[2019年文献] 閉経後の女性において,フライドチキンや揚げた魚介類を食べる頻度が多い人では,全死亡ならびに心血管死亡リスクが有意に高い(Women’s Health Initiative)
Sun Y, et al. Association of fried food consumption with all cause, cardiovascular, and cancer mortality: prospective cohort study. BMJ. 2019; 364: k5420.
- 目的
- 揚げものは世界中で用いられている調理方法であるが,油の再利用による油の悪化や,食べ過ぎによるエネルギー摂取量過多などの問題を抱えている。実際に,いくつかの米国のコホート研究から,揚げものの摂取量が多い人では,2型糖尿病ならびに心血管疾患(CVD)リスクが高いことが報告されている。そこで,米国の閉経後の女性における,揚げものの摂取頻度と,全死亡・心血管疾患死亡・癌死亡リスクとの関連を調べた。
- コホート
- Women’s Health Initiative Observational Study(WHI-OS): Women’s Health Initiative(WHI: 閉経後の女性の死亡・障害・QOL低下の原因となる心血管疾患や癌,骨粗鬆症などについて検討することを目的に米国の40施設で実施された。1993~1998年に登録された50~79歳の健康な閉経後女性16万1808人が対象)の延長試験として実施された前向きコホート研究。食物摂取頻度のデータから,1日のエネルギー摂取量が600~5000 kcalであった10万8308人のうち,ホルモン補充療法のデータのない104人,追跡期間中に病院を訪れなかった1238人を除外した,10万6966人(WHIの観察研究88881人,臨床研究参加18085人)を対象とした。追跡期間は平均17.9年(191万4691人・年)。
揚げものの摂取量は,フライドチキン,揚げた魚介類(魚,魚のサンドウィッチ,海老,牡蠣),その他の揚げもの(フレンチフライ,フライドポテト,チャーハン,揚げキャッサバ,フリット,スナック菓子,揚げたプランテン[クッキングバナナ],タコス・トルティーヤ,フラウタ[小麦やトウモロコシの生地を揚げたもの],インドの揚げパン)の3つの合計と定義した。
揚げものを食べる頻度について,以下の5つのグループに分類した。
[G1]食べない,[G2]1回未満/週,[G3]1~2回/週,[G4]3~6回/週,[G5]1回以上/日
さらに,フライドチキン,揚げた魚介類,その他の揚げものを食べる頻度について,それぞれ以下の4つのグループに分類した。
[G’1]食べない,[G’2]2回未満/月,[G’3]2~3回/月,[G’4]1回以上/週 - 結 果
- 追跡期間中の死亡は31558人。そのうちCVDが9320人,癌死亡が8358人,その他の死亡が13880人であった。
◇ 対象背景
揚げものの摂取頻度のグループごとの背景は以下のとおり(すべてP<0.001)。
年齢(歳): [G1]64.9,[G2]64.3,[G3]63.1,[G4]62.4,[G5]61.3
人種
白人: 90.5%,87.9%,82.2%,77.1%,68.5%
黒人: 4.4%,5.5%,8.5%,11.3%,17.2%
ヒスパニック: 2.4%,3.0%,4.2%,5.7%,7.7%
その他: 2.5%,3.3%,5.0%,5.8%,6.5%
教育
未就学または高校卒業: 24.6%,28.8%,34.2%,38.8%,44.9%
大学中退または聴講生: 25.2%,27.0%,27.2%,26.9%,25.4%
大学卒業: 12.8%,11.7%,10.7%,9.9%,8.8%
大学院卒業: 36.7%,31.8%,27.2%,23.4%,19.9%
年間世帯収入
2万ドル未満: 13.6%,14.5%,15.5%,18.2%,21.6%
2万~4万9999ドル: 38.1%,40.7%,42.7%,42.4%,43.1%
5万ドル以上: 40.5%,38.0%,35.0%,32.4%,28.1%
エストロゲン製剤の服用
服用したことがない: 67.1%,64.5%,64.0%,65.9%,66.8%
過去に服用していた: 13.0%,13.7%,13.6%,13.1%,12.8%
ベースライン時に服用している: 20.0%,21.8%,22.4%,21.0%,20.4%
エストロゲン/プロゲステロン製剤の服用
服用したことがない: 73.4%,72.7%,74.4%,76.1%,78.9%
過去に服用していた: 8.6%,9.1%,8.7%,8.7%,6.7%
ベースライン時に服用している: 18.0%,18.2%,16.9%,15.3%,14.5%
喫煙: 4.0%,5.6%,7.6%,9.5%,10.8%
運動(METs-時間/週)
10時間未満: 36.3%,45.2%,53.5%,59.8%,64.7%
10時間以上: 61.9%,52.8%,44.2%,38.0%,33.1%
飲酒量
