[2007年文献] 過剰なアルコール摂取は,メタボリックシンドローム発症リスクと関連する(日本人男性2130人)

Yokoyama H, et al: Effects of excessive ethanol consumption on the diagnosis of the metabolic syndrome using its clinical diagnostic criteria. Intern Med. 2007; 46: 1345-52.pubmed

目的
過剰なアルコール摂取が脂質異常症,糖尿病,高血圧などの疾患を引き起こすことが知られている。これらの背景には肥満の影響があり,そのメカニズムはメタボリックシンドロームと共通したものである可能性がある。一方で,アルコールの摂取によりHDL-C値が改善するとの報告もある。そこで,アルコール摂取とメタボリックシンドローム発症率の関連を検討した。
コホート
大学教員または事務員をしており,2005年に大学病院で健診を受けた20~65歳の日本人男性2230人から,何らかの理由で休職中の人,重度の疾患をもつ人,健診項目または自己記入式質問票に不備がある人を除いた2130人。
女性は,診断基準に関する議論が続いていることから,対象に含めなかった。

質問票により飲酒状況をたずね,飲酒しない人または1日のエタノール摂取量が20 gまでの人を「通常飲酒者」,20 gを超える人を「過剰飲酒者」とした(厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として1日20 g以下を推奨している)。
また,腹囲,血圧,トリグリセリド,HDL-C,γ-GTPおよび空腹時血糖を測定し,日本基準および改変NCEP-ATP III基準(腹囲を85 cmに修正)を用いてメタボリックシンドロームの診断を行った。
結 果
通常飲酒者は1657人,過剰飲酒者は473人だった。
過剰飲酒者で通常飲酒者に比べて有意に高い値を示したのは,腹囲,収縮期血圧,拡張期血圧,トリグリセリド,HDL-C,血糖,γ-GTP。
過剰飲酒者で通常飲酒者に比べて有意に低い値を示したのは,身長。

メタボリックシンドローム(MetS)の有病率は,日本基準では15.7 %,改変NCEP-ATP III基準では17.3 %(一致率は98.0 %)。
MetSの有病率は,いずれの基準を用いても,過剰飲酒者のほうが通常飲酒者より有意に高かった。
   ・ 日本基準: 過剰飲酒者22.0 %,通常飲酒者13.9 % (P<0.0001)
   ・ 改変NCEP-ATP III基準: 23.5 %,15.5 % (P<0.0001)

各MetS因子をもつ人の割合も,通常飲酒者より過剰飲酒者のほうが有意に高かった。
   ・ 腹囲(85 cm以上): 過剰飲酒者56.0 %,通常飲酒者43.0 % (P<0.0001)
   ・ 血圧高値(130 / 85 mmHg以上または降圧薬服用): 58.3 %,43.1 % (P<0.0001)
   ・ 脂質異常症(トリグリセリド150 mg/dL以上またはHDL-C 40 mg/dL未満): 29.4 %,24.7 % (P=0.0429)
   ・ 血糖高値(空腹時血糖110 mg/dL以上): 15.0 %,8.1 % (P<0.0001)

ただし,HDL-C 40 mg/dL未満の人の割合は,過剰飲酒者のほうが通常飲酒者よりも低かった(それぞれ2.8 %,6.2 %,P=0.0055)。

◇ 腹囲85 cm以上の人における解析
腹囲85 cm以上だったのは978人。
過剰飲酒者と通常飲酒者の年齢および腹囲は同等であった。
過剰飲酒者で通常飲酒者よりも有意に高い値を示したのは,収縮期血圧,拡張期血圧,血糖,γ-GTP。
日本基準によるMetSの有病率は,過剰飲酒者(39.2 %)のほうが通常飲酒者(32.4 %)よりも有意に高かった(P=0.049)。

◇ 結論
1日のエタノール摂取量20 g超の飲酒者におけるメタボリックシンドローム(現行基準)有病率は,通常飲酒者よりも有意に高かった。ただし,アルコール摂取が内臓脂肪を介してメタボリックシンドローム発症に影響しているのか,あるいは肥満とは独立した高血圧などのメカニズムによりメタボリックシンドローム発症に影響しているのかは,明らかではない。


監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康

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