[1999年文献] 高インスリン血症は,腎機能低下の有意な危険因子である
日本人一般住民を対象としたコホート研究における断面解析により,高インスリン血症と腎機能との関連を検討した。その結果,空腹時+食後2時間の合計インスリン値が高いとクレアチニン逆数が有意に低く,さらに合計インスリン値はクレアチニン逆数およびクレアチニンクリアランスの両方と有意かつ独立に相関していた。これより,高インスリン血症は腎機能の有意な関連因子であることが示された。
Kubo M, et al: Effect of hyperinsulinemia on renal function in a general Japanese population: the Hisayama study.Kidney Int 1999; 55: 2450-6.
- コホート
- 40-79歳の2480例のうち,インスリン治療中の糖尿病,またはクレアチニンクリアランスが30mL/分以下の腎不全の計34例を除いた2446例(1988年)。
- 結 果
- 男性で女性より有意に高い値を示したのは,血中クレアチニン,クレアチニンクリアランス,空腹時血糖,糖化ヘモグロビン,血圧,トリグリセリド,飲酒,喫煙(P<0.05)。
女性で男性より有意に高い値を示したのは,クレアチニン逆数,食後2時間インスリン,空腹時+食後2時間合計インスリン,総コレステロール,HDL-C,LDL-C(P<0.05)。
クレアチニン逆数と有意な正の相関を示したのは飲酒,HDL-C(男性のみ),喫煙(男性のみ)で,負の相関を示したのは血中インスリン,収縮期・拡張期血圧,総コレステロール,LDL-C,トリグリセリド,BMI,食後2時間血糖(女性のみ)。
男女共に,糖化ヘモグロビンはクレアチニン逆数と相関がなかった。
クレアチニンクリアランスと有意な正の相関を示したのは血中インスリン,拡張期血圧,BMI,飲酒で,負の相関を示したのは年齢と収縮期血圧。中でも年齢とBMIはクレアチニンクリアランスに対する相関が強かった。
男性でのみクレアチニンクリアランスと有意な正の相関を示したのはトリグリセリドと喫煙で,負の相関を示したのはHDL-C。
女性でのみクレアチニンクリアランスと有意な正の相関を示したのは糖化ヘモグロビンで,負の相関を示したのは総コレステロール,LDL-Cおよびトリグリセリド。
年齢を補正して各因子と性別との相関を調べると,BMIのみ男女間で有意差があった。
空腹時+食後2時間の合計インスリン値四分位ごとのクレアチニン逆数平均をみると,インスリン値が高い第4四分位群で,第1四分位群に比べクレアチニン逆数が有意に低かった(P<0.05)。
一方,耐糖能異常レベルごとのクレアチニン逆数には有意差なし。
逐次重回帰分析によると,空腹時+食後2時間の合計インスリンは,クレアチニン逆数およびクレアチニンクリアランスの両方と,有意かつ独立して相関していた。
また,クレアチニン逆数およびクレアチニンクリアランスと有意な正の相関を示したのは飲酒(P<0.01),負の相関を示したのは収縮期血圧と総コレステロール(P<0.05)。
男性(性別)とBMIはクレアチニン逆数と有意な負の相関を示し,クレアチニンクリアランスとは正の相関を示した。
トリグリセリドは,クレアチニン逆数と有意な負の相関を示した。