飲まない: 42.0%,38.8%,39.6%,42.7%,48.3%
中程度: 45.1%,47.8%,46.9%,43.5%,39.6%
多量: 12.9%,12.4%,13.4%,13.7%,12.1%
エネルギー摂取量(kcal/日): 1377.1,1401.4,1593.7,1906.2,2470.4
BMI(kg/m2)
25未満: 49.6%,43.3%,35.3%,29.2%,23.9%
25.0~29.9: 31.9%,34.4%,34.8%,34.0%,30.6%
30以上: 17.3%,21.2%,29.0%,35.8%,44.3%
◇ 揚げものの摂取頻度と全死亡リスクとの関連
揚げものの摂取頻度のグループごとにみた,全死亡の多変量調整†ハザード比は以下のとおり。
揚げものを毎日1回以上食べる人では,まったく食べない人と比べて,全死亡リスクが有意に高かった(†年齢,人種,教育歴,世帯年収,WHIの観察研究または臨床研究参加,エストロゲン製剤の服用,エストロゲン/プロゲステロン製剤の服用,喫煙,運動量,コーヒー摂取量,総エネルギー摂取量,食事の質のスコア,糖尿病既往,CVD既往,癌の既往,BMIで調整)。
全死亡: [G1]1(対照),[G2]1.01(0.98-1.05),[G3]1.02(0.99-1.06),[G4]1.03(0.98-1.07),[G5]1.07(1.01-1.15),P for trend=0.06
◇ 揚げものの種類別にみた,摂取頻度と全死亡リスクとの関連
揚げものの種類別(フライドチキン・揚げた魚介類,その他)にみた,全死亡の多変量調整†ハザード比は以下のとおり。フライドチキンを食べる頻度が多い人,ならびに揚げた魚介類を1回/週以上食べる人では,まったく食べない人と比べて,有意に全死亡リスクが高かった。また,フライドチキンを食べる頻度が多いグループほど,死亡リスクが高くなる傾向がみられた。
フライドチキン: [G’1]1.00(対照),[G’2]1.06(1.03-1.09),[G’3]1.11(1.07-1.16),[G’4]1.12(1.06-1.18),P for trend<0.001
揚げた魚介類: 1.00(対照),0.97(0.94-0.99),0.99(0.95-1.03),1.07(1.02-1.12),P for trend=0.10
その他の揚げもの: 1.00(対照),1.01(0.98-1.05),0.98(0.95-1.02),0.98(0.95-1.01),P for trend=0.05
◇ 揚げものの種類別にみた,摂取頻度とCVD死亡リスクとの関連
揚げものの種類別にみた,CVD死亡の多変量調整†ハザード比は以下のとおり。フライドチキンを食べる頻度が多い人,ならびに揚げた魚介類を1回/週以上食べる人では,まったく食べない人と比べて,有意にCVD死亡リスクが高かった。また,フライドチキンを食べる頻度が多いグループほど,CVD死亡リスクが高くなる傾向がみられた。
フライドチキン: [G’1]1.00(対照),[G’2]1.07(1.02-1.13),[G’3]1.15(1.07-1.24),[G’4]1.11(1.01-1.21),P for trend<0.001
揚げた魚介類: 1.00,1.00(0.95-1.05),0.97(0.91-1.04),1.12(1.04-1.22),P for trend=0.09
その他の揚げもの: 1.00,0.98(0.93-1.05),0.95(0.89-1.02),0.95(0.89-1.01),P for trend=0.06
◇ 揚げものの種類別にみた,摂取頻度と癌死亡リスクとの関連
揚げものの種類別にみた,癌死亡の多変量調整†ハザード比は以下のとおり。フライドチキンならびに揚げた魚介類を食べる頻度と癌死亡とのあいだに,有意な関連はみられなかった。
フライドチキン: [G’1]1.00(対照),[G’2]1.01(0.95-1.07),[G’3]0.98(0.90-1.06),[G’4]1.03(0.93-1.14),P for trend<0.99
揚げた魚介類: 1.00,0.92(0.87-0.97),0.99(0.92-1.06),1.05(0.96-1.14),P for trend=0.80
その他の揚げもの: 1.00,1.09(1.02-1.17),1.05(0.98-1.13),1.03(0.97-1.11),P for trend=0.95
◇ 結論
米国の閉経後の女性における,揚げものの摂取頻度と,全死亡・CVD死亡・癌死亡リスクとの関連を調べた。その結果,揚げものを頻度に食べる人は,まったく食べない人と比べて,全死亡リスクが有意に高かった。また,揚げものの種類別でみると,フライドチキンならびに揚げた魚介類を頻繁に食べる人は,まったく食べない人と比べて,全死亡リスクならびにCVD死亡リスクが有意に高かった。揚げもの,とくにフライドチキンや揚げた魚介類の摂取頻度を減らすことが,公衆衛生学的見地から疾病予防に関して意味ある結果をもたらす可能性が示唆された。
監修: epi-c.jp編集委員 磯 博康