD死亡リスクが低かった。
・しない: 1.00 (対照)
・不定期: 0.88 (95%信頼区間0.48-1.60)
・定期的: 0.63 (0.42-0.93)
・する: 0.66 (0.45-0.97)
男性でのみ有意な関連が見られたことから,男性を,登録時に働いていた人と働いていなかった人(それぞれ平均年齢47.5歳,66.8歳)にわけて解析を行った。その結果,働いていた男性では昼寝とCHD死亡リスクとの間に有意な関連が見られたが,働いていなかった男性では関連は見られなかった。
なお,女性については働いていた人の死亡数が少なかったため,解析を断念した。
ギリシャ人の男性,特に勤労者においては,昼寝とCHDによる死亡リスクとの間に負の関連が認められた。地中海沿岸地域や中央アメリカを含む世界の各地において昼寝習慣が多くみられるため,本研究結果は重要な知見と考えられる。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康