[1996年文献] 1980年代後半,小中学生の総コレステロールおよびHDL-Cは,アメリカの小中学生に比べ,やや高い傾向
高コレステロール血症はアテローム性動脈硬化の重要因子であることは周知のことであるが,日本では小児期における血中コレステロール検査やそれに関連した健康教育はいまだ普及していない。そこで,1980年代後半における我が国の6~14歳の小中学生の血中脂質値を調査した。その結果,日本の児童はアメリカの児童にくらべ,総コレステロールおよびHDL-Cがやや高く,トリグリセリドは顕著に高かった。また,日本の児童のコレステロール値は10年前の値にくらべると高くなっていた。ライフスタイルの西洋化により日本の児童のコレステロール値の急激な上昇が想定されることから,学校での健康教育を含めた予防プログラムを強化すべきと考えられる。
Fukushige J, et al: Serum cholesterol levels in school-aged Japanese children: the Hisayama study.Acta Paediatr Jpn 1996; 38: 22-7.
- コホート
- 1985年から1990年にかけて,学校健診で血液検査を受けた6歳~14歳の5825例。
- 結 果
- 総コレステロール: 男児は155-172mg/dL,女児は156-170mg/dLで,10年前に比べ,男児で5-10mg/dL,女児で0-5mg/dL高くなっていた。なお,アメリカの脂質研究クリニックの調査結果では男児164mg/dL,女児167mg/dLで,日本の児童はアメリカとほぼ同じ~やや高い総コレステロール値を示した。
トリグリセリド: 男児は68-90mg/dL,女児は73-92mg/dL。すべての年齢で,女児のほうが男児より高い傾向あり。また,アメリカの男児は30mg/dL(5-9歳)・68mg/dL(10-14歳),女児は30mg/dL(5-9歳)・78mg/dL(10-14歳)で,日本の児童はアメリカよりも顕著に高いトリグリセリド値を示した。
HDL-C: 男児は56-65mg/dL,女児は58-61mg/dL。ピークは男女共に9歳。アメリカの男児は57mg/dL,女児は55mg/dLで,日本の児童はアメリカよりもやや高いHDL-C値を示した。
LDL-C: 男児は82-93mg/dL,女児は83-93mg/dL。ピークは男児9歳,女児8歳。アメリカの男児は 98mg/dL,女児は100mg/dLで,日本の児童はアメリカよりもやや低いLDL-C値を示した。
以上の結果より計算された年齢ごとのアテローム発生指数(AI)は,男児で1.7-1.9,女児で1.8-2.0だった。