[2003年文献] 脳卒中死の危険因子は,年齢,低BMI,および脳出血
日本では脳卒中に占める脳出血の割合が高く,そのために脳卒中の死亡率が他の国よりも高くなっている可能性がある。この研究の結果は脳卒中一次予防の重要性を裏付けるものであり,とくに栄養状態の改善が重要だと考えられる。
Kiyohara Y, et al: Ten-year prognosis of stroke and risk factors for death in a Japanese community: the Hisayama study.Stroke 2003; 34: 2343-7.
- コホート
- 1961年から1987年まで26年間追跡した40歳以上の1621人のうち,脳卒中を初発した333人(発症から10年間)。
追跡率は100%。 - 結 果
- 脳梗塞は244人(男性120人,女性124人),脳出血は60人(男性40人,女性20人),くも膜下出血は29例(男性6人,女性23人)。
10年後の死亡率は,男性80.7 %,女性80.2 %。
男女共に,死亡率が最も高かったのは発症後1年間(それぞれ40.3 %,43.7 %)。中でも,特に発症後1か月の死亡率が高かった(それぞれ24.7 %,21. 6 %)。
発症後30日間の死亡率は,脳梗塞(9.0 %)に比べ,脳出血(63.3 %)およびくも膜下出血(58.6 %)で高かった。
初発後の期間別死亡率 (%)0-3か月 3か月-1年 1-5年 5-10年 合計 男性 24.7 15.6 26.6 13.8 80.7 女性 21.6 22.1 24.0 12.5 80.2
脳卒中患者の死亡率は,非発症例に比べ2倍。
死因の最も多くを占めるのが,初発の脳卒中。その後,年数とともに初発の脳卒中による死亡が減少する一方,脳卒中の再発による死亡が増加した。
脳卒中死亡の有意な危険因子は,年齢,低BMI,および脳出血,脳梗塞死亡の有意な危険因子は年齢,低BMI,血圧,心房細動であった。
多変量解析による相対危険度は以下のとおり。
・ 脳卒中死亡
年齢(+10歳): 1.55 (95 %信頼区間1.34-1.79,P<0.05)
BMI(+1 kg/m2): 0.95 (0.91-0.98,P<0.05)
脳出血既往: 2.84 (2.17-3.72,P<0.05 vs. 既往なし)
・ 脳梗塞死亡
年齢(+10歳): 2.03 (1.87-2.45,P<0.05)
BMI(+1 kg/m2): 0.91 (0.86-0.95,P<0.05)
高血圧: 1.57 (1.14-2.17,P<0.05 vs. 正常血圧)
心房細動: 1.62 (1.11-2.36,P<0.01 vs. なし)
日本では脳卒中に占める脳出血の割合が高く,そのために脳卒中の死亡率が他の国よりも高くなっている可能性がある。この研究の結果は脳卒中一次予防の重要性を裏付けるものであり,とくに栄養状態の改善が重要だと考えられる。