[2002年文献] ホモシステインの上昇は,全脳梗塞,ラクナ梗塞およびアテローム血栓性脳梗塞の有意で独立した危険因子
日本人一般住民を対象としたコホート内症例対照研究において,血中ホモシステイン値と全脳梗塞および脳梗塞各病型(ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓)との関連を検討した。その結果,血中ホモシステイン値の上昇は脳梗塞のすべての病型の独立した危険因子であり,とくにアテローム血栓性脳梗塞および心原性脳梗塞との関連が強いことが示唆された。
Shimizu H, et al: Plasma homocyst(e)ine concentrations and the risk of subtypes of cerebral infarction. The Hisayama study.Cerebrovasc Dis 2002; 13: 9-15.
- コホート
- 脳卒中既往のある117例のうち,病型不明,複数病型の併発および自力で行動・食事不可能な重症例を除いた75例(1996年)。
発症から血液検査までの平均経過年数は7.6年(最短3か月,最長30年)。
病型ごとに年齢・性別を対応させた健康な対照群を用い,値を比較した。 - 結 果
- 脳梗塞群で対照群に比べ有意に高い値を示したのは,収縮期血圧,高血圧,糖尿病。
脳梗塞群で対照群に比べ有意に低い値を示したのは,BMI,総蛋白質,飲酒。
脳梗塞群と対照群で有意差がなかったのは,拡張期血圧,総コレステロール,クレアチニン,葉酸,喫煙。
葉酸で有意差はなかったが,梗塞群ではビタミンB6が有意に低く,ビタミンB12が有意に高かった。
病型の内訳は,ラクナ梗塞43例,アテローム血栓性脳梗塞24例,心原性脳梗塞8例。
全脳梗塞,およびすべての病型において,血中ホモシステイン値は対照群に比べ有意に高かったが,アテローム血栓性脳梗塞では他の病型に比べ有意性が低かった。
脳梗塞群と正常群のホモシステイン値発症数 ホモシステイン (micromol/L) 脳梗塞 対照 全脳梗塞 75 13.0 ** 11.8 ラクナ梗塞 43 12.3 ** 11.3 アテローム血栓性脳梗塞 24 13.4 * 11.9 心原性脳梗塞 8 16.3 ** 12.7 *P<0.1,**P<0.05
脳梗塞群と対照群を合わせ,ホモシステイン値の三分位数ごとの1~3群間で種々の因子の平均値を比べた。
ホモシステイン値と有意な正の相関を示したのは,年齢,男性の割合,収縮期・拡張期血圧,高血圧,総蛋白質,クレアチニン。
ホモシステイン値と有意な逆相関を示したのは,葉酸,ビタミンB12。
相関がなかったのは,糖尿病,BMI,コレステロール,飲酒,喫煙。
脳梗塞のオッズ比はホモシステイン値と正の相関を示し,3群では脳梗塞のリスクが有意に高まった(P=0.006)。
ラクナ梗塞のリスクは,1群に比べて2群では変わらなかったが,3群では有意に高かった(vs. 1群,P=0.031)。
アテローム血栓性脳梗塞のリスクは2群でも高く(vs. 1群,P=0.076),3群では有意に高まった(P=0.024)。
ホモシステインと脳梗塞発症リスクホモシステイン値三分位 1群 (<10.4) 2群 (10.4-13.6) 3群 (≧13.6) 全脳梗塞 粗オッズ比 1.0 1.7 (0.8-3.4) 2.8 (1.3-5.9) * 補正後オッズ比 1.0 2.0 (0.9-4.4) 4.0 (1.8-8.9) * ラクナ梗塞 粗オッズ比 1.0 1.1 (0.4-2.5) 2.6 (1.1-6.2) ** 補正後オッズ比 1.0 1.1 (0.4-2.8) 3.4 (1.3-8.9) ** アテローム血栓性脳梗塞 粗オッズ比 1.0 3.3 (0.9-12.5) 5.2 (1.2-21.4) ** 補正後オッズ比 1.0 5.0 (1.1-23.7) ** 7.5 (1.5-38.3) ** *P<0.05,**P<0.01 (vs. 1群)
高血圧,総蛋白質,クレアチニン,葉酸,ビタミンB12などの因子で補正した結果,これらの有意性は変わらず,2群におけるアテローム血栓性脳梗塞のリスクはより顕著になった。
心原性脳梗塞の発症率は2群,3群の両方において33%だったが,1群での発症例が0であったため,解析は不可能。