1900~1910年に出生した日系アメリカ人男性 | |
米国ハワイ州(オアフ島およびハワイ島) | |
1991年 (ホノルル心臓調査の第4回健診時) |
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3741人 | |
身長,体重,座高,上腕三頭筋部皮下脂肪厚,腹囲,ヒップ周囲長,心拍数,心電図,呼吸機能(努力肺活量,FEV1),握力,身体・運動機能,血圧(座位,立位,足首上腕血圧比[ABI]),視力,聴力,嗅覚,飲酒,喫煙,身体活動(毎日の歩行距離,昇降階段数),教育年数,服薬状況,既往歴,日本在住期間,就業状況,疾患家族歴,抑うつ症状,社会的サポート・ネットワーク,睡眠状況,血算,ヘモグロビン,ヘマトクリット,アポリポ蛋白E遺伝子型,血糖,負荷後血糖,総コレステロール,尿酸,インスリン,負荷後インスリン,HDL-C,LDL-C,トリグリセリド,アルブミン,性ホルモン,フィブリノゲン,チロトロピン,Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI),神経心理学的評価バッテリー,神経学的検査,脳CTスキャン所見†,剖検による病理学的所見†,食事調査(量,頻度)‡,尿糖‡,尿蛋白‡など †対象者の一部のみ,‡ホノルル心臓調査の第1回健診時 詳細は,以下の「HHP-HAAS List of Variables」を参照 |
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日本臨床. 2011; 69(suppl 8): 603-6. Kuakini Health System: Honolulu-Asia Aging Study |
米国の認知症患者の数は,いまや500万人以上。1980年代,認知症全体の有病率にはこれといった地域差はみられないものの,内訳をみると欧米ではアルツハイマー病が多いのに対し,アジアでは血管性認知症が多いことが指摘されていた。欧米とアジアにおける認知症病型の違いの背景には,診断方法や,発症における環境要因と遺伝的要因の違いがあると考えられる。そこで,日本人と共通の遺伝的背景をもつハワイの日系人男性を対象としたホノルル心臓調査をベースに,1991年からHAASとして認知症の研究が開始された。ホノルル心臓調査の対象者を抽出する際に第二次世界大戦時の選抜徴兵登録用データが用いられたため,調査対象は男性である。
有病調査では,アルツハイマー病の有病率が日本人にくらべると高く,白人に近いレベルにあること,また,血管性認知症の有病率は日本人より少なく白人より多いことが示されている(抄録へ)。また発症調査では,ホノルル心臓調査の第1~3回健診時のデータを「中年期(mid-life)」,第4回健診以降の認知機能を含むデータを「高齢期(late-life)」とした縦断的な検討により,中年期の高血圧(抄録へ),多量飲酒(抄録へ),喫煙,糖代謝異常などが認知機能低下の危険因子となることも報告された。追跡期間中の死亡例の一部については,剖検による病理学的な検討も行われている。
認知機能検査を含めた追跡調査は,米国国立老化研究所(National Institute on Aging)の研究費によって現在に至るまで継続され,脳の老化やパーキンソン病についての検討も行われている。Exam 13(2014~2015年)での平均年齢は,実に96.6歳。着実に進む高齢化のなかで,老いるとはどういうことなのかを問い続けるユニークなコホート研究として,HAASの知見が今後ますます注目される。
・2018.10.31
[1997年文献] 中年期の継続的な喫煙は,将来の認知機能障害と関連する
・2018.9.28
[2004年文献] 日常的によく歩く人では,認知症およびアルツハイマー病の発症リスクが低い
・2018.3.29
[2003年文献] 中年期の喫煙者において,喫煙量はアルツハイマー病の発症リスクと関連する
・2017.7.20
[2000年文献] 中年期の少量~中程度飲酒者では,高齢期の認知機能低下リスクが有意に低い
・2017.7.20
[1999年文献] 日系人男性の血管性認知症: 原因として多いのはラクナ梗塞で,有意な危険因子は加齢,心疾患既往,および血糖高値
・2017.7.20
[1997年文献] 軽度の認知症では,家族がそうとは認識していない「見過ごされた認知症」の割合が高い
・2017.7.20
[1996年文献] ハワイに移住した高齢の日系アメリカ人男性では,アルツハイマー病の有病率が日本人より高く欧米とは同等
・2017.7.20
[1995年文献] 中年期の収縮期血圧が高いほど,25年後の認知機能低下のリスクが高い