[1990年文献] 全脳卒中,脳出血および脳梗塞の発症は,有意な季節変動性を示した
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,脳卒中発症の季節変動性に関するはじめての検討を行った。24年間の追跡の結果,全脳卒中,脳出血,脳梗塞のそれぞれで有意な季節変動性がみとめられたが,くも膜下出血では認められなかった。
Shinkawa A, et al: Seasonal variation in stroke incidence in Hisayama, Japan.Stroke 1990; 21: 1262-7.
- コホート
- 40歳以上の1621例(1961年~1985年,24年間)。
追跡率99.9%,剖検率80%以上。
久山町に近い福岡市において,1年間の平均気温は8月のみがピークであるのに対し,気温の日中変動幅では3-5月および10-11月の2つのピークが見られた。 - 結 果
- 脳卒中の発症は311例。
発症年月日がはっきりしている308例中,脳出血は51例,脳梗塞は223例,くも膜下出血は27例,病型不明は7例。
季節変動性(発症数の有意な振幅)は,全脳卒中(P<0.01),脳出血(P<0.05),脳梗塞(P<0.01)のそれぞれで著明に見られた。くも膜下出血および病型不明例では,有意な季節変動は見られなかった。
ロジャー法により脳卒中発症率の季節性を危険因子ごとに解析した結果,全脳卒中の発症率に有意な季節変動性が見られたのは,男性,女性,64歳以下および75歳以上の年齢層,高血圧例,および総コレステロール低値群。
脳出血の発症率に有意な季節変動性が見られたのは,64歳以下の年齢層,高血圧例,および総コレステロール高値群。
脳梗塞の発症率に有意な季節変動性が見られたのは,男性,64歳以下の年齢層,非高血圧例,および総コレステロール低値群。
単変量解析によると,男女を合わせた全脳卒中,脳出血,脳梗塞,および女性の全脳卒中と脳梗塞では,平均気温との有意な負の相関が認められた。
日内気温変動との有意な正の相関が認められたのは,男性の全脳卒中と脳出血。
平均気温と日中気温変動の関連を考慮に入れて逐次多変量解析を行ったところ,平均気温と日中気温変動の両方が,男性の脳卒中と男女の脳出血に有意に相関していた。