[1988年文献] 収縮期高血圧は脳梗塞および心筋梗塞,拡張期高血圧は脳出血および脳梗塞の発症とそれぞれ有意に相関
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において, 60歳以上の高齢高血圧者の予後について,若年層(40~59歳)の高血圧者との比較検討を行った。20年間の追跡の結果,高齢層,若年層ともに,収縮期血圧および拡張期血圧が上昇するにつれて心血管疾患死亡リスクが高くなった。高齢層,若年層ともに,拡張期高血圧の人では正常血圧者にくらべて脳出血・脳梗塞リスクが高く,収縮期高血圧の人では脳梗塞・心筋梗塞リスクが著しく高いことが示された。
Ueda K, et al: Prognosis and outcome of elderly hypertensives in a Japanese community: results from a long-term prospective study.J Hypertens 1988; 6: 991-7.
- コホート
- 40歳以上で心血管疾患既往のない1621人(1961~1981年,20年間)。
追跡率は99.9 %,剖検率は82 %。 - 結 果
- 正常血圧の比率は年齢とともに減少し,境界域・収縮期・拡張期高血圧はそれぞれ年齢とともに増加した。
収縮期血圧(SBP): 40~59歳の若年層では,SBPとともに心電図異常および糖尿病が増加傾向を示した。60歳以上の高齢層でも同様の傾向が見られたが,若年層ほど顕著ではなかった。
拡張期血圧(DBP): 若年層では,DBPとともに心電図異常,糖尿病が有意に増加した。高齢層では,DBPとともに心電図異常,蛋白尿,糖尿病が増加した。
SBP: 追跡20年間の累積死亡率は,いずれの年齢層でもSBPと正の相関を示した。若年層ではSBP 160 mmHgから累積死亡率が大きく上昇したのに対し,高齢層ではSBP 140 mmHgから上昇した。
DBP: SBPと同様に,累積死亡率はいずれの年齢層でもDBPと正の相関を示した。若年層ではDBP 100 mmHgを境目として累積死亡率が大きく上昇したのに対し,高齢層では80 mmHg以上の血圧値では差が見られなかった。
これらの結果より,心血管疾患死に対して高血圧が与える影響は,高齢層よりも若年層で強く現れていることが示唆される。
脳出血の発症率: いずれの年齢層においても拡張期高血圧群で有意に高かった(vs. 正常)。
脳梗塞の発症率: いずれの年齢層においても拡張期高血圧群で有意に高かった(vs. 正常)。
心筋梗塞の発症率: 若年層では,収縮期高血圧群で有意に高かった。高齢層では,境界域を含むすべての高血圧群で正常血圧群より有意に高かった。
血圧レベルと心血管疾患の病型別発症率および相対危険度脳出血 脳梗塞 心筋梗塞 40-59歳 正常血圧 0.7 (1.0) 1.9 (1.0) 0.8 (1.0) 境界域高血圧 1.7 (2.4) 4.1 (2.2) * 0.6 (0.8) 収縮期高血圧 2.3 (3.3) 4.0 (2.1) 3.5 (4.4) * 拡張期高血圧 6.3 (9.0) ** 9.2 (4.8) ** 0.9 (1.1) 60歳- 正常血圧 1.1 (1.0) 11.6 (1.0) 1.5 (1.0) 境界域高血圧 1.5 (1.4) 17.5 (1.5) 5.3 (3.5) * 収縮期高血圧 2.1 (1.9) 26.9 (2.3) ** 10.0 (6.7) ** 拡張期高血圧 3.7 (3.4) * 17.0 (1.5) * 9.3 (6.2) ** 単位: /1000人。かっこ内に相対危険度を示した。*P<0.05,**P<0.01 vs. 正常血圧。