[2000年文献] 1960~90年代の脳梗塞の最多はラクナ梗塞。危険因子は年齢,収縮期血圧,左室肥大および心房細動
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,脳梗塞の病型別発症率および危険因子を検討した。32年間の追跡の結果,ラクナ梗塞の発症率が,アテローム血栓性脳梗塞および心原性脳梗塞よりも高く,全脳梗塞の危険因子は高血圧のみならず,心電図異常,耐糖能異常,肥満,喫煙と多岐にわたることが示唆された。
Tanizaki Y, et al: Incidence and risk factors for subtypes of cerebral infarction in a general population: the Hisayama study.Stroke 2000; 31: 2616-22.
- コホート
- 40歳以上で脳卒中既往のない1621例(1961~1993年,32年間)。
追跡不能は2例のみ。剖検率は81%(死亡1063例中861例)。
平均年齢は,男性56歳,女性57歳。
男女でほぼ同じ値を示したのは,血圧,降圧薬服用率,心房細動。
男性で女性より高い値または保有率を示したのは,左室肥大,耐糖能異常,飲酒,喫煙。
女性で男性より高い値または保有率を示したのは,ST下降,総コレステロール,BMI。 - 結 果
- 脳梗塞を発症したのは298例。うち,ラクナ梗塞が167例,アテローム血栓性脳梗塞が62例,心原性脳塞栓が56例,病型不明が13例。
男女とも,ラクナ梗塞の発症率は,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓のいずれよりも高かった。
全脳梗塞,およびすべての病型において,男性の発症率は女性の約2倍。
男女ともに,全脳梗塞の相対危険度(年齢調整)と有意に関連していたのは収縮期および拡張期血圧,左室肥大,ST下降,心房細動,耐糖能異常。
拡張期および収縮期血圧は,男性の心原性脳塞栓を除き,すべての病型において有意な危険因子だった(P<0.05)。
BMIは,女性のラクナ梗塞の有意な危険因子だった(P<0.05)。
左室肥大および心房細動は,男女ともに,心原性脳塞栓の有意な危険因子だった(P<0.05)。
多変量解析によると,年齢,収縮期血圧,左室肥大,心房細動はそれぞれ全脳梗塞(男女とも)の有意で独立した危険因子。とくに心房細動は心原性脳塞栓の非常に強い危険因子であった(男性での相対危険度17.8,女性での相対危険度5.9,P<0.01)。