[2008年文献] 日本人女性では,幼少期の過体重が必ずしも青年~成人期の過体重につながるわけではない(日本人女性76,635人)
日本人の女児および女性におけるBMIの推移について,1930~1999年の出生コホートによる年代ごとの比較を行った。その結果,出生が早いコホートにくらべ,出生が遅いコホートほど幼少期のBMIが高く,青年期のBMIが低い傾向がみとめられた。他の国では,幼少期の肥満の有無がその後にも影響するとの報告があるが,日本の女性では,幼少期の過体重が必ずしも青年~成人期の過体重につながるわけではないと考えられる。
Funatogawa I, et al. Do overweight children necessarily make overweight adults? Repeated cross sectional annual nationwide survey of Japanese girls and women over nearly six decades. BMJ. 2008; 337: a802.
- 目的
- 小児・若い世代の肥満は,世界的に大きな問題となっている。しかし,日本人の若い女性では近年BMIが減少しており,他の多くの国と逆の傾向を示しているとの報告がある。そこで,日本人の女児および女性におけるBMIの推移をより詳しく検討するため,出生コホートによる検討を行った。
- コホート
- 国民栄養調査(全国から無作為抽出した300地区における約5,000世帯が対象となる)のデータから,以下の年代ごとの出生コホート別にBMIの推移を比較した。
1948~71年の調査については,対象者数は不明。1972~2005年については,計76,635人が対象となった。
1930年代コホート: 生年1930~39年(年齢の範囲: 18~25歳*)
1940年代コホート: 1940~49年(8~25歳*)
1950年代コホート: 1950~59年(1~25歳)
1960年代コホート: 1960~69年(1~25歳)
1970年代コホート: 1970~79年(1~25歳)
1980年代コホート: 1980~89年(1~16歳**)
1990年代コホート: 1990~99年(1~6歳**)
* 国民栄養調査の開始が1948年であるため
** もっとも遅い年に生まれた人がまだ25歳に達していないため
- 結 果
- ◇ 成長曲線
BMIの成長曲線(growth curve)はいずれの出生コホートにおいても同様で,就学前(2~5歳)に低下,児童期(6~12歳)および中学~高校時(13~18歳)に上昇,その後19~25歳でわずかに低下する傾向を示していた。
◇ 平均BMI
BMIの平均値には出生コホートによる違いがみられた。
6~14歳では,出生が早いコホートにくらべ,遅いコホートのほうが高いBMI値を示したが,15~16歳を境にこの傾向は逆転し,17~25歳では,出生が遅いコホートのほうが低いBMI値を示した。
◇ BMIの年間増加率
6~9歳では,出生が早いコホートにくらべ,出生が遅いコホートのほうがBMIの年間増加率が大きかったが,10~12歳を境にこの傾向は逆転し,13~18歳では出生が遅いコホートのほうがBMI年間増加率が小さかった。
19~25歳でみられるBMIのわずかな低下傾向は,出生が遅いコホートほど,早い年齢から始まっていた。
しかし,その期間におけるBMIの年間低下率は,いずれのコホートでも同様だった。
◇ 結論
日本人の女児および女性におけるBMIの推移について,1930~1999年の出生コホートによる年代ごとの比較を行った。その結果,出生が早いコホートにくらべ,出生が遅いコホートほど幼少期のBMIが高く,青年期のBMIが低い傾向がみとめられた。他の国では,幼少期の肥満の有無がその後にも影響するとの報告があるが,日本の女性では,幼少期の過体重が必ずしも青年~成人期の過体重につながるわけではないと考えられる。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康