[2007年文献] 男性の痛風は死亡リスクを高める(Health Professionals Follow-Up Study)
Choi HK, et al: Independent impact of gout on mortality and risk for coronary heart disease. Circulation. 2007; 116: 894-900.
- 目的
- 痛風は男性に最も多発する炎症性関節症で,その社会的な負担は大きく,近年増加している可能性がある。しかし,心血管疾患の発症や全死因死亡に関する痛風の影響を検討した前向き疫学研究はない。そこで,Health Professionals Follow-Up Studyに参加している男性において,痛風の既往と心筋梗塞の発症,および死亡リスクに関する分析を行った。
- コホート
- Health Professionals Follow-Up Study(歯科医,検眼士,整骨師,薬剤師,手足治療医,獣医などの男性医療従事者を対象として米国で行われている大規模前向きコホート研究)。
40~75歳の男性51529人のうち,食生活,既往症,投薬状況などに関する自己記入式質問票を返送した51297人を,1986~1998年にかけて12年間追跡した(576515人・年)。 - 結 果
- ベースライン時に痛風のみの既往があったのは4.4 %,冠動脈疾患(CHD)のみの既往があったのは6.9 %,痛風およびCHDの既往があったのは1 %。
死亡は5825人。うち心血管疾患(CVD)死亡は2132人,CHD死亡は1576人。
ベースライン時に痛風既往があった男性の,多変量解析による各死亡の相対危険度(95 %信頼区間)は以下のようになった(vs. 痛風既往がなかった男性)。
・ ベースライン時にCHD既往がなかった場合
全死因死亡: 1.28(1.15-1.41)
CVD死亡: 1.38(1.15-1.66)
致死的CHD: 1.55(1.24-1.93)
・ ベースライン時にCHD既往があった場合
全死因死亡: 1.25(1.09-1.45)
CVD死亡: 1.26(1.07-1.50)
致死的CHD: 1.24(1.04-1.49)
追跡期間中に発症した痛風およびCHDを含めて解析を行っても,以上の結果はほぼ同様であった。さらに,追跡期間中に痛風を新規発症した男性のみで解析を行っても,結果はほぼ同様であった。
痛風の罹病期間ごとに全死因死亡の相対危険度を調べた結果,全死因死亡リスクは痛風の罹病期間とは関連していないことが示された。
痛風およびCHD既往と死亡リスクとの関連に対し,その他の因子(年齢,高血圧,高脂血症,心筋梗塞家族歴)がおよぼす影響について解析を行ったところ,年齢が高い群(70歳以上)では,低い群(60歳未満)に比べ,痛風による死亡リスクが低い傾向が見られた。
また,米国リウマチ学会(American College of Reumatology)基準により痛風と確定診断された男性における非致死的心筋梗塞のリスクは,痛風と確定診断されていない男性にくらべ,相対危険度1.59(95 %信頼区間1.04-2.41)と,有意に高くなった。
ただし,痛風であると自己申告した人で解析を行った場合でも,結果は同様であった。
この研究は,死亡に対する痛風の影響について前向きに検討した初めての報告である。痛風をもつ男性では死亡リスクが高くなることがあきらかになった。CHDの既往の多い男性においては,このリスク上昇はCVD死亡リスク,とくにCHD死亡リスクの上昇によるものであった。この結果をうけ,痛風患者におけるCVD予防の観点から,高血圧,脂質異常症などの各危険因子や生活習慣について積極的な管理を行う必要性が示された。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康