[1995年文献] 脳血管性認知症の危険因子は年齢,収縮期血圧,飲酒,脳卒中既往。アルツハイマー病では年齢および長谷川式認知症スケール低値
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,病型別の認知症発症率および危険因子の検討を行った。7年間の追跡の結果,脳血管性認知症発症の独立した危険因子は無症候性脳卒中,年齢,脳卒中既往,収縮期血圧,および飲酒であり,アルツハイマー病の有意な危険因子は年齢および長谷川式認知症スケール低値であった。適度の運動習慣はアルツハイマー病を有意に予防することも示された。これらの結果より,高血圧管理と飲酒制限は,脳卒中ならびに日本人に多い脳血管性認知症の発症を予防する可能性が示唆された。
Yoshitake T, et al: Incidence and risk factors of vascular dementia and Alzheimer's disease in a defined elderly Japanese population: the Hisayama Study.Neurology 1995; 45: 1161-8.
- コホート
- 1985年から1992年まで7年間追跡した,65歳以上の828例。
追跡率は99.8%(死亡を含む),剖検率82%(176例/死亡214例)。 - 結 果
- 認知症の発症は103例。うち脳血管性認知症(VD)が50例,アルツハイマー病(AD)が42例,混合型が2例,その他が9例。
VDおよびADの発症率は,年齢と共に増加した。
70~84歳の男性ではVDの発症率が高く,80歳以上の女性ではVDに比べADが急激に増加。
VDの発症率は男性のほうが高く,逆にADでは女性の発症率が男性の2倍以上となったが,これらの差は有意ではなかった。
VD患者における脳卒中のうち,多かったのは小血管病変による多発性ラクナ梗塞およびビンスワンガー病で,その半数は追跡開始の時点で脳卒中既往なし。
すべての認知症患者において,1回のみ脳卒中既往を持つ97例中27例(27.8%),および2回以上の脳卒中既往を持つ26例中9例(34.6%)がVDを発症。一方,ADを発症したのは3例のみ(2.4%)。
ADとVDの両方における有意な危険因子は,年齢および長谷川式認知症スケール低値。
VDの有意な危険因子は,飲酒,糖尿病既往,脳卒中既往,血圧およびヘマトクリット。
ADの有意な予防因子は,適度の運動習慣。
多変量解析によると,追跡開始時の脳卒中既往のみを考慮した際,VDの有意で独立した危険因子は,年齢,収縮期血圧,脳卒中既往,飲酒,長谷川式認知症スケール低値(P<0.05),および糖尿病既往(P<0.1)。
追跡期間中に発症した脳卒中をすべて考慮に入れても,年齢,収縮期血圧,飲酒および脳卒中既往は,VDの有意な危険因子のまま。
多変量解析の結果,ADの有意で独立した危険因子は,年齢および及び長谷川式認知症スケール低値。またADの有意な予防因子は,適度の運動習慣